職業訓練で工場の資格を取る|費用・期間・申し込みの流れ

職業訓練は「無料で資格が取れる制度」と紹介されることがあります。半分は合っていますが、そのまま受け取ると2か所でつまずきます。

1つは、お金。受講料は無料でも、テキスト代は自分で払います。厚生労働省のパンフレットには「受講料はテキスト代などの実費(1、2万円程度)を除き無料です」と書かれています。

もう1つは、資格。訓練の中で取れる資格と、自分で申し込んで受験する資格があります。ポリテクセンター岡山は、はっきりこう書いています。

訓練は仕事に必要な知識と技術を習得することを目標としており、各種資格取得を目標とした訓練ではありません。

この2つを先に知っておくと、あとで話が違うとならずに済みます。

職業訓練(ハロートレーニング)とは

厚生労働省は、この制度を「希望する仕事に就くために必要な職業スキルや知識などを習得することができる公的制度」と説明しています。ハロートレーニングは愛称で、正式には公的職業訓練といいます。

区分は4つあります。離職者訓練・求職者支援訓練、在職者訓練、学卒者訓練、障害者訓練です。仕事を探しながら工場系のスキルを身につけたい人が関係するのは、最初の2つになります。

入口はハローワークです。厚労省も「受講を希望される方は、ハローワークまでご相談ください」と案内しています。訓練校に直接申し込むのではありません。

2つの種類は、雇用保険で分かれる

工場を探す人に関係が深い訓練は2種類あって、今、雇用保険(失業給付)を受けられるかどうかで入口が変わります。

離職者訓練(公共職業訓練) 求職者支援訓練
主な対象 主に雇用保険を受給している人 主に雇用保険を受給できない人(受給が終わった人を含む)
実施するのは JEED(ポリテクセンター)や都道府県 民間の教育訓練機関が、厚生労働大臣の認定を受けて実施
期間 おおむね3か月〜2年(ポリテクセンターの施設内訓練は標準6か月) 2〜6か月
受講料 原則無料(テキスト代等は自己負担) 原則無料(テキスト代などは自己負担)
訓練中のお金 雇用保険を受けながら通える 要件を満たせば職業訓練受講給付金

※2026年7月時点・厚生労働省とJEEDの公式サイトより。

見落とされやすいのは、右の列です。雇用保険を受けられない人にも道が用意されています。会社を辞めてから時間が経った人、雇用保険に入っていなかった人、給付が終わってしまった人も対象になります。

工場・製造で使えるコースと、取れる資格

ポリテクセンターの実際のコースを見ると、工場で使う資格がカリキュラムに組み込まれています。表の3列目は、受講すれば授業として受けられるものです。4列目は、自分で申し込んで受ける試験です。

施設・科名 期間 訓練の中で取れる資格 任意で受験する資格
ポリテクセンター千葉「溶接技術科」 6か月 ガス溶接技能講習/アーク溶接特別教育/自由研削といし特別教育/粉じん作業特別教育/フォークリフト運転特別教育 JIS溶接技能者評価試験
ポリテクセンター福島「溶接施工科」 6か月 アーク溶接特別教育/自由研削といし特別教育/ガス溶接技能講習 記載を確認できず
ポリテクセンター宮崎「機械設備保全科(企業実習付)」 6か月 アーク溶接特別教育 技能検定(旋盤・フライス盤・NC旋盤・機械検査など)/CAD利用技術者試験
ポリテクセンター岡山「電気設備技術科」 6か月 低圧電気取扱業務特別教育修了証 第二種電気工事士/消防設備士乙種第4類
ポリテクセンター君津「産業機械オペレーション科」 4か月 技能講習…フォークリフト運転/玉掛け/小型移動式クレーン運転/床上操作式クレーン運転/車両系建設機械(整地等・解体用)運転/不整地運搬車運転。特別教育…車両系建設機械(締固め用) 大型特殊自動車免許/移動式クレーン運転士免許

※2026年7月時点で各校の公式ページに掲載されていた内容。コースは年度で入れ替わります。

千葉の溶接技術科のように、1つのコースで5種類の資格が付いてくる例もあります。フォークリフトや玉掛けを個別に取ると費用がかかりますが、訓練のカリキュラムに入っていれば受講料の中に含まれます。個別に取る場合の費用は、フォークリフト免許の取り方・費用・日数玉掛け技能講習の取り方・費用・日数にまとめています。

ただし、任意で受験する資格のほうは扱いが違います。ポリテクセンター千葉は、JIS溶接技能者評価試験について「合格を保証するものではありません」と書いています。訓練で習ったうえで、自分で申し込んで受ける試験です。

コース名は施設によって違います。愛知のポリテクセンター中部には機械加工エンジニア科、クラフト溶接科、電気設備エンジニア科、CAD/NC技術科など、いずれも6か月のコースがあります。関西にはメタルワーク科やものづくりロボット技術科があります。近くの施設に何があるかは、ハローワークで聞くのが早道です。

都道府県が運営する学校もあります。埼玉県立川口高等技術専門校の機械科(デュアルシステム)は12か月で、前半8か月が校内での機械加工の基礎、その後およそ4か月が企業実習です。この実習は有給です。

無料の範囲と、実際に用意するお金

自分で払うもの

受講料は原則無料です。「原則」が付くのは、一部に有料のものがあるためです。厚生労働省は、在職者や高校卒業者を対象にした高度な訓練は原則有料と説明しています。東京労働局のページには「1年以上の科目は一部有料」との記載もあります。

