機械保全技能士の取り方・費用・難易度|工場求人の時給も

機械保全技能士は、年に3万人以上が受ける国家資格です。名前は少しかたく聞こえますが、3級なら実務経験がなくても受けられます。まったくの未経験でも、入り口に立てる資格です。

機械保全は、工場の機械を点検して、止まらないように保ったり、止まったら直したりする仕事です。この記事では、その資格の取り方・受検資格・費用・合格率を、厚生労働省や日本プラントメンテナンス協会(JIPM)の公開情報から整理しました。工場での評価や、更新がいるかどうかまでまとめています。

機械保全技能士ってどんな資格?

機械保全技能士は、「技能検定」という国の制度の中にある資格です。技能検定は、働くうえで必要な技能のレベルを国が認める仕組みで、職業能力開発促進法という法律にもとづいて行われています(厚生労働省の技能検定ポータル「技のとびら」による)。技能検定は全部で133職種あり(令和8年3月時点)、機械保全はそのうちの1つです。

学科試験と実技試験の両方に合格すると、「機械保全技能士」と名乗れるようになります。

この試験を実施しているのは、公益社団法人 日本プラントメンテナンス協会(略してJIPM)です。ふつうの技能検定は各都道府県の協会が試験を行いますが、機械保全は少し特別で、JIPMが国から指定を受けて全国の試験をまとめて行っています。そのため、申し込み先も都道府県の協会ではなく、JIPMになります。

機械保全は特別な業界だけの資格ではありません。厚生労働省は、機械保全を「工場の設備機械の故障や劣化を予防し、機械の正常な運転を維持するために重要な仕事で、各種製造現場の共通的な作業」と説明しています。どの工場にも機械はあるので、活かせる場所が広い資格です。

受ける人も多く、JIPMによると受検者は年間で3万人を超えます。技能検定の全職種のなかで2番目に多く、ものづくり分野の職種では一番多く受けられている検定です(JIPMの公表による)。

級と作業区分のちがい

機械保全技能士には、「級」と「作業区分」という2つの分かれ方があります。

級は、特級・1級・2級・3級の4段階です。数字が小さいほど上のレベルで、特級が一番上です。

作業区分は、どの分野の技能を試すかの区分で、次の3つです。

  • 機械系保全作業(機械そのものの点検・保全)
  • 電気系保全作業(電気の制御まわりの保全)
  • 設備診断作業(機械の状態を測って異常を見つける)

級によって、選べる作業区分がちがいます。

選べる作業区分 主な対象
特級 なし(作業区分は選ばない) 現場の管理・監督者向け
1級 機械系/電気系/設備診断 ベテラン向け
2級 機械系/電気系/設備診断 中堅向け
3級 機械系/電気系(設備診断はなし) これから始める人向け

実技試験は、この作業区分の中から自分で1つを選んで受けます(JIPMの試験要項による)。まず入り口として3級を受ける場合は、機械系か電気系のどちらかを選ぶことになります。

受検資格|3級は実務経験がなくても受けられる

上の級を受けるには、原則として決まった年数の実務経験が必要です。実務経験だけで受ける場合の年数は、次のとおりです。

必要な実務経験
特級 1級に合格したあと5年以上
1級 7年以上
2級 2年以上
3級 なし(誰でも受けられる)

※実務経験だけで受ける場合の目安です。学歴や、下の級に合格していることで、必要な年数が短くなるルートもあります(JIPMの受検資格の案内による)。

ポイントは3級です。3級は実務経験を問いません。機械保全の仕事をしている人はもちろん、これからやろうとしている人も受けられます。実務経験の年数を証明する書類を出す必要もありません。「機械保全に興味はあるけれど、まだ経験がない」という人でも、3級なら入り口になります。

費用の目安

受検にかかるお金(受検手数料)は、次のとおりです。特級・1級・2級は、下の一般料金です。

受ける試験 受検手数料(2025年度・特級/1級/2級)
学科試験のみ 4,600円
実技試験のみ 15,400円
学科+実技の両方 20,000円

※消費税はかかりません。このほかに、事務手数料(330円または440円・税込。支払う額によって変わります)などが別途かかります。2025年度時点の金額です(JIPMの受検案内による)。

