プラスチック工場の求人を見ると、3交替の募集が目につきます。夜勤があるのは工場では珍しくありませんが、樹脂成形の場合は理由がはっきりしています。
厚生労働省の職業解説に、こう書かれています。
プラスチック製品製造工場では、生産効率を上げるため機械の連続運転が行われているケースが多く、この場合勤務形態は3交替制がとられる
機械を止めない前提で回しているから、人が交替でつく。ここが、この仕事の形をだいたい決めています。
機械が作り、人は見張る
樹脂成形は、プラスチックの粒を溶かして金型に流し込み、冷やして固めて製品にする仕事です。ペットボトルのキャップから自動車の内装まで、身のまわりのプラスチック製品の多くがこの方法で作られています。
厚生労働省は、職業情報提供サイト(job tag)で作業の流れをこう説明しています。
- 金型を成形機に取り付ける
- 材料を投入し、温度・圧力・速度をセットする
- 試運転をして条件を調整する
- 連続運転に入る(材料を補給する)
- 機械を監視して、不良品が出たら対応する
- 製品を取り出し、検査して仕上げる
ここで押さえておきたいのは、自動化が進んだ今は機械監視が中心だと書かれている点です。ずっと手を動かし続ける仕事というより、機械が正しく動いているかを見て、材料を切らさないようにして、おかしくなったら手を打つ。そういう組み立てになっています。
ただし、厚労省の説明はここで終わりません。監視が中心になったことについて「それにはプラスチック成形の基本的な技術と知識が不可欠である」と続きます。見ているだけで済む仕事、という意味ではありません。機械の状態や製品の出来から、条件がずれてきたことに気づける必要があります。
工場の業種そのものを見比べたい場合は、工場の業種別 働きやすさ比較のほうが向いています。
3交替になりやすいのはなぜか
成形機は、いったん条件を決めて安定して動き出すと、止めないほうが効率のいい機械です。厚労省の解説にある「生産効率を上げるため」というのは、そういう意味だと読めます。機械を止めないから、人が交替でつくことになります。
ただし、すべての工場がそうだとは限りません。連続運転をしていない工場なら日勤だけのこともあります。求人票の勤務形態を見て、何交替なのか、夜勤がどれくらいの周期で回るのかを確認してください。生活のリズムに直結する部分です。
給料の目安
job tag に載っている数字です。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 平均年収 | 458.2万円 |
| 時間当たりの賃金(一般労働者) | 2,121円 |
| 時間当たりの賃金(短時間労働者) | 1,261円 |
| 平均年齢 | 43歳 |
| 月間労働時間 | 163時間 |
| 全国の就業者数 | 298,880人 |
※厚生労働省「job tag」より(賃金は令和7年賃金構造基本統計調査を加工したもの。就業者数は令和2年国勢調査。2026年7月に確認)。全国・全産業の一般労働者などの平均で、残業代と賞与を含みます。
この表の読み方には、注意する点があります。これはその職業で今働いている人の平均で、これから入る人がもらえる額ではありません。平均年齢が43歳なので、その年齢まで続けた人を含んだ数字です。
3交替の職場なら、深夜手当や交替手当が付きます。逆に日勤だけの職場では、その分がありません。同じ業種でも勤務形態で手取りが変わるので、月収例を見るときは何交替の前提かをあわせて確認してください。
危ないのは、機械が動いているときではない
成形機は、金型を強い力で締めて樹脂を流し込む機械です。当然あぶないので、法律で対策が決められています。
労働安全衛生規則の第147条は、見出しからして「射出成形機等による危険の防止」です。機械の名前が条文に出てきます。
事業者は、射出成形機、鋳型造形機、型打ち機等(中略)に労働者が身体の一部を挟まれるおそれのあるときは、戸、両手操作式による起動装置その他の安全装置を設けなければならない。
2 前項の戸は、閉じなければ機械が作動しない構造のものでなければならない。
2項が効いています。安全扉を閉じないと機械が動かない構造にしなければならない、という決まりです。動いている機械に手を入れられない作りが、法律で義務づけられています。
では事故は起きないのかというと、そうではありません。厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」に、プラスチック製品製造業で起きた死亡災害の記録が載っています。表題は「射出成形機の金型のメンテナンス中に金型の下敷きとなって死亡」です。
この事故が起きたのは、機械を止めて金型の手入れをしているときでした。
作業していたのは2人です。自動車の内装材を作る、重さ4トンの金型を機械から外し、立てた状態にして、差し込んであるピンを抜いていました。1人が反対側から金型を支える形です。始めて30分ほど経ち、最後の6本目のピンを抜こうとしたとき、金型が後ろにゆっくり倒れ、支えていた人の上に倒れかかりました。