自己負担になるのはテキスト代です。金額は施設とコースで違います。

  • 厚生労働省のパンフレットの目安:1、2万円程度
  • ポリテクセンター愛媛:約3,000円〜18,000円程度
  • ポリテクセンター山梨:3,500円から12,500円程度
  • ポリテクセンター釧路:10,000円〜21,000円程度(ほかに任意加入の保険料 約5,000円+振込手数料)

※2026年7月時点・各施設の公式ページより。

作業服代が別に要る施設もあります。ポリテクセンター千葉は「テキスト代、作業服代は自己負担です」と書いています。金額は施設に問い合わせれば分かるので、入校前に確認しておくと予定が立てやすくなります。

訓練中の生活費

ここは立場で分かれます。

雇用保険を受けられる人は、雇用保険の基本手当を受けながら訓練に通えます。

雇用保険を受けられない人は、要件を満たせば「職業訓練受講給付金」を受けられます。中身は3つです。

給付の名前 金額
職業訓練受講手当 月額10万円
通所手当 通所経路に応じた所定額(月上限42,500円)
寄宿手当 月額10,700円(配偶者などと別居して寄宿する場合)

※2026年7月時点・厚生労働省の公式サイトより。

主な要件は次のとおりです。これらをすべて満たす必要があります。

  • 本人の収入が月8万円以下
  • 世帯全体の収入が月30万円以下
  • 世帯全体の金融資産が300万円以下
  • 現在住んでいるところ以外に土地・建物を持っていない
  • 原則としてすべての訓練日に出席する(やむを得ない欠席がある場合でも8割以上)

要件は全部で8つあり、上の5つのほかに「同じ世帯に同時に給付金を受けている人がいない」「過去3年以内に不正受給をしていない」などがあります。受けられるかどうかは一人ひとりの状況で決まるので、自分が当てはまるかは、ハローワークの窓口か厚生労働省の求職者支援制度のページで確認してください。ここに書いた数字は目安です。

なお、収入の条件を少し超えていても、本人の収入が月12万円以下・世帯全体が月34万円以下なら、通所手当だけ受けられる場合があります。全部あきらめる前に、窓口で聞いてみる価値はあります。

ここで1つ。給付金の要件を満たさなくても、訓練そのものは無料で受けられます。厚生労働省も、支給要件を満たさない場合でも無料の職業訓練は受講できる、と案内しています。給付が出ないから通えない、ということにはなりません。

申し込みの流れ

厚生労働省が4つの段階で示しています。

  1. ハローワークで求職申込み・職業相談
  2. 訓練の受講申込み
  3. 面接・筆記試験等を受験
  4. 合格したら受講あっせん

3番目を見てください。選考を通らないと受講できません。 申し込めば必ず通えるわけではありません。

まずやることは、ハローワークで求職の申し込みをして、窓口で「職業訓練を受けたい」と相談することです。どのコースがいつ始まるか、どこの施設にどんな科があるかは、窓口で確認できます。

通う前に知っておきたいこと

選考で落ちることがあります。 面接や筆記試験があるので、志望動機は準備していきます。

給付金には出席の要件があります。 原則としてすべての訓練日に出席が必要で、やむを得ない欠席がある場合でも8割以上です。半年通いきれるかどうかは、体調やほかの事情も含めて、申し込む前に考えておく部分です。

修了したあとの就職はどうなっているか。厚生労働省が就職率を公表しています。令和6年度(速報値)で、公共職業訓練の施設内訓練が85.7%、委託訓練が72.4%でした。公共職業訓練のこの数字は「年度末までに訓練を修了した人の3か月後の就職状況」という定義です。

求職者支援訓練は、基礎コース60.9%、実践コース61.7%です(同じく令和6年度・速報値)。こちらは数え方が違っていて、雇用保険が適用される就職だけを分子にしています。それ以外の就職も含めた「従前の就職率」だと基礎76.2%、実践77.7%です。同じ訓練でも、数え方で15ポイント以上変わります。

※厚生労働省「ハロートレーニング(公的職業訓練)の実施状況(詳細版)」より。

この2つは、対象になる人も訓練の中身も違います。施設内訓練のほうが数字が高いから有利、とは読めません。

それから、就職を保証する制度ではありません。厚生労働省とJEEDのページ、公式のパンフレット、各校のよくある質問まで見ましたが、修了すれば就職できるという記載はどこにもありませんでした。資格と技能を身につけて応募できる状態になる、というところまでが訓練の役目です。

次にやること

工場系の資格を、お金をかけずに取りたい場合の順番です。

  1. ハローワークに行って、求職の申し込みをする。 訓練の入口はここだけです。申し込みの窓口も相談も、すべてハローワーク経由になります。
  2. 自分がどちらの訓練に当てはまるか聞く。 雇用保険を受けられるかどうかで、離職者訓練か求職者支援訓練かが変わります。窓口で確認できます。
  3. 近くの施設のコース一覧をもらう。 溶接、電気設備、機械加工、CAD・NCなど、どの科がいつ開講するかは地域で違います。開講時期を逃すと数か月待つことがあります。
  4. そのコースで取れる資格を確認する。 カリキュラムに含まれる資格と、任意で受験する資格を分けて聞いてください。求人でよく見る資格が含まれていれば、その分だけ費用が浮きます。
  5. テキスト代と作業服代を準備する。 数千円から2万円台が目安です。給付金が受けられるかも、あわせて窓口で相談してください。

どの資格が工場で評価されるかを先に知りたい場合は、工場で稼げる資格の比較から読むと、コース選びの軸が決まります。

参考にした情報

※コースの内容・金額・制度は変わります。応募の前に、必ずその時点の公式ページとハローワークで確認してください。