3級の実技試験には、若い人向けの割引(減免)があります。対象は23歳未満で、内訳は次のとおりです。

  • 学生(23歳未満):実技6,200円
  • 在職者(23歳未満で雇用保険に入っている人):実技7,700円
  • そのどちらでもない23歳未満の人:実技11,600円

この割引は3級の実技だけが対象で、特級・1級・2級は一般料金です。金額はどれも2025年度時点のもので、年度によって変わることがあります。申し込む前に、最新の金額を公式サイトで確認してください。

難易度・合格率

合格率は、級によって大きくちがいます。JIPMが公表している「試験集計情報」の、学科と実技の両方に合格した割合(最終合格率)をまとめると、次のようになります。

合格率のめやす(2022〜2025年度)
特級 約20〜37%
1級 約28〜40%
2級 約33〜45%
3級 約73〜77%

※JIPM「試験集計情報」(2022〜2025年度)より。学科・実技の両方に合格した最終合格率です。

3級は7割前後の人が受かっていて、入り口としてはやさしめです。級が上がるほど合格率は下がり、1級・特級は2〜4割ほどになります。全部の級を合わせると、年度によって約40〜50%です(2025年度は50.4%)。この数字は合格率が高めの3級を含むので、実際の難しさは級ごとに見たほうが正確です。

作業区分でも差があります。おおまかには、機械系保全作業のほうが電気系保全作業より合格率が高い年度が多いです。たとえば3級だと、機械系はおよそ77〜81%、電気系はおよそ50〜55%でした(同じくJIPMの集計より)。どちらで受けるか迷ったときの参考になります。

試験はいつ・どこで・どんな形式?

学科試験は、マークシート方式の筆記です。パソコンで好きなときに受けるCBTではなく、決まった日にみんなで受ける形です。問題数と時間は級で変わり、たとえば3級は真偽(マルかバツか)で答える30問を60分、特級は五択の50問を120分で解きます。合格の基準は100点満点で65点以上です(JIPMの試験要項による)。

実技試験は、先に説明した作業区分から1つを選んで受けます。3級の実技の例では、機械系保全作業は「判断等試験」という形式で7課題を70分、電気系保全作業は実際に手を動かす「製作等作業試験」で2課題を110分でした(JIPMの受検案内による)。

試験は1年に複数回あり、申し込みはインターネットでJIPMに対して行います。実施の回数や日程、会場は年によって変わります。受けようと決めたら、まず公式サイトで直近の日程を確認してください。

合格までの勉強時間の目安

勉強時間の目安は、資格スクールや工場系メディアがそれぞれ公開しています。これらは各社が示すおおよその数字で、国が決めた基準ではありません。実務経験があるかどうかで、必要な時間は大きく変わります。

公開されている目安を並べると、次のような幅がありました。

  • 2級:だいたい150〜300時間(未経験なら300時間ほど、経験者なら150〜200時間ほど、という例)
  • 3級:だいたい50〜150時間(経験が浅い人ほど長め、という例)

同じ2級でも、サイトによって50時間から300時間まで開きがあります。それだけ、今の経験によって差が出るということです。まずは自分が機械や電気の仕事にどれくらい触れているかで、上の幅のどのあたりかを見当をつけるとよいです。

取ると工場でどう評価される?

正直なところ、「機械保全技能士を取れば、時給や手当が必ず上がる」とは言い切れません。求人を見た範囲では、資格手当の金額まで書いている求人は多くありませんでした。「機械保全技能士 歓迎」「資格手当あり」と書かれていても、金額までは示されていないことが多いです(日本の求人サイトで2026年7月時点に確認)。

そのうえで、確認できた範囲の数字を紹介します。

まず、機械保全の技能が活きる「設備保全」という職種の給与のめやすです。求人ボックスの集計(2026年6月時点)では、設備保全の平均年収は約435万円、派遣で働く場合の平均時給は約1,566円、パート・アルバイトの平均時給は約1,467円でした。これは機械保全技能士だけをしぼった数字ではなく、近い職種の全体の数字です。

求人票そのものを見ると、機械保全技能士(3級)にふれた求人では、月給がおよそ22万〜60万円、年収でおよそ400万〜880万円と幅がありました(Indeedの日本版で2026年7月時点、1,000件以上が表示されるなかから確認)。1級になると、管理者や技術者向けの給料が高めの求人が中心でした。

