ボイラー技士とボイラー整備士は、名前が似ていてよく混同されます。技士はボイラーを動かす資格、整備士は分解して直す資格で、法律上も別の資格です。取り方・費用・難易度、そして技士との違いをまとめます。
先に結論
- ボイラー整備士は、ボイラーや圧力容器を分解して点検・修理する仕事に必要な国家資格です。ボイラーを動かす・見守る「ボイラー技士」とは別の資格です。
- 試験を受けるだけなら学歴や実務経験はいりませんが、免許をもらうには整備の補助業務などの実務経験が必要です。
- 学科試験のみで実技はなく、合格率はここ数年だいたい60〜70%くらいで推移しています(令和7年度は63.5%)。
- 受験手数料は8,800円、免許申請の手数料は収入印紙1,500円です。独学ならだいたい1万円くらい、講習を受けると3万円台になることもあります(2026年9月時点)。
- 求人サイトの集計では、ボイラー整備士に関する求人が4,390件見つかり、給料の目安は月給23万〜56万円くらいでした(2026年9月時点)。
- ボイラー技士と両方持っていると、運転からメンテナンスまで一人で任せられる人材として現場で評価されやすい傾向があります。
ボイラー整備士とは何をする資格か
ボイラー整備士は、ボイラーや第一種圧力容器を分解して整備する仕事に必要な国家資格です。試験を実施している公益財団法人安全衛生技術試験協会は「一定の大きさを超えるボイラー又は第一種圧力容器の整備の業務を行う際に必要な資格」と説明しています(安全衛生技術試験協会によると)。具体的には、燃焼装置や給水装置、安全弁といった部品を分解して点検したり、部品を交換したり、内部を洗浄したりする仕事です(日本ボイラ協会によると)。
免許に等級や区分はなく、1種類だけです(日本ボイラ協会によると)。ボイラー技士のように特級・1級・2級といった段階分けはありません。
ボイラー技士とはどう違うのか
役割は次のようにはっきり分かれています。
- ボイラー技士(特級・1級・2級):ボイラーを動かす・見守る資格。運転や日常点検が仕事。
- ボイラー整備士:ボイラーを止めて分解して直す資格。運転はせず、整備・修理が仕事。
法律にもこの区別がそのまま出てきます。ボイラー及び圧力容器安全規則の第35条は「ボイラーの整備の業務については、ボイラー整備士免許を受けた者でなければ、当該業務につかせてはならない」と定め、第70条は同じ制限を第一種圧力容器の整備にもかけています(厚生労働省によると)。つまり、1級ボイラー技士を持っていても、整備士の資格がなければ自分でボイラーの分解整備はできません。
この資格の根拠になっているのは労働安全衛生法第61条の就業制限の規定です。危険な業務の一部について、免許か技能講習など一定の資格がなければ就かせてはならないと定めており、そのうちボイラー・第一種圧力容器の整備の業務は、ボイラー整備士免許を受けた人だけができると決められています(e-Gov法令検索によると)。試験は厚生労働大臣が指定した安全衛生技術試験協会が実施し、合格者に都道府県労働局長が免許を与える仕組みです。
対象になるのは小型ボイラーや小規模ボイラーなどを除いた、一定規模以上のボイラーや第一種圧力容器です。こうした設備を持つ工場・ビル・病院などは、整備の仕事にボイラー整備士を就かせる必要があります。ボイラーは工場の生産ライン、病院やホテルの空調・給湯といった熱源として幅広く使われているため、こうした施設で整備士の需要があります。ただし、どの業種・施設に何人の整備士が必要かという配置基準の具体的な数、免許の有効期限の有無は、公開情報からは確認できませんでした。
受験資格はあるか
ここは誤解しやすいところです。試験を受けること自体には、学歴も実務経験もいりません。安全衛生技術試験協会は「受験資格:不要」としています(安全衛生技術試験協会によると。2012年4月から受験資格が撤廃され、誰でも受験できるようになりました)。
ただし、試験に合格しても、それだけでは免許はもらえません。免許を受け取るには、次のどれかに当てはまる必要があります(日本ボイラ協会によると)。
- 一定規模以上のボイラー又は第一種圧力容器の整備の補助業務を6か月以上経験した人
- 小規模ボイラー又は小規模第一種圧力容器の整備業務を6か月以上経験した人
