期間工から正社員になるには?登用の条件と公表された人数

期間工から正社員を目指すとき、道は2つあるように見えます。会社の正社員登用制度を受けるか、5年働いて無期転換の権利を得るか。

ただ、この2つは中身がまったく違います。しかも期間工の場合、片方は最初から使えないことがほとんどです。

先にそこを整理してから、条件と実際の人数を見ていきます。

正社員登用制度は、実際にある

まず、制度そのものは実在します。公式ページに明記しているメーカーがあります。

トヨタ自動車は、期間従業員の募集サイトでこう説明しています。

期間従業員として勤務されている方の中から、職場上長の推薦を受け、ご本人もその意思がある場合、正社員登用試験のご案内をさせていただきます。

SUBARUは「正社員登用の試験を年2回行っており、積極的に正社員登用を行っています」と書いています。マツダも期間社員の採用ページに正社員登用制度を挙げています。豊田自動織機は、募集ページに「豊田自動織機の正社員として就業できるチャンスあり」と書いています(募集の窓口はグループ会社の株式会社サンスタッフです)。

ここで押さえておきたいのは、登用は会社が選ぶ制度だということです。推薦が要り、試験があります。応募すれば通るものではありません。

登用の条件は、公表している会社としていない会社がある

条件を公式に書いているのは、確認できた範囲では2社でした。

  • トヨタ自動車:勤務期間1年以上/職場上長の推薦
  • マツダ:勤続6カ月以上で受験可能

SUBARUと豊田自動織機は、制度があることは書いていますが、勤続年数や推薦の要否といった受験条件までは公式ページで確認できませんでした。

年齢制限や出勤率の条件は、調べた範囲ではどのメーカーの公式ページにもありませんでした。「出勤率が何%以上必要」といった話も見かけますが、公式で裏が取れないものは載せていません。応募を考えている会社があるなら、面接や上長との面談で直接聞くのが早いです。

試験の中身が分かるのはトヨタだけだった

トヨタは登用試験の中身を公式に書いています。

  • 筆記試験
  • 集団面接

ほかのメーカーは、試験があること自体は分かっても、中身の記載が見つかりませんでした。SUBARUは年2回実施とだけ書いています。

公表されている登用人数

各社が自分のサイトで公表している人数です。

メーカー 公表している登用人数 時点
トヨタ自動車 2021年度136名/2022年度155名/2023年度226名/2024年度310名/2025年度305名(合計1,132人) 直近5年(2021〜2025年度)
SUBARU 2,515名 2025年2月時点
マツダ 129名 2025年度
豊田自動織機 413名 2018年度〜2022年度の累計

※2026年7月時点・各社の公式採用ページより。SUBARUと豊田自動織機は累計、トヨタとマツダは年度ごとの数字です。SUBARUのサイトには時点の書かれていない2,599名という数字も併記されていますが、ここでは時点のはっきりしている2,515名を載せました。豊田自動織機の数字は2022年度までで、他社より対象期間が古い点にも注意してください。

トヨタの推移を見ると、2021年度の136名から2024年度の310名まで増えています。ただし人数の多い少ないは、会社の規模や募集の状況で変わります。この表は受かりやすさの順位表ではありません。

この表で分からないことが1つあります。 どのメーカーも、何人が受験して何人が受かったかを公表していません。分母がないので、合格率は出せません。人数だけを見て自分の見込みを測るのは難しい、というのが正直なところです。

愛知の部品メーカーで期間工として働く場合の条件は、愛知の期間工の比較にまとめています。

「5年働けば無期になる」は、期間工には当てはまりにくい

ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。

労働契約法という法律に、無期転換ルールという決まりがあります。厚生労働省の説明を引用します。

同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールです。

契約社員でもパートでもアルバイトでも、名称を問わず対象になります。期間工も含まれます。

この権利が強いのは、会社が断れないところです。労働契約法第18条は、労働者が申し込んだとき「使用者は当該申込みを承諾したものとみなす」と定めています。試験も推薦も要りません。

ただし、期間工がこの権利を使うのは難しいのが実情です。理由は契約期間にあります。

多くのメーカーで、期間工の契約は最長2年11か月です。 マツダは「6ヶ月間の有期雇用契約(契約更新有り。最長2年11ヵ月まで)」と公式に書いています。トヨタも初回3か月から更新を重ねて最長2年11か月です。

