職長・安全衛生責任者教育とは|費用・日数と対象の業種

職長教育は、自分でお金を出して取りに行く資格ではありません。会社が受けさせる義務のある教育です。受講料も、受けている時間の給料も、会社が持つのが原則になっています。

このことを知らないまま「自腹で申し込もうか」と調べている人が、けっこういます。まずそこを押さえてから、中身を見ていきましょう。

以下、対象になる人、12時間の中身、費用、受けられる場所の順に見ていきます。法令の条文と、講習を実施している団体の公開料金をもとにしました。

まず数字だけ先に

項目 内容
教育時間 学科12時間以上(建設業・造船業向けは14時間)
日数 2日間で行うところが多い
受講料の目安 約12,000〜22,000円(会員価格があるところは安くなる)
費用を払う人 会社(事業者)が負担すべきものとされている
試験 なし
修了証の有効期限 なし。ただし5年ごとの再教育が想定されている
受講に必要な資格・年齢 法令上の定めなし

※2026年8月時点。受講料は中央労働災害防止協会と各地の労働基準協会の公開料金から。

職長教育は会社の義務

根拠は労働安全衛生法第60条です。条文はこうなっています。

事業者は、その事業場の業種が政令で定めるものに該当するときは、新たに職務につくこととなつた職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者(作業主任者を除く。)に対し、次の事項について、厚生労働省令で定めるところにより、安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。

主語は「事業者」、つまり会社です。「行なわなければならない」と書かれています。

お金の話も、厚生労働省の通達(昭和47年9月18日 基発第602号)にはっきり書かれています。

安全衛生教育については所定労働時間内に行なうのを原則とすること。また、安全衛生教育の実施に要する時間は労働時間と解されるので、当該教育が法定時間外に行なわれた場合には、当然割増賃金が支払われなければならないものであること。

第五九条第三項の特別の教育ないし第六〇条の職長教育を企業外で行なう場合の講習会費、講習旅費等についても、この法律に基づいて行なうものについては、事業者が負担すべきものであること。

まとめると、こうなります。

  • 受講料も交通費も、会社が負担すべきもの。
  • 受けている時間は労働時間。休みの日や時間外に受けたなら、割増賃金が出るのが筋。

会社から「自分で申し込んで、自分で払って」と言われたときは、この通達の話をしてみてください。

対象は職長だけではない

条文をもう一度見ると、対象は「新たに職務につくこととなつた職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者」です。

「職長」という肩書きの人だけではありません。班長、工長、リーダー、主任。呼び名が違っても、部下や後輩を直接指導・監督する立場になるなら対象です。宮城労働局のリーフレットも、職長等とは「『リーダー』『班長』『ライン長』など名称のいかんを問わず、仕事を行う上で現場での指揮又は命令を行う者」だと説明しています。

条文には「作業主任者を除く」ともあります。有機溶剤作業主任者やプレス機械作業主任者などは別の枠組みで、職長教育とは分けて考えます。

受講に必要な資格や年齢の決まりは、法令にはありません。

業種|2023年4月から食品工場・印刷工場も対象に

対象の業種は、労働安全衛生法施行令第19条で決まっています。

業種 対象か
建設業 対象
製造業 対象(下の4つを除く)
たばこ製造業 対象外
繊維工業(紡績業・染色整理業を除く) 対象外
衣服その他の繊維製品製造業 対象外
紙加工品製造業(セロファン製造業を除く) 対象外
電気業 対象
ガス業 対象
自動車整備業 対象
機械修理業 対象

製造業はほぼ全部が対象で、外れるのは4つだけ、という形です。

ここで大事なのが、2023年(令和5年)4月1日の変更です。労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(令和4年政令第51号。2022年2月24日公布)で、それまで対象外だった次の業種が新しく対象に入りました。

  • 食料品製造業(うま味調味料製造業と動植物油脂製造業は、もともと対象でした)
  • 新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業

この改正で、食料品製造業はすべてが職長教育の対象になりました。厚生労働省は、化学物質の管理を見直す一連の改正の一部として、この拡大を行っています。

食品工場や印刷工場で長く働いていて「うちの会社ではそんな話は聞いたことがない」という人もいるかもしれません。2023年4月以降は対象なので、班長・リーダーになるときは会社に確認してみてください。

