設備保全の仕事|将来性・未経験からのなり方・役立つ資格

工場で働いていると、自動化された機械やロボットが増えていくのを、目の前で見ることがあります。ラインの一部が機械に置きかわるのを見て、「自分の仕事は、この先も残るのだろうか」と気になった人もいるかもしれません。

そんなとき、名前がよく挙がるのが「設備保全(せつびほぜん)」という仕事です。機械を点検して、止まらないように直す仕事のことです。この記事では、設備保全がどんな仕事か、なぜ「自動化が進んでも残りやすい」と言われるのか、未経験からどう目指すか、役立つ資格や給料の目安までを、公的機関や公開求人の情報でまとめました。

設備保全ってどんな仕事?

設備保全は、工場の機械や設備を点検・修理して、止まらないように保つ仕事です。日本プラントメンテナンス協会(工場の保全を広める団体)の説明では、企業が生産を続けるには「設備の機能を必要なレベルに維持」することが欠かせず、それを支えるのが設備管理(保全)だとしています。機械が動き続けるように支える、工場のメンテナンス係のような仕事です。

保全のやり方には、大きく次の3つがあります。

  • 事後保全:壊れてから直すやり方。
  • 予防保全:壊れる前に、定期的に点検・部品交換をして手を打つやり方。
  • 予知保全:機械の音や振動などから故障の兆候をつかみ、壊れる前に対応するやり方。

同協会によると、保全の考え方は、壊れたら直す事後保全から、壊れる前に手を打つ予防保全へ、そして全員参加で設備を守るTPMへと進んできました。今は、ただ直すだけでなく、止まらないように先まわりする役割が大きくなっています。

「自動化が進んでも残りやすい」と言われる理由

設備保全がAIや自動化の時代に注目されるのは、機械やロボットに置きかわりにくい仕事だと考えられているからです。ただ、公的な機関が「設備保全は安全」と言い切っているわけではありません。もとになっているのは、仕事の性質についての調査です。

よく引用されるのが、野村総合研究所とイギリスのオックスフォード大学が2015年に発表した共同研究です。この研究では、国内601種類の仕事を分析したうえで、10〜20年後には日本の労働人口の約49%が就く仕事が、技術的にはAI・ロボットで代わりのきく可能性がある、と試算されています。この数字は総務省の情報通信白書(平成30年版)でも紹介されています。

ここで大事なのは、次の2点です。

  • これは2015年時点の推計で、しかも技術的に代わりがきくかどうかを見たものです。報告書のなかでも、必ずそうなるとは限らない、とことわられています。
  • 同じ研究で、日本の労働者の約40%は自動化がむずかしい仕事に就いている、ともされています。つまり、残りやすい仕事も同じくらい多いということです。

この研究では、他の人との協調や説得、交渉が必要な仕事や、決まった手順で片づかない仕事は、代わりがむずかしい傾向があるとされています。設備保全は、機械ごとに違うトラブルの原因をさがし、その場で判断して直す場面が多い仕事です。だから、残りやすい仕事の傾向に当てはまるのではないか、と言われています。あくまで研究の一般的な傾向からの見立てで、断定はできませんが、機械が増えるほど、その機械を点検・修理する仕事も必要になる、という関係は仕事の中身から素直に言えます。

工場の仕事全体について、消えやすい仕事・残りやすい仕事の分かれ目は、別の記事でくわしくまとめています。あわせて読んでみてください。→ 工場の仕事はAIでなくなる?消える仕事・残る仕事と備え方

未経験・今の工場から設備保全になるには

設備保全は、はじめから専門職というより、工場で働きながら移っていく人もいる仕事です。未経験から目指す道は、大きく3つあります。

  1. 今の会社で保全の部署に移る:すでに工場で働いているなら、社内で保全部署への異動を希望する道があります。設備の場所や動きを知っていることは強みになります。
  2. 未経験可の求人に応募する:公開求人には「設備保全 未経験可」「保全スタッフ 育成あり」といった募集も見られます(募集の数や条件は時期で変わるので、最新の求人で確認してください)。
  3. 資格を取ってから、または取りながら応募する:後で紹介する機械保全技能士や電気工事士などを取ると、応募のときに有利になりやすく、自分の準備にもなります。

どれか1つに決める必要はありません。今の状況に合わせて、動ける道から始めれば大丈夫です。

設備保全に役立つ資格

設備保全で評価されやすい資格をまとめました。取り方や費用の目安は資格によって違うので、幅として見てください。

資格 実施団体 受検料の目安 難易度(合格率の目安) 設備保全での位置づけ
機械保全技能士 日本プラントメンテナンス協会(国家検定) 学科+実技で2万円ほか(下記参照) 3級は7割超、2級・1級は3〜4割台 保全の知識・技能を示す代表的な資格
第二種電気工事士 電気技術者試験センター(国家試験) 申込1万1千円台(ネット申込) 学科・技能とも6〜7割前後 電気の保全ができる。入り口として評価されやすい
危険物取扱者 乙4 消防試験研究センター(国家資格) 受験料5,300円 年度・地域で変わる 引火性の液体を扱う工場で評価される

