産業用ロボットの仕事とは?未経験からのなり方と給料の目安

「うちの工場にもロボットが入るらしい」。そう聞いて、自分の持ち場はどうなるのかと不安になった人へ。先に知っておいてほしいことがあります。ロボットが増えている工場で足りていないのは、ロボットを動かせる人と直せる人のほうです。

動きを教える人、毎日様子を見る人、止まったら直す人。ロボットが1台入るたびに、そういう仕事が生まれます。その「動かす側」の仕事にどんな種類があるのか、未経験からどう入るのか、給料はどれくらいか。公的機関と公開求人の情報で、順番に見ていきます。

ロボットを「動かす側」の人が足りない

まず数字を見てください。日本ロボット工業会の発表によると、2025年の1年間に日本のメーカーが出荷した産業用ロボットは約19万台で、前の年より15.7%増えました。出荷額は8,708億円で、こちらは23.8%の増加です。

※2025年1〜12月・会員企業の集計・2026年1月発表。輸出分を含みます。

一方で、人は足りていません。経済産業省の2025年版ものづくり白書によると、中小の製造業では従業員の過不足を示す指数が2024年にマイナス18.2まで下がり、コロナ前と同じくらいの人手不足に戻っています。白書には、これまでロボットが入っていなかった現場への導入を国が後押しする、とも書かれています。

ロボットが増えて、人が減る。その分、ロボットを立ち上げる仕事と世話をする仕事が増えます。厚生労働省の職業情報サイト(Job Tag)には、「産業用ロボットの設置・設定」「産業用ロボットの保守・メンテナンス」という職業ページがあります。国が職業として整理するくらい、はっきり形のある仕事です。

工場の仕事全体がAIや自動化でどう変わるかは、工場の仕事はAIでなくなる?で整理しています。この記事は、動かす側に回るほうの話を進めます。

産業用ロボットに関わる仕事は、大きく4つ

呼び名は会社によっていろいろですが、公開情報で確認できる範囲では、だいたい次の4つに分かれます。

仕事 何をするか 出どころ
設置・設定(ティーチング) ロボットを据え付けて、動きを教え、生産ラインに乗せる 厚生労働省 Job Tag
保守・メンテナンス 日常点検、部品交換、故障したときの修理 厚生労働省 Job Tag
ロボットオペレーター ロボットが入った設備を日々動かす担当。仕事の中身は会社ごとに幅が大きい 求人サイトの募集職種名
ロボットSIer(エスアイヤー) ロボットと周辺の機械を組み合わせて、自動化の仕組みごと作る専門会社の仕事 日本ロボットシステムインテグレータ協会

学歴の心配はあまり要りません。Job Tagによると、保守・メンテナンスの仕事に就いている人は高卒が51.4%、大卒が43.2%で、特別な学歴の条件はないとされています。技能は入ったあとに、社内研修やロボットメーカーの研修で身につけるのが普通で、一人前までの目安は3〜5年という回答が最も多くなっています。

設備の面倒を見る仕事に興味が出たら、設備保全の仕事も読んでみてください。ロボットに限らず、工場の機械全体を守る仕事の話です。

入口はどの仕事も同じ。10〜13時間の「特別教育」

ロボットの近くに入って動きを教えたり、動かしたまま調整したりするには、法律で決められた講習を受ける必要があります。産業用ロボット特別教育といいます(労働安全衛生法 第59条第3項、労働安全衛生規則 第36条第31号・第32号)。

区分 内容 時間
教示等 動きを教える作業(ティーチング)向け 学科7時間+実技3時間=10時間
検査等 動かしたまま行う検査・修理・調整向け 学科9時間+実技4時間=13時間

※安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号)より。2026年7月確認。

合否のある試験ではありません。決められた時間を受ければ修了できる講習です。日数は1〜4日。費用は学科だけなら1万円台から、学科と実技のセットでおおむね3万〜4万円台が中心です(2026年7月時点・確認できた約10機関の公開料金より。メーカーのスクールは5万〜14万円台のところもあります)。

受講の条件はゆるく、学歴や実務経験を求める機関は見当たりませんでした。多くの機関の条件は「満18歳以上」だけです。「ロボットの知識や経験がない人向けにカリキュラムを組んでいる」と書いている機関もありました。

もうひとつ大事なことがあります。今すでに工場で働いていて、仕事でロボットを触ることになる場合、この講習は会社が受けさせる義務です。厚生労働省の職場のあんぜんサイトによると、受講している時間は労働時間に当たります。費用も、法律に基づいて行う教育は会社が負担すべきものと国の通達に書かれています(昭和47年 基発第602号)。自腹を覚悟する前に、まず会社に聞いてください。