「職長教育」と「職長・安全衛生責任者教育」の違い

講習の案内を見ると、12時間のものと14時間のものが並んでいます。中身はこう違います。

職長教育 職長・安全衛生責任者教育
時間 12時間 14時間
対象 製造業・電気業・ガス業・自動車整備業・機械修理業など 建設業・造船業
追加される科目 なし 安全衛生責任者の職務等(1時間)/統括安全衛生管理の進め方(1時間)

安全衛生責任者は、労働安全衛生法第16条で決まっている役割です。建設業や造船業の現場で、下請けの会社が選び、元請けの統括安全衛生責任者と連絡や調整をします。建設現場では職長がこの役割を兼ねることが多いので、2つの教育をまとめて14時間で実施しているわけです。

工場(製造業)で働く人は、12時間の職長教育で足ります。申し込むときは、コースが12時間か14時間かを見てください。

12時間の中身

科目と時間は、労働安全衛生規則第40条第2項の表で決まっています。

科目 時間
作業手順の定め方/人の適正な配置の方法 2時間
指導と教育の方法/作業中の監督と指示の方法 2.5時間
危険性・有害性の調査の方法と、その結果への対応/設備や作業の改善の方法 4時間
異常が起きたときの措置/災害が起きたときの措置 1.5時間
設備と作業場所の保守管理の方法/労働災害防止への関心を保ち、働く人の工夫を引き出す方法 2時間
合計 12時間以上

一番長い4時間の科目は、リスクアセスメントと呼ばれるものです。作業の中にどんな危ないところがあるかを洗い出して、優先順位をつけて手を打つ、という進め方を学びます。

実技はありません。ただし座って聞くだけではなく、グループ討議が中心という案内が多く見られます。

同じ第40条の第3項には、省略の規定もあります。「十分な知識及び技能を有していると認められる者」は、その科目を省略できます。過去に似た教育を受けている人は、申し込み先に相談してみてください。

受講料はいくらか

主な実施機関の公開料金です。

実施機関 職長教育(12時間) 職長・安全衛生責任者教育(14時間)
中央労働災害防止協会 近畿安全衛生サービスセンター 一般19,800円/賛助会員17,820円 一般22,000円/賛助会員19,800円
名北労働基準協会(愛知) 非会員21,110円/会員15,550円 案内なし
愛媛労働基準協会 一般17,050円/会員12,430円 一般18,920円/会員14,300円
東京技能講習協会 18,000円 案内なし

※2026年8月時点・各機関の公開料金。テキスト代の扱いは機関ごとに違います。名北労働基準協会は昼食代込み、愛媛労働基準協会はテキスト代を含めた額です。愛媛労働基準協会は令和8年10月開催分から改定予定と案内しています。

だいたい12,000〜22,000円の幅に入ります。会社が会員になっている団体があれば、会員価格で3,000〜5,000円ほど安くなります。

どこで受けられるか

主な実施先は次のとおりです。

  • 中央労働災害防止協会(中災防)と、各地のサービスセンター
  • 各都道府県の労働基準協会
  • 建設業労働災害防止協会(建災防)※建設業向け
  • 民間の登録教育機関

会社がまとめて申し込み、講師に来てもらう「出張講習」の形もあります。東京技能講習協会は出張講習のみで、10名以上から受け付けると案内しています。

日程は2日間が基本です。名北労働基準協会の例では、1日目が9時30分から16時55分まで、2日目が9時30分から16時50分まで。愛媛労働基準協会は「この時間は休憩時間を含んでおりません」と注記していて、実際の拘束時間は12時間より長くなります。

オンライン(eラーニング)でも受けられます。厚生労働省の通達(令和3年1月25日 基安安発0125第2号ほか)が、職長教育をeラーニングで行うことを認めています。ただし条件があります。労働安全衛生規則第40条第2項の時間を満たすこと、受講者15人以内を1単位とすること、同じ時間に参加した人どうしがやりとりできる状態にすること。グループ討議の科目があるためです。実際の進め方は実施機関ごとに違うので、申し込む前に確認してください。