記録には、本来の手順も書かれています。
金型のメンテナンス作業は、通常、金型にアイボルトを取り付け、クレーンを用いて金型を成形機から外し、金型をつり上げた状態でピン抜き作業を行っていたが、災害発生当日は、前日に金型を外していたため、クレーンを使用しないでピン抜き作業を行っていた。
いつもはクレーンで吊って作業していたのに、その日は使わなかった。厚労省はこの災害の原因として、作業手順書が作られていなかったこと、クレーンを使わなかったこと、作業者への安全衛生教育を実施していなかったことを挙げています。
つまり、運転中の危険は安全扉で囲われている一方で、扉を開けて中に入る場面、機械から金型を外す場面にリスクが残ります。しかもこうした段取り替えや手入れは、毎日やる作業ではありません。厚労省はこの作業を「非定常作業」と呼んでいます。たまにしかやらないからこそ手順が決まっていなかった、というのがこの事故の構図です。
見学や面接の機会があれば、段取り替えのときの手順が決まっているか、聞いてみる価値があります。
金型交換に特別教育は要らない。ただしクレーンを使うなら別
まぎらわしい点を1つ整理します。
金属をプレスする機械(動力プレス)の場合、金型の取り付け・取り外し・調整をするには特別教育を受けた人でないといけません(労働安全衛生規則第36条第2号)。プレスの話は自動車部品工場の仕事にまとめています。
一方、射出成形機の金型交換そのものを名指しした特別教育はありません。 労働安全衛生規則で「射出成形」が出てくるのは、さきほどの第147条だけです。
ただし、金型をクレーンで吊るなら話は別です。荷を吊る作業(玉掛け)とクレーンの運転には、それぞれ資格が要ります。
| 作業 | 区分 | 必要なもの |
|---|---|---|
| 玉掛け | つり上げ荷重1トン以上 | 技能講習の修了 |
| 玉掛け | 1トン未満 | 特別教育の修了 |
| クレーンの運転 | つり上げ荷重5トン以上 | 免許(クレーン・デリック運転士) |
| クレーンの運転 | 5トン未満 | 特別教育の修了 |
※労働安全衛生法・クレーン等安全規則より(長崎労働局「労働安全衛生法に定める資格等一覧」で確認)。5トン以上でも、床上で操作して荷と一緒に移動する方式は免許か技能講習の修了で運転できます。
取り方と費用は玉掛け技能講習の取り方・費用・日数とクレーン運転の資格の取り方・費用にまとめました。
持っていると役に立つ資格
job tag が、この職業の関連資格として挙げているものです。
- プラスチック成形技能士(特級・1級・2級・3級)
- 強化プラスチック成形技能士(1級・2級)
国の技能検定の一種で、等級が分かれています。未経験で入るときに必要なものではありません。働きながら腕を証明する資格、という位置づけです。
先ほどの玉掛けやクレーンは、入る前に持っていると仕事の幅が広がります。工場で使える資格を横並びで見たい場合は、工場で稼げる資格の比較にまとめています。費用をかけずに取る方法としては職業訓練もあります。
次にやること
樹脂成形の工場を候補にするなら、確認する順番はこうなります。
- 何交替かを確かめる。 連続運転をしている工場は3交替になりやすい仕事です。日勤だけの職場もあるので、求人票の勤務形態を見て、夜勤の周期まで聞いてください。ここが生活への影響がいちばん大きい部分です。
- 月収例が何交替の前提かを見る。 深夜手当や交替手当が入っているかどうかで、同じ業種でも金額が変わります。
- 自分がどの工程を担当するか聞く。 機械監視が中心なのか、取り出しや検査、仕上げに入るのか、金型の段取りまでやるのかで、体への負担が変わります。
- 段取り替えのときの手順を見る。 見学の機会があれば、金型を外すときにクレーンを使っているか、決められた手順が守られているかを見ておきます。事故はこの場面で起きています。
- クレーンや玉掛けの資格は、あると強い。 金型の段取りに関わる作業なので、持っていると任せてもらえる範囲が広がります。
※この記事の数字は2026年7月時点のものです。賃金の統計は毎年更新されます。応募の前に、求人票と会社の説明で今の条件を確認してください。
参考にした情報
- 厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」:プラスチック成形(2026年7月確認)
- e-Gov法令検索:労働安全衛生規則(第147条・第36条)
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト」:労働災害事例(射出成形機の金型メンテナンス中の死亡災害)(2026年7月確認)
- 長崎労働局:労働安全衛生法に定める資格等一覧(2026年7月確認)
