甲種危険物取扱者の取り方・受験資格・難易度|乙4との違いも

乙4は、受験資格なしで誰でも挑戦できる資格でした。ですが甲種はちがいます。学歴や実務経験など、決まった条件を満たした人しか受けられません。

この違いに気づかないまま申し込もうとして、あとから条件を満たしていないと分かる人もいます。ここでは、甲種危険物取扱者の受験資格・費用・難易度を、公開情報で確認できた範囲でまとめました。乙種との違いや、工場での評価も紹介します。

甲種危険物取扱者ってどんな資格?

危険物取扱者は、消防法にもとづく国家資格です。「甲種」「乙種(第1類〜第6類)」「丙種」の3つに分かれています。

  • 甲種:第1類〜第6類のすべての危険物を扱え、資格を持たない人が作業するときの立ち会いもできます。3つの区分の中で、扱える範囲がいちばん広い資格です。
  • 乙種:免状を取った類だけを扱えます。たとえば乙4(乙種第4類)なら、ガソリンやアルコール類、灯油、軽油、重油などです。
  • 丙種:乙4より扱える範囲が狭く、ガソリン・灯油・軽油・重油など決まった危険物だけです。立ち会いはできません。

乙種と丙種は、誰でも受験できます。ですが甲種だけは、次で説明する受験資格を満たさないと受けられません。

受験資格はどうなっている?

一般財団法人消防試験研究センターの公開情報によると、甲種を受験するには、次のどれかに当てはまる必要があります(2026年7月時点)。

パターン 内容
学歴(学科卒業) 大学などで化学に関する学科を修めて卒業した人
学歴(単位数) 大学などで化学に関する授業を15単位以上とった人(在学中・中退・通信教育でも対象)
修士・博士 化学に関することを研究して修士・博士の学位を取った人
乙種取得後の実務経験 乙種の免状を取ったあと、危険物を扱う実務経験を2年以上積んだ人
乙種の複数区分取得 乙種のうち「第1類か第6類」「第2類か第4類」「第3類」「第5類」の4種類以上の免状を持っている人

「学歴(単位数)」の対象になる学校は、大学・短期大学・高等専門学校・専修学校・高等学校専攻科・放送大学など幅広く含まれます。出願のときは、単位を取ったことを証明する書類が必要です。「乙種取得後の実務経験」で受ける場合も、実務経験を証明する書類の提出が求められます。

消防試験研究センターは「受験資格チェック表」を公開しています(2024年7月時点)。申し込む前に、自分がどのパターンに当てはまるか、これで確認しておくと安心です。

つまり、乙4だけを持っている人が、そのまま甲種を受けることはできません。乙種を経由するなら、「乙種を取ったあと2年以上の実務経験を積む」か、「乙種を4区分以上取る」かのどちらかのルートが必要です。

試験の受け方

試験の実施団体は、乙種・丙種と同じ一般財団法人消防試験研究センターです。東京の中央試験センターと、道府県ごとの支部で試験が行われます。住んでいる場所に関係なく、自分が受けたい都道府県で受験できます。

申し込みは「電子申請」と「書面申請(願書)」の2通りです。電子申請なら受付期間中いつでも申し込めて、受験票は自分でダウンロードします。書面申請なら、試験日の1週間前までに受験票が郵送されます。

甲種の年間の試験回数は、都道府県によって差があります。乙4は東京で月に何度も試験がありますが、甲種はそれより少ない見込みです。正確な回数は公開情報だけでは確認できませんでした。「都道府県名+危険物取扱者 試験日程」で検索し、消防試験研究センターの支部ページで直接確かめてください。

費用の目安

受験料・免状の手数料

項目 金額
受験料(甲種) 7,200円
受験料(乙種) 5,300円
受験料(丙種) 4,200円
新規の免状交付手数料(合格後・1種類につき) 2,900円
免状の再交付手数料(紛失・汚損など) 1,900円
免状の写真書換え手数料(10年ごと) 1,600円

※いずれも消費税はかかりません。受験料は一度払うと返金されません。上記は令和6年5月の改定後の金額です(それ以前は甲種6,600円・乙種4,600円・丙種3,700円でした)。

独学の教材費・講座費用

独学の場合、参考書と問題集をあわせて4,000〜5,000円ほどが目安です。

通信講座を使う場合は、19,800円〜32,780円ほどという情報がありました。標準の学習期間を4ヶ月とし、サポート期間を最大8ヶ月まで延長できる講座もあります。教室に通う形の講座については、費用の目安を確認できませんでした。

