自動車部品工場の仕事はきつい?工程別の中身と時給を整理

自動車部品を作る工場は、全国に7,191か所あります。そこで働く人はおよそ66万8千人。完成車を作る側で働く人は約19万人なので、部品側はその3.5倍ほどです。

※経済産業省「2023年経済構造実態調査」より。2023年6月1日時点・個人経営を除く。

ただ、この7,191か所は同じような工場の集まりではありません。従業員が数千人いる会社もあれば、数人の町工場もあります。この会社の大きさの違いを知らないまま求人を見ると、条件のばらつきの理由が分からなくなります。

まず、自動車部品工場は1つのかたまりではない

自動車の部品は、完成車メーカーが1社で作っているわけではありません。経済産業省は「自動車産業適正取引ガイドライン」の中で、この業界の形をこう説明しています。

自動車メーカーをトップにしたピラミッド型の分業構造(メーカーと取引のある一次サプライヤーには、より多数の二次サプライヤーが取引関係を持ち、二次サプライヤーには更に三次サプライヤーが取引関係を持つといった数次に渡る重層的な取引関係)

完成車メーカーと直接取引する会社を1次(Tier1・ティアワン)、その下を2次、3次と呼びます。デンソーやアイシンのような大きな部品メーカーは1次にあたります。

中小企業庁が2020年版の中小企業白書で、この形を数字にしています。自動車メーカー7社と取引でつながる企業は、約2万6千社(2018年時点)。そのうち1次でも約8割が中小企業で、2次より下になると95%以上が中小企業です。

※中小企業庁「2020年版中小企業白書」より。ここでいう企業には、部品を作る会社のほかに、工場の設備工事をする会社や商社も入ります(1次のうち輸送用機械器具製造業は企業数の10.2%)。中小企業は資本金1億円以下として数えたもので、データは帝国データバンクの企業間取引データを白書が分析しています。

つまり「自動車部品工場で働く」と言っても、大企業に入るのか、小さな会社に入るのかで、話がかなり変わります。この違いは給料にも出ます。

なお、完成車工場と部品工場の役割の違いをはっきり説明した公的な資料は、探した範囲では見つかりませんでした。分かるのは、日本自動車工業会が工場の分布図で「組立を中心とする工場」と「部品等の工場」に分けていることまでです。

主な作業を工程で見る

自動車部品工場の作業は、工程で中身が違います。厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「job tag」に、それぞれの工程にあたる職業の解説が載っています。

工程 何をするか 使う機械・道具
プレス プレス機械に金型を取り付け、金属板を打ち抜く、曲げる、絞るなど、圧力を加えて形にする プレス機械、金型、測定器、制御盤
溶接 金属のつなぎ目をガス炎やアーク(電気の熱)などで熱し、溶かしてくっつける 溶接棒、溶接トーチ、自動電撃防止装置。保護具はヘルメット、ゴーグル、グローブ、安全靴
鋳造 砂を混ぜて型を作り、金属を溶かして流し込み、固めて仕上げる 溶解炉、湯口切断機、ショットブラスト機、グラインダー、ダイカストマシーン
機械加工 NC工作機械(数値で動きを指示する機械)を操作して金属を削る。機械への指示づくりと、機械の操作・チェックの2つがある NC旋盤、マシニングセンター、旋盤、研削盤、高精度計測器
検査 途中の製品や完成した製品が、決められたとおりにできているかを見る ノギス、マイクロメーター、三次元測定器、画像寸法測定器、顕微鏡
運搬 フォークリフトを運転して、工場や倉庫の中で荷物を運ぶ、積み下ろしする フォークリフト(カウンタバランス、リーチなど)

※厚生労働省「job tag」の各職業ページより(2026年7月に確認)。職業一般の解説なので、自動車部品工場だけの説明ではありません。

同じ「自動車部品工場の求人」でも、この6つのどれになるかで日々の中身は別ものです。求人票に工程まで書かれていないことも多いので、面接で確かめておきたいところです。