試験はない。ただし遅刻は困る

修了試験はありません。決められた時間と内容を受ければ修了証が出ます。

気をつけたいのは時間のほうです。名北労働基準協会は「法令等で定められた講習時間・内容を受講する事が修了証交付の要件です」と書いています。遅刻や早退で時間が足りないと、修了証は出ません。2日間とも、最初から最後まで出る前提で予定を組んでください。

修了証を当日に渡す機関もあります。東京技能講習協会はカード型の修了証を修了日当日に交付しています。

有効期限はないが、5年ごとの再教育がある

修了証に法令上の有効期限はありません。一度受ければそのまま有効です。

ただし、それで終わりというわけでもありません。労働安全衛生法第19条の2は、会社に対して、能力向上のための教育を行う努力義務を定めています。製造業については、厚生労働省が「製造業における職長等に対する能力向上教育に準じた教育について」(令和2年3月31日 基発0331第7号)を出しています。

項目 内容
対象 作業中の労働者を直接指導・監督する者(作業主任者を除く)
実施の時期 職務に就いてからおおむね5年ごと/機械設備等を大幅に変更したとき
時間 合計360分(6時間)以上
内訳 基本項目120分以上(必須)。専門項目を選んだ場合はグループ演習120分以上

つまり、最初の12時間で終わりではなく、5年ごとに6時間以上の再教育が想定されています。こちらは努力義務なので、実施していない会社もあります。

給料は上がるのか

ここは正直に書きます。

職長教育を修了したこと自体に手当が付く、という例は、製造業の公開求人からは確認できませんでした。実際に付くのは、職長・班長という役職に就いたときの役職手当です。教育は、その役職に就くための条件のひとつです。

建設業向けの情報サイトでは職長手当を月1万〜3万円としているものがありますが、これは建設業の話です。製造業で同じ水準が出るかどうかは、公開情報では確認できませんでした。

金額は会社ごとに決まっています。就業規則や賃金規程を見るのが確実です。手元になくても、会社には働く人がいつでも見られるようにしておく義務が労働基準法で決められています。総務や人事に「役職手当の規定を見たい」と言えば確認できます。

職長になる前後で関わってくる資格

職長教育で身につけるのは、人を指導・監督する立場としての知識です。フォークリフトのように、作業そのものができるようになる資格とは役割が違います。

工場で班長・職長になると、次のようなものを会社から求められることがあります。

  • フォークリフト運転技能講習、玉掛け技能講習などの現場作業の資格
  • 有機溶剤作業主任者やプレス機械作業主任者など、職場に置くことが決められている作業主任者
  • 第二種電気工事士、機械保全技能士など、設備側の資格
  • 衛生管理者など、事業場の安全衛生管理側の資格

どれから手を付けるか迷う場合は、工場で稼げる資格の比較で費用と日数を見比べてみてください。

次にやること

職長教育は、自分で探して申し込むより先に、会社に確認するところから始まります。

  1. 自分の会社が対象業種かどうかを確かめる。 製造業なら、たばこ製造業と繊維工業、衣服、紙加工品の4つ以外は対象です。食品工場・印刷工場も2023年4月から対象です。
  2. 会社の担当者に、受講の予定と費用の扱いを聞く。 受講料も交通費も会社が負担すべきものとされています。受けている時間は労働時間です。
  3. 12時間コースか14時間コースかを確認する。 工場勤務なら12時間で足ります。
  4. 2日間の日程を押さえる。 遅刻・早退で時間が足りないと修了証が出ません。
  5. 役職手当の規定を確認する。 職長・班長になったときに何がどれだけ変わるかは、就業規則や賃金規程に書かれています。
  6. 5年後の再教育も頭に入れておく。 おおむね5年ごとに6時間以上の再教育が想定されています。

参考にした情報

法令と、国・公的団体・実施機関の公式サイトを中心にまとめました(確認は2026年8月)。料金や制度は変わることがあるので、最新の情報は各機関の公式サイトで確認してください。