※受検料・合格率は取得年月で変わります。最新は各団体の公式サイトで確認してください。

機械保全技能士(国家検定)

設備保全にいちばん近い資格が、機械保全技能士です。日本プラントメンテナンス協会が実施する国家検定で、等級は上から特級、1級、2級、3級の4段階です(このほか、外国人技能実習生向けの基礎級があります)。試験の分野は、機械系、電気系、設備診断の3つに分かれています。

受検手数料(非課税・2025年4月時点)は、特級・1級・2級の場合、学科と実技の両方を受けると20,000円、学科だけなら4,600円、実技だけなら15,400円です。3級は、条件に当てはまらない一般の人で実技のみ15,400円・両方20,000円ですが、23歳未満の学生や在職者などは割引があります。

合格率(受検を申し込んだ人のうち、学科と実技の両方に合格した人の割合。同協会が公表する全国・全分野の集計より)は、次のとおりです。

等級 2024年度 2025年度
3級 約73% 約75%
2級 約35% 約45%
1級 約30% 約40%
特級 約21% 約37%

※合格率は年度で変わります。上の数字は全国・全分野を合わせた目安です。

3級は7割を超える人が合格する入門レベルです。まずは3級や2級から始めて、経験を積みながら1級・特級へ進む人が多い資格です。

第二種電気工事士・危険物乙4

工場の設備は電気で動くものが多いので、電気を扱える資格も役立ちます。第二種電気工事士は受験資格がなく誰でも受けられ、設備保全の入り口として評価されやすい国家資格です。取り方や費用、合格率は、こちらでくわしくまとめています。→ 第二種電気工事士の取り方・費用・難易度

危険物取扱者 乙4は、ガソリンや灯油、軽油などの引火性の液体を扱えるようになる国家資格です。化学工場や石油関連の工場で評価されます。→ 危険物取扱者乙4の取り方・費用・難易度

どの資格から取るか迷うときは、工場で使う定番資格を横並びで比べた記事も参考にしてください。→ 工場で稼げる資格を費用・日数・手当・難易度で比較

給料・時給の目安

設備保全の給料の目安を、求人サイト「求人ボックス」の集計で見てみます。これは各社の掲載求人から計算した目安で、国の統計ではなく、月ごとに数字が変わります(2026年6月時点)。

  • 設備保全:正社員の平均年収 約435万円(幅は335〜792万円、いちばん多い層は335〜392万円)。アルバイト・パートの平均時給 約1,467円、派遣社員の平均時給 約1,566円。

同じ集計で、工場のライン作業も見てみます。

  • ライン作業:正社員の平均年収 約453万円(幅は249〜561万円)。アルバイト・パートの平均時給 約1,394円、派遣社員の平均時給 約1,354円。

平均年収だけを見ると、ライン作業(約453万円)が設備保全(約435万円)を少し上回っています。ただし、設備保全は給料の幅が下も上も広く、上限は792万円とライン作業(561万円)より高めです。派遣の時給も、設備保全(約1,566円)のほうがライン作業(約1,354円)より高めでした。「設備保全なら必ず稼げる」とは言えませんが、経験や資格を積んで上をねらいやすい仕事だと言えます。

大変なところ・向いている人

いい面ばかりではありません。設備保全には、大変なところもあります。

工場は昼夜を問わず動いているところが多く、公開求人でも「交代制」「夜勤あり」と書かれた保全の募集が見られます。設備が止まると生産も止まるので、急なトラブルにその場で対応する場面もあります。ライン作業のように同じ動きをくり返すのとは、別の大変さがあります。

一方で、次のような人には向いていると言われます。

  • 機械をいじるのが好きな人
  • 故障の原因をコツコツさがすのが苦にならない人
  • 決まった作業のくり返しより、その都度考えて動くほうが合う人

自分に当てはまりそうなら、設備保全は工場での次の一歩として考えてみる価値があります。

次にやること

不安を、そのままにしておく必要はありません。今日からできることを、小さな順に並べました。

  1. 求人を1つ見てみる:「設備保全 未経験可」で検索し、仕事内容や勤務形態、給料を1件だけ見てみる。全体の感じがつかめます。
  2. 資格の入り口を決める:機械が好きなら機械保全技能士3級、電気に興味があれば第二種電気工事士から。まずは1つに絞ります。
  3. 今の会社に道がないか確認する:工場で働いているなら、社内に保全の部署や異動の制度がないか調べてみる。
  4. 公式サイトで最新の数字を見る:受検料や合格率は変わります。受ける前に、各団体の公式サイトで最新を確認しましょう。

一気に全部やらなくて大丈夫です。まずは1番から、1つだけ動いてみてください。

参考にした情報

  • 公益社団法人 日本プラントメンテナンス協会「設備管理(保全)」
  • 機械保全技能検定 公式サイト(受検手数料・合格発表の集計)
  • 野村総合研究所「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」(2015年)
  • 総務省「平成30年版 情報通信白書」
  • 求人ボックス 給料ナビ「設備保全の年収・時給」「ライン作業の年収・時給」(2026年6月時点)