負担の中身は、工程でかなり違う

「自動車部品工場はきつい」と言われますが、何がきついかは工程で分かれます。

鋳造は、環境の負担がいちばん重い。 job tag には「ばいじん、粉じん、騒音、振動、高温などの作業環境は改善されてきている」とあります。改善されてきた、という書き方から分かるとおり、もともとこれらがある職場です。「火や高温の金属を扱う職場であるため、やけどやけがをしないように安全への気配り、注意深さ、集中力が求められる」とも書かれています。仕事の性質を5段階で示した数値では、立ち作業が4.4です。

プレスは、音が大きい。 「プレス作業は機械で金属材料を押しつけて加工するため、職場では騒音が大きい」とあります。何デシベルかまでは書かれていません。

検査は、座り作業が多め。 「検査の作業自体は、工場内での座り仕事が多いが、目視検査の場合は立ち仕事である場合も多く、大きな製品等によっては検査者が移動しながら検査作業を行う」とあります。ただし「工場によっては24時間稼働により、交代制となることもある」ので、夜勤がないとは限りません。

運搬は、屋外や空調のない場所での作業がある。 フォークリフト運転作業員の仕事の性質は、立ち作業3.8、屋外作業3.6、空調のきいていない屋内作業3.6、保護・安全装備の着用4.2(いずれも5点満点)です。

公開されている情報から負担が軽めと言えるのは、実質的に検査だけです。ほかの工程については、楽だと言える根拠が見つかりませんでした。体への負担が実際どうかは、配属先や人によって変わります。

工場の業種そのものを見比べたい場合は、工場の業種別 働きやすさ比較のほうが向いています。

給料は、工程と会社の大きさを分けて見る

工程別の平均年収

job tag に、工程にあたる職業ごとの平均年収が載っています。

職業 平均年収 1時間当たりの賃金 平均年齢
鋳造工・鋳造設備オペレーター 507.5万円 2,311円 記載なし
NC工作機械オペレーター 483.9万円 2,191円 42.8歳
フォークリフト運転作業員 470.1万円 2,153円 47.1歳
検査工(工業製品) 460.5万円 2,144円 44歳
金属プレス工 458.1万円 2,097円 42.7歳
溶接工 454.7万円 記載なし 41.8歳

※厚生労働省「job tag」より(令和7年賃金構造基本統計調査を加工したもの。2026年7月に確認)。全国・全産業・正社員などの一般労働者の平均で、残業代と賞与を含みます。自動車部品工場だけの数字ではなく、期間工や派遣の賃金でもありません。溶接工は建設業で働く人も含みます。

これはその職業で今働いている人の平均であって、これから入る人がもらえる額ではありません。平均年齢が40代なので、その年齢まで続けた人を含んだ数字です。

もうひとつ。job tag には「自動車組立工」という職業もあって、年収591.7万円と、上のどれより高く出ています。ただしこれは完成車を組み立てる職業です。job tag の説明も「自動車のボディ(車体)にドアやエンジンなどを組み付けて、完成車を組み立てる」となっていて、部品工場の数字ではありません。混ぜて読まないほうがいい部分です。

会社の大きさによる差

厚生労働省の賃金構造基本統計調査で、企業規模別の数字が取れます。

企業規模 所定内給与額(月) 年間賞与
1,000人以上 37.34万円 170.16万円
100〜999人 28.73万円 99.85万円
10〜99人 28.08万円 55.80万円

※厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より、輸送用機械器具製造業・2023年・男女計。この分類には自動車部品のほか、船舶・航空機・鉄道車両を作る会社も含まれます。自動車部品だけを取り出した数字ではありません。

月給の差より、賞与の差のほうが大きいのが分かります。1,000人以上の会社と10〜99人の会社では、年間賞与が3倍ほど違います。最初に書いたTierの話がここにつながります。自動車のサプライチェーンは中小企業が多くを占めるので、「自動車部品メーカー」という同じ呼び方でも、条件の幅はこれくらい開きます。