この教材費・講座費用は、各資格スクールが独自に公開している金額です。消防試験研究センターなど公的機関が決めた金額ではないので、あくまで目安として見てください。

難易度・合格率

消防試験研究センターの公開情報によると、甲種の合格率は次のとおりです。

年度 甲種 乙4(参考) 乙4以外の乙種(参考)
令和6年度 35.2% 31.7% 60%台
令和7年度 34.0% 31.9% 60%台

数字だけ見ると、甲種のほうが乙4より合格率がやや高く見えます。ただしこれは単純に比べられません。甲種は受験資格を満たした人だけが受けるので、もともと危険物の知識がある人が多い試験です。それでも合格率が突き抜けて高くないのは、甲種ならではの難しさがあるからです。

  • 科目免除がない:乙種は、1つの類の免状を持っていれば、他の類を受けるとき「法令」と「物理学及び化学」の科目が免除されます。甲種にはこの免除が一切なく、毎回すべての科目を受けます。
  • 出題範囲が広い:甲種は第1類〜第6類をまとめて扱うので、乙種1類分より覚えることが多くなります。
  • 出題数は、法令15問・物理学及び化学10問・危険物の性質並びに火災予防及び消火の方法20問の、合計45問です。合格には、3つの科目それぞれで60%以上正解する必要があります(1科目でも下回ると不合格)。

令和4・5年度の甲種合格率は、公開情報からは確認できませんでした。

勉強時間の目安

勉強時間は、もともとの知識によって差があります。目安として、次のような情報がありました。

  • 乙種を4区分以上持っていて受験資格がある人:80〜120時間ほど
  • 化学の知識はあるが乙種の経験がない人(学歴の条件で受ける場合):100〜150時間ほど
  • 化学がはじめての人で乙種の経験もない人:150〜250時間ほど(受験資格を得るための勉強も含む)

出典によって数字にばらつきがあるので、あくまで幅として見てください。乙種の知識や経験がある人ほど、勉強時間は短く済む傾向があります。

工場での評価(資格手当・危険物保安監督者)

甲種は、化学工場や石油関連の工場、製薬工場など、危険物を扱う製造業で評価されやすい資格です。求人票で「歓迎資格」として書かれていたり、他の資格とあわせて優遇されたりする例が見られました(公開情報によると)。

資格手当については、月3,000円〜10,000円ほどという情報がありました。ただし、これは求人票を大量に確認した結果ではなく、公開されている一部の情報にとどまります。「甲種を取れば必ずこの金額の手当がつく」とは言い切れません。実際の金額は、応募先の求人票で確認してください。

甲種には、もうひとつ知っておきたい役割があります。「危険物保安監督者」です。消防法では、一定の製造所や貯蔵所で、危険物取扱者の中から危険物保安監督者を選ばなければならないと決められています。選ばれるには、甲種・乙種のどちらの場合も6ヶ月以上の実務経験が必要です。そのうえで、乙種の場合は免状を取った類の危険物についてしか監督者になれませんが、甲種なら、すべての類の危険物について監督者になれます。現場の管理側を目指す人にとっては、この違いが甲種を取る理由のひとつになります。

免状の有効期限と更新の手続き

危険物取扱者の免状そのものに、有効期限はありません。一度取得すれば、更新の必要なく一生使えます。これは甲種・乙種・丙種とも共通です。

ただし、免状の写真は、撮影から10年が経つと書き換えが必要です。10年を超えた免状は、法令上「不備な免状」になってしまうため、手数料1,600円を払って手続きをします。

申請先は、免状を取得した道府県の消防試験研究センター支部です(東京都で取得した場合は中央試験センター)。

次にやること

甲種危険物取扱者は、扱える危険物の範囲がいちばん広く、危険物保安監督者にもなれる資格です。ただし、受験には条件があります。最後に、今日からできることを整理します。

  1. 自分が受験資格を満たしているか確認する。 消防試験研究センターの「受験資格チェック表」で、学歴・実務経験のどのパターンに当てはまるか調べましょう。
  2. 必要な証明書類を準備する。 卒業証明書や単位取得証明書、乙種危険物取扱実務経験証明書など、パターンごとに必要な書類が変わります。早めに確認しておくと安心です。
  3. 受験地と試験日を決める。 「都道府県名+危険物取扱者 試験日程」で検索し、消防試験研究センターの支部ページで最新の日程を確かめてください。
  4. 勉強の計画を立てる。 80〜250時間と幅がありますが、自分の経験に近い目安を参考に、無理のないペースで進めましょう。

乙4をまだ持っていない人は、先に危険物取扱者乙4の取り方・費用・難易度を読んでおくのもおすすめです。誰でも受けられる資格なので、甲種を目指す前のステップとして考えている人もいます。どの資格から取るか迷っている人は、工場で稼げる資格の比較もあわせてどうぞ。

参考にした情報

一般財団法人消防試験研究センターの公開情報を中心にまとめました(確認は2026年7月)。金額や日程、受験資格の条件は変わることがあるため、申し込み前に必ず公式サイトで最新情報を確認してください。