- 職業能力開発促進法による職業訓練のうち、ボイラー運転科を修了した人
すでにボイラー技士の免許を持っている人、または3の職業訓練修了者は、試験科目のうち「ボイラー及び圧力容器に関する知識」が免除されます。
試験の内容・合格率
試験は学科のみで実技試験はなく、五肢択一のマークシート方式です。科目は次の4つです(安全衛生技術試験協会によると)。
| 科目 | 問題数 | 配点 |
|---|---|---|
| ボイラー及び第一種圧力容器に関する知識 | 10問 | 30点 |
| 整備の作業に関する知識 | 10問 | 30点 |
| 整備の作業に使う器材・薬品等に関する知識 | 5問 | 20点 |
| 関係法令 | 5問 | 20点 |
試験時間は通常受験で2時間30分、科目免除がある場合は1時間40分です。合格基準は「各科目40%以上、かつ合計60%以上」です。
合格率は、公式サイトで確認できた令和7年度(2025年度)が63.5%(受験者2,730人・合格者1,733人)でした(安全衛生技術試験協会によると)。過去の年度は公式サイトでは非公開ですが、民間の資格情報サイトによると令和2〜6年度は60.4〜70.6%の範囲で推移しています(参考値)。ここ数年の合格率はだいたい60〜70%くらいで、学科試験のみということもあり、難易度は比較的低めとされています。
試験は全国7か所の安全衛生技術センター(北海道・東北・関東・中部・近畿・中国四国・九州)で行われます。ボイラー整備士は、北海道・東北・関東(市原)・中部・近畿(大阪試験場)・中国四国で年3回、九州のみ年2回実施されます。関東センターの東京試験場と近畿センター本体では実施されません(安全衛生技術試験協会によると)。
取得にかかる費用
受験手数料は8,800円です(2026年9月時点、安全衛生技術試験協会によると)。実技試験がないため、この金額だけで受験できます。
独学でも受けられますが、「日本ボイラ整備据付協会」の各支部が任意の受験準備講習会を開いています。過去の例では、2日間の受講料が1万〜1万6千円くらい、テキスト代が1万円前後で、支部・年度によって金額に幅があります(日本ボイラ整備据付協会によると)。
免許申請の手数料は、書面申請の場合は収入印紙1,500円です(東京労働局によると)。郵送で申請する場合は、これとは別に免許証を送り返すための返信用切手も必要です。総額の目安は、独学なら受験手数料と免許申請手数料を合わせてだいたい1万円くらい、講習を受けると3万円台になることもあります(2026年9月時点)。
取得までの流れ・期間
- 受験申込み:試験日の2か月前〜14日前まで(オンライン・郵送)。窓口申込みは2日前まで。
- 試験:全国7地区の安全衛生技術センターで実施。地区により年3回または年2回。
- 結果通知:合格発表日に通知書が発送されます。
- 免許申請:合格通知書・免許申請書・実務経験証明書などをそろえて申請。
- 免許証交付:書類に不備がなければ、申請からおおむね1か月以内に発送されます。1月や4〜5月上旬は申請が集中し、1か月を超えることもあります。
申込みから免許証が手元に届くまで、だいたい2〜4か月くらいを見ておくとよさそうです。これは各手続きの期間を単純に足した目安で、公式サイトに合計期間の明記があるわけではありません。
ボイラー技士と両方持つメリット
ボイラー技士とボイラー整備士は、実は「上下関係」の資格ではなく、別系統の資格で役割が違います。1級ボイラー技士を持っていても、整備士の資格がなければ自分でボイラーの整備をすることはできません。
だからこそ、両方の資格を持つ人は現場で重宝されます。運転もメンテナンスも一人でこなせるからです。「2級ボイラー技士+ボイラー整備士」を歓迎条件にしている求人があるという解説記事もありました(資格情報サイトによると)。未経験からのおすすめルートとして、まず受験資格がいらない2級ボイラー技士を取り、現場で実務経験を積みながら整備士の受験資格を満たす、という段階的な進め方が紹介されています。
求人でどう評価されるか
求人サイトの集計では、ボイラー整備士に関する求人が4,390件見つかり、給料の目安は月給23万〜56万円くらい(平均33.2万円くらい)でした(2026年9月時点、求人ボックスの集計によると)。