講習の中身、教示等と検査等の細かい違い、実施機関ごとの料金の一覧、仕事を探しながら無料の訓練で修了する方法は、産業用ロボット特別教育の費用・日数に詳しくまとめています。

未経験からの入り方は2つある

今の会社で手を挙げる

いちばん近道です。ロボットが入る工場では、教示や点検の担当者に特別教育を受けさせる必要があります。費用も時間も会社持ちが原則なので、「ロボットの担当をやりたい」と伝えるだけで、入口に立てることがあります。ラインの経験がある人は、その工程を知っていること自体が強みになります。

転職で入る

未経験歓迎のロボット関連求人は、実際に公開されていました。エン転職に掲載されていた例では、次のような条件です。

  • ロボットティーチングエンジニア(未経験・第二新卒歓迎、愛知県):月給21万〜40万円
  • ロボットオペレーター(未経験歓迎、静岡県):月給23万3,160円以上
  • ロボットエンジニア(未経験可、神奈川県ほか):月給22万〜50万円

※2025年6月〜2026年6月に掲載されていた3件。いずれも現在は募集を終了しています。同じ条件の求人が今もあるとは限らないので、目安として見てください。

前の項で書いたとおり、保守・メンテナンスの仕事は、入ってから研修で育てる前提の職種です。最初から技術がないと無理だ、と身構えなくて大丈夫です。

給料はどれくらいか

求人サイトの公開データから、目安を並べます。

職種 目安 出どころ
ロボットティーチング 平均月給39.5万円。月給の幅は25.4万円未満〜61.9万円以上 求人ボックス(掲載求人1,670件の集計)
ロボットオペレーター 平均月給29.6万円。月給の幅は24.2万円未満〜60.6万円以上 求人ボックス(掲載求人34,098件の集計)
ロボットエンジニア 平均月給30.7万円。月給の幅は27.5万円未満〜65.6万円以上 求人ボックス(求人一覧の集計)
設備保全 正社員の平均年収501万円程度 Indeed給料ガイド

※2026年7月時点の各サイトの表示より。地域・年齢・経験で変わります。最新の数字は各サイトで確認してください。

求人サイトの集計は、会社ごとの職種名のつけ方で数字が動きます。ティーチングの求人票を1件ずつ見た給料の幅は、産業用ロボット特別教育の費用・日数の後半にまとめています。

数字を見るときの注意をひとつ。ロボット関連の求人は「オペレーター」の名前でティーチングまで任せる会社もあれば、機械の監視だけの会社もあります。同じ職種名でも中身の幅が大きいので、月給の数字より先に仕事内容の欄を読むことをおすすめします。

資格を足すと、行ける範囲が広がる

特別教育は10〜13時間で終わります。そこから先、仕事の幅を広げたい人が足しやすい資格を挙げます。

  • 機械保全技能士:機械の故障を見つけて直す国家検定。3級は実務経験なしで受けられます
  • 第二種電気工事士:電気まわりの工事や保全に。受験資格はなく、誰でも受けられます
  • PLC・シーケンス制御:ロボットや設備を制御するプログラムの技能。技能検定「シーケンス制御」は2023年度に独立した職種になりました
  • ロボットSI検定:ロボットで自動化の仕組みを作る知識の検定。業界団体が実施していて、3級が入門です

これらの資格が「ロボットの仕事に必須」というわけではありません。ただ、ロボットの仕事は機械と電気と制御の重なるところにあるので、どれを足しても無駄になりにくい組み合わせです。費用や難易度の比べ方は工場で稼げる資格の比較にまとめています。

次にやること

  1. 自分の工場のロボット事情を確かめる。 すでに入っているか、入る予定があるか。あるなら、上司か製造技術の担当に「特別教育を受けたい」と伝えてみる。費用は会社負担が原則です。
  2. 特別教育の受け方を知る。 産業用ロボット特別教育の費用・日数で、講習の中身と実施機関、料金を確認する。
  3. 地元の求人を見る。 求人サイトで「ロボットオペレーター 未経験」「ロボット ティーチング 未経験」と検索して、自分の地域にどんな求人があるか、給料の相場はどれくらいかを見ておく。
  4. 長くやると決めたら、資格を1つ選ぶ。 機械が好きなら機械保全技能士3級、電気なら第二種電気工事士、プログラムに興味があればPLCから。
  5. 仕事を探している人は、ハローワークで職業訓練を聞く。 無料の訓練の中で特別教育まで修了できるコースが一部の地域にあります。

ロボットが増えることは、ライン作業にとっては向かい風でも、動かす側に回る人には追い風です。不安のまま止まらず、自分の工場と地元の求人を1回ずつ確かめるところから始めてください。

参考にした情報

公的機関と各団体の公開情報をもとにまとめました(確認は2026年7月)。数字や制度は変わることがあるため、最新の情報は各公式サイトで確認してください。