資格手当を金額で書いていた求人は少なめでした。確認できた例では、技能士手当が1級で月5,000〜7,000円ほど、というものがありました。求人ガイドの記事でも「1級で月数千円〜1万円ほどが一般的。会社によっては2万円前後のことも」という目安が示されています。金額は会社によって差が大きいので、幅のある目安として見てください。

数字だけを見ると手当は大きくないこともありますが、この資格の値打ちは手当だけではありません。設備を保全できる人は、どの工場でも必要とされます。採用や配属で有利になったり、より安定した仕事に移る足がかりになったりする面があります。

AI・自動化が進むと、この資格はどうなる?

「工場の仕事はAIやロボットに奪われるのでは」と不安に思う人もいます。ここは公開情報でわかる範囲だけ、落ち着いて見ておきます。

経済産業省などがまとめた「ものづくり白書」によると、製造業では人手不足が続いています。2024年版では、人手不足感はコロナ前(2019年)より強いとされました。そして、労働力が足りないなかで生産性を上げるために、ロボットやAIの活用を進めることが重要だとされ、そうしたデジタル化に対応できる人材の確保・育成が課題として挙げられています(2024年版・2025年版ものづくり白書の概要より)。

白書に「設備を保全する人が足りない」と名指しした記述はありません。ただ、機械やロボットが増えるほど、その機械を点検し、止まったら直す仕事はなくなりにくいと考えられます。機械保全は、自動化を進める側ではなく、自動化された設備を支える側の技能です。

AIでなくなる仕事・残る仕事について、もう少し広く知りたい人は、工場の仕事はAIでなくなる?もあわせて読んでみてください。

更新・有効期限は?「技能士」と名乗れる

機械保全技能士の資格そのものに、有効期限や更新講習があるという記述は、厚生労働省・中央職業能力開発協会・JIPMのどのページにも見当たりませんでした(2026年7月時点で確認)。一度合格すれば、原則として持ち続けられる資格だと考えてよさそうです。

1つだけ、まぎらわしい点があります。JIPMのよくある質問に「過去に学科または実技に合格しているが、いつまで有効か」という項目があり、「1級・2級・3級は永続的に有効。特級は合格した日から5年間有効」と書かれています。これは、次に受けるときに試験の一部が免除される「一部合格」がいつまで使えるか、という話です。技能士の資格そのものが5年で切れるという意味ではありません。

「技能士」という呼び名にはルールがあります。職業能力開発促進法の第50条で、技能検定に合格した人だけが「技能士」と名乗れると決められています。合格していない人が「技能士」を名乗ることはできません。機械保全技能検定に合格すれば、「機械保全技能士」と正式に名乗れます。

次にやること

機械保全技能士は、3級なら実務経験がなくても受けられて、活かせる工場も広い資格です。最後に、今日からできることを整理します。

  1. どの級から受けるか決める。 経験がまだない、または浅い人は3級からです。すでに機械保全の仕事を2年以上している人は、2級も検討できます。
  2. 作業区分を選ぶ。 機械系保全作業と電気系保全作業のどちらで受けるかを決めます。今の仕事に近いほうが勉強しやすいです。合格率だけで見ると、機械系のほうがやや受かりやすい年度が多いです。
  3. 試験日程を調べる。 「機械保全技能検定」で検索するとJIPMの公式サイトが出てきます。試験は年に複数回あるので、直近の日程と申し込み期限を確認します。
  4. 費用を用意する。 3級を学科と実技の両方受けるなら、一般で20,000円ほど(2025年度時点)。23歳未満なら実技の割引があります。
  5. 勉強を始める。 3級はだいたい50〜150時間が目安です。今の経験によって幅があるので、まずは公式の試験範囲を見て、自分に足りない分野から手をつけましょう。

どの資格から取るか迷っている人は、工場で稼げる資格の比較もあわせて読んでみてください。費用や難易度を、他の資格と見比べられます。機械保全が活きる仕事を具体的に知りたい人は、設備保全の仕事も参考になります。

参考にした情報

厚生労働省や公益社団法人 日本プラントメンテナンス協会(JIPM)などの公開情報を中心にまとめました(確認は2026年7月)。金額・日程・合格率は変わることがあるため、最新の情報は公式サイトで確認してください。