求人の時給

実際の求人ではどうか。2026年7月時点で、求人サイトの求人ボックスに載っていた自動車部品の製造の求人98件を1件ずつ見ました。

  • 派遣:だいたい1,100〜2,125円(時給が書かれていた42件から)。愛知県内の22件に絞ると1,200〜2,025円で、1,700〜1,900円台が目立ちました
  • パート・アルバイト:だいたい1,200〜1,600円が中心(13件から)
  • 期間工・契約社員:時給なら1,200〜1,550円、日給なら10,200〜12,850円(12件から)

※2026年7月時点・求人ボックスの掲載求人98件から。求人は入れ替わりが早いので、その時点でこう見えた、という以上のことは言えません。

地方の求人(秋田・福島・新潟など)は1,100〜1,450円台が目立ち、愛知より低めでした。ただし見た件数が限られるので、愛知が必ず高いとまでは言えません。

愛知の部品メーカーで期間工として働く場合の条件は、愛知の期間工の比較にまとめています。

未経験でも入れるか、資格は要るか

job tag によると、プレス・溶接・機械加工のどのページにも「入職にあたって、特に学歴や資格は必要とされない」と書かれています。

例外が2つあります。

溶接は、アーク溶接やガス溶接をする場合、法律で決められた講習などを修了する必要があります。ただしこれは入る前に必須というより、その作業に就くために要るものです。会社が入社後に受けさせることもあります。

運搬は、フォークリフトを運転するなら「年齢が18歳以上で、国家資格である『フォークリフト運転技能講習修了証』を取得していなければならない」と書かれています。運搬の求人に応募するなら、ここは先に確認する部分です。

持っていると有利な資格として厚生労働省が job tag に挙げているのは、プレスなら金属プレス加工技能士やプレス機械作業主任者、溶接ならガス溶接作業主任者や溶接管理技術者、機械加工なら機械加工技能士です。

資格の費用や日数は、フォークリフト免許の取り方・費用・日数溶接の資格の種類・費用・難易度工場で稼げる資格の比較にまとめています。

女性が持てる重さは、法律で決まっている

自動車部品の求人を見ると、「重量物あり(男性20kgまで、女性15kgまで)」のように書かれていることがあります。これが会社の決まりなのか法律なのか、分かりにくい部分です。

答えを言うと、女性には法律の上限があります。女性労働基準規則という決まりで、年齢と作業の種類ごとに数字が決まっています。

年齢 断続作業 継続作業
満16歳未満 12kg 8kg
満16歳以上18歳未満 25kg 15kg
満18歳以上 30kg 20kg

※女性労働基準規則第2条第1項第1号(別表1)より。断続作業は時々持つ作業、継続作業はずっと持ち続ける作業です。

ここで知っておくとよいことが1つあります。この重量の決まりは、もともと妊娠中や出産後の人を守るための一覧の中にありますが、重量物の業務については、同規則第3条によって、妊娠しているかどうかに関係なくすべての女性に適用されます。つまり18歳以上の女性なら、継続作業で20kgが法律の上限です。

一方、成人男性については、法律上の重量の上限はありません。厚生労働省が「職場における腰痛予防対策指針」で目安を示しているだけです。指針の中で厚労省は「満18歳以上の男子労働者が人力のみにより取り扱う物の重量は、体重のおおむね40%以下となるように努めること」としています。これは努力目標で、法律の義務ではありません。

そのうえで求人の「女性15kgまで」を見ると、法律の20kgより厳しい数字です。会社が独自にもっと低い上限を決めることはできます。逆に、法律の上限を超える決まりは作れません。

年齢については、法律で上限を定めたものはありません。18歳未満には制限があり、労働基準法第61条で、原則として午後10時から午前5時までは働かせてはいけないことになっています(交替制で使う満16歳以上の男性は例外)。

女性の深夜業については、かつてあった規制が平成11年4月1日になくなりました。今の労働基準法に、成人女性の深夜業を一律に禁止する規定はありません。ただし妊娠中と出産後1年以内の人は、本人が請求すれば深夜業をさせてはいけないと決まっています(労働基準法第66条第3項)。

製造業のけがで、いちばん多いのは何か

自動車部品工場は機械を扱う職場です。安全の話は、数字で見ておくと具体的に備えられます。

厚生労働省が2026年5月に公表した「令和7年における労働災害発生状況」によると、製造業で4日以上休んだけがをした人は26,371人(2025年)でした。前年より305人・1.1%減っています。