なお契約の更新も自動ではありません。マツダは更新の条件を「生産計画、出勤率、勤務評価等により判断」としています。

同じ会社で上限まで働いても、通算5年には届きません。つまり無期転換の権利が発生する前に契約が終わります。

さらに、いったん辞めて間を空けた場合も注意が要ります。厚生労働省はこう説明しています。

無契約期間が6ヶ月以上あるときは、その期間より前の有期労働契約は通算契約期間に含まれません(クーリングされます。)。

半年以上空けて同じ会社に戻ると、それまでの勤務期間はリセットされます。

無期になっても、正社員になるとは限らない

もう1点、誤解されやすいところがあります。厚生労働省のよくある質問に、ずばりこの問いがあります。

Q12.無期転換の申込みを行った場合、正社員になるのでしょうか。また、給与や待遇等の労働条件は変わりますか。

答えはこうです。

無期転換ルールは契約期間を有期から無期に転換するルールですが、無期転換後の雇用区分については会社によって制度が異なるため、一概には申し上げられません。給与や待遇等の労働条件については、労働協約や就業規則、個々の労働契約で別段の定めがある部分を除き、直前の有期労働契約と同一となります。

法律の条文も同じで、無期転換後の労働条件は「契約期間を除く」ほかは同一とされています。

つまり無期転換は、契約に期限がなくなるだけです。給料が上がるわけでも、正社員の待遇になるわけでもありません。

2つの違いをまとめると

正社員登用制度 無期転換ルール
決めるのは 会社(推薦・試験がある) 労働者(申し込めば会社は断れない)
落ちることは ある ない
必要な期間 トヨタは1年以上、マツダは6か月以上(公式に記載のある会社) 同じ会社で通算5年超
なった後は 正社員 期間の定めがなくなるだけ。待遇は原則そのまま
期間工の場合 これが現実的な道 契約が最長2年11か月なので、権利が発生しにくい

※労働契約法第18条と厚生労働省の説明、各社の公式採用ページより(2026年7月時点)。

期間工が正社員を目指すなら、登用制度を通ることになります。5年待つ道は、制度上ほぼふさがっています。

正社員になると変わること

待遇の差を各社の公式ページで横並びに確認することはできませんでした。賞与や退職金がどう違うかは、公開されている情報からは分かりません。

はっきりしているのは契約の形です。

期間工 正社員
契約期間 上限あり(多くは最長2年11か月) 期間の定めなし
満了金 ある(会社によって制度と金額が違う) 制度なし
賞与・退職金 公式ページでは確認できず 公式ページでは確認できず

満了金は期間工だけの制度です。たとえばトヨタは、35か月フルで勤めた場合の満了慰労金・報奨金を総額3,064,800円と公表しています(稼働日数などの条件つき)。正社員になるとこれはなくなり、代わりに賞与や退職金の対象になります。どちらが得かは、働く年数によって変わります。

期間工の給料の見方そのものは、期間工の時給・寮費の見方で説明しています。

登用されなかったときの選択肢

登用は試験なので、通らないこともあります。そのときに取れる道をいくつか挙げます。

別のメーカーで期間工を続ける。 契約が満了すれば、他社に応募できます。会社が変われば登用制度の条件も変わります。地域別の条件は愛知の期間工の比較首都圏の期間工の比較にまとめています。

資格を取って条件を上げる。 溶接やフォークリフト、電気系の資格があると、応募できる求人の幅が広がります。費用をかけずに取る方法として職業訓練もあります。職業訓練で工場の資格を取る工場で稼げる資格の比較にまとめました。

同じ会社で次の機会を待つ。 契約期間の上限まで在籍できるなら、次の登用試験を受けられる可能性があります。SUBARUのように年2回実施している会社もあります。ただし上限を超えて在籍はできないので、残りの契約期間との相談になります。

次にやること

正社員登用を狙うなら、順番はこうなります。

  1. 応募する会社に登用制度があるか、公式ページで確認する。 制度があることを明記している会社と、していない会社があります。求人サイトの情報ではなく、会社自身のページで見てください。
  2. 受験条件を調べる。 公式に書いていない会社が多いので、その場合は面接で聞きます。トヨタなら勤務期間1年以上と上長の推薦、マツダなら勤続6か月以上と公表されています。
  3. 登用人数の見方に注意する。 各社が出しているのは人数だけで、受験者数は公表されていません。合格率は分かりません。
  4. 無期転換をあてにしない。 期間工の契約は最長2年11か月のことが多く、通算5年には届きません。仮に無期になっても、待遇は原則そのままです。
  5. 通らなかったときの道も用意しておく。 資格を取る、他社に移るなど、選択肢を1つに絞らないほうが動きやすくなります。

登用は会社が選ぶ制度なので、確実な方法はありません。ただ、条件を公表している会社を選び、受験できる期間まで在籍し、試験に備えるところまでは自分で決められます。

参考にした情報

※登用制度の条件・実績は変わります。応募の前に、必ずその時点の公式ページで確認してください。