地域を絞ると求人数は少なくなります。東京都の求人サイトの集計では137件、給料の例は月給25万〜40万円、日給1万3千〜1万8千円など会社によって幅がありました。ビル設備管理系の求人サイトでは、月給20万7千円〜、年俸350万〜560万円くらいの例も見つかりました(いずれも2026年9月時点)。
まとめると、ボイラー整備士の求人は正社員・月給制が中心で、時給制のアルバイト・パート求人はあまり多くない、というのが公開情報から言えることです。
活躍する職場は、ボイラー整備を専門にする会社、ビルメンテナンス会社、化学工場・食品工場などのプラントです。公開情報によると、整備を専門にする会社やビルメンテナンス会社に所属して複数の施設を回る働き方が多いとされていますが、工場やプラントの設備保全担当として直接雇われて働くケースもあります。
ボイラー整備士は業務独占資格です。ボイラー(小型・小規模を除く)や第一種圧力容器の整備の仕事は、この資格を持つ人にしかできません。資格を取った後の具体的な昇進・昇格ルートは、公開情報からは確認できませんでした。
次にやること
- 安全衛生技術試験協会の公式サイトで、自分が受けたい試験地区の最新日程と受験手数料を確認する。
- 独学にするか講習を受けるか決める前に、住んでいる地域の「日本ボイラ整備据付協会」支部に最新の講習日程と費用を問い合わせる。
- 免許申請に必要な実務経験の年数・証明方法を、早めに勤務先や日本ボイラ協会に確認しておく。
- 設備保全の仕事全体に興味がある人は、設備保全の仕事|将来性・未経験からのなり方・役立つ資格もあわせて見てみる。
参考にした情報
公益財団法人安全衛生技術試験協会、一般社団法人日本ボイラ協会、日本ボイラ整備据付協会、厚生労働省、e-Gov法令検索、東京労働局、求人ボックスなどの公開情報をもとにまとめました(取得は2026年9月)。制度や手数料は変わることがあるため、申し込み前に最新の公式情報で確認してください。
- 公益財団法人 安全衛生技術試験協会「ボイラー整備士の紹介」 https://www.exam.or.jp/introduction/h_shokai151/
- 公益財団法人 安全衛生技術試験協会「試験日程」 https://www.exam.or.jp/schedule/h_nittei151/
- 公益財団法人 安全衛生技術試験協会「試験手数料」 https://www.exam.or.jp/h_tesuryo/
- 公益財団法人 安全衛生技術試験協会「合格率」 https://www.exam.or.jp/h_gokakuritsu/
- 一般社団法人 日本ボイラ協会「ボイラー整備士免許の取得について」 https://www.jbanet.or.jp/license/boiler-license/mechanic/
- 一般社団法人 日本ボイラ協会「ボイラー技士等関係免許」 https://www.jbanet.or.jp/license/boiler-license/
- 日本ボイラ整備据付協会「受験準備講習会・各種講座」 https://www.boseikyo.or.jp/lecture/index.html
- 厚生労働省「ボイラー及び圧力容器安全規則」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=74013000&dataType=0&pageNo=1
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057
- 東京労働局「免許関係手続きQ&A」 https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/anzen_eisei/ae-menkyo/QandA.html
- 求人ボックス「ボイラー整備士の転職・求人情報」 https://xn--pckua2a7gp15o89zb.com/%E3%83%9C%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%BC%E6%95%B4%E5%82%99%E5%A3%AB%E3%81%AE%E4%BB%95%E4%BA%8B