事故の型で分けると、こうなります。

事故の型(製造業) 人数
はさまれ・巻き込まれ 5,992
転倒 5,732
動作の反動・無理な動作 3,144
墜落・転落 2,917
切れ・こすれ 2,216

※厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」別表4より。休業4日以上・2025年。製造業全体の数字で、自動車部品工場だけの数字ではありません。

製造業でいちばん多いのは「はさまれ・巻き込まれ」です。 機械や物の間に体をはさまれる事故のことです。

ここが製造業の特徴です。全産業で見ると、いちばん多いのは転倒(37,195人)で、はさまれ・巻き込まれは4位(13,047人)まで下がります。働く場所が変わると、多い事故の種類も変わります。

亡くなった人の統計では、差はもっとはっきりします。2025年に製造業で亡くなった115人のうち、47人がはさまれ・巻き込まれでした。4割ほどを占めます。

法律で決まっている対策

はさまれ・巻き込まれが多いことは、国も分かっています。だから法律で対策が決められています。プレス機械については、次のような決まりがあります。

  • 安全囲いなどを設ける。労働安全衛生規則第131条は、プレス機械について「安全囲いを設ける等」で、作業する人の体の一部が危険な範囲に入らないようにしなければならないと定めています
  • 作業主任者を置く。動力で動くプレス機械を5台以上持つ事業場では、プレス機械作業主任者技能講習を修了した人の中から作業主任者を選ぶ義務があります(労働安全衛生法施行令第6条第7号、労働安全衛生規則第133条)。作業主任者は、機械と安全装置の点検、異常があったときの対応、金型の取り付け・取り外しの直接指揮などを行います(同規則第134条)
  • 金型の交換には特別教育が要る。動力プレスの金型や安全装置の取り付け・取り外し・調整の仕事は、特別教育を受けた人でないとできません(労働安全衛生規則第36条第2号)
  • 年1回の検査。動力プレスは1年以内ごとに1回、定期に自主検査をしなければなりません(同規則第134条の3)

産業用ロボットも、動く範囲の中で動きを教える仕事(教示等)や、運転中の検査の仕事は特別教育の対象です(同規則第36条第31号・第32号)。この講習については産業用ロボット特別教育の費用・日数にまとめています。

囲いを付ける、資格を持った人を置く、教育を受けた人だけが触る、定期的に検査する。この4つが積み重なって現場が回っています。見学や面接の機会があれば、こうした決まりが守られている職場かどうかを見る手がかりになります。

次にやること

自動車部品工場を候補にするなら、次の順で確認すると、条件のばらつきに振り回されにくくなります。

  1. どの工程かを聞く。 プレス、溶接、鋳造、機械加工、検査、運搬で中身がまったく違います。鋳造は粉じんや高温、プレスは騒音、検査は座り作業が多め、と負担の種類が分かれます。ここが分からないまま入ると、想像と違う場所に立つことになります。
  2. 会社の規模を見る。 輸送用機械器具製造業では、年間賞与が1,000人以上で170.16万円、10〜99人で55.80万円と3倍ほど違います。月給だけ見ていると、この差は見えません。応募先が何人くらいの会社かは、求人票か会社のサイトで分かります。
  3. 交替勤務の型を聞く。 何交替か、夜勤がどれくらいの周期で回るか。2交替・3交替の割合を示す公的な統計は見つからなかったので、これは会社に直接聞くしかありません。
  4. 重量物の上限を確かめる。 求人票の数字が法律の上限(18歳以上の女性なら継続作業で20kg)より厳しいかどうかを見ます。書いていなければ聞いてください。
  5. 雇用形態を決める。 派遣、期間工、パートで時給の出方が違います。期間工を考えているなら、愛知の期間工の比較に主要メーカーの条件をまとめています。

EV化でこの仕事がどうなるかが気になる場合は、EV化で工場・期間工の仕事はどうなる?のほうで扱っています。

参考にした情報