二級ボイラー技士を持っていると、講習を受けなくても「圧力容器取扱作業主任者」になれる場合があります。逆に言えば、ボイラーとは別に、この資格を単独で取る道もあるということです。化学工場や食品工場の求人でこの言葉を見た人は、両者の関係が気になるところではないでしょうか。
この記事では、普通第一種圧力容器取扱作業主任者の取り方・費用・日数を、公開情報をもとに整理しました。ボイラー技士との違いや、工場での使いどころもあわせて紹介します。
圧力容器取扱作業主任者とはどんな資格か
この資格は、労働安全衛生法にもとづく「作業主任者」のひとつです。第一種圧力容器を持つ工場は、法律で決められた資格を持つ人の中から作業主任者を選んで、安全な取り扱いを管理させる義務があります。具体的な選任のルールは「ボイラー及び圧力容器安全規則」に定められています(出典:厚生労働省「ボイラー及び圧力容器安全規則」、日本ボイラ協会「圧力容器の取扱い管理と作業主任者」)。
免許試験を受け直す必要はなく、「技能講習」を受けて講習最後の修了考査に受かれば取れる資格です(出典:日本ボイラ協会 愛知支部、日本ボイラ協会「ボイラー・圧力容器の技能講習、特別教育」)。
「圧力容器」とはどんな設備か
圧力容器とは、中に圧力がかかった気体や液体を入れておくタンクのような設備のことです。大きさや圧力によって、次のように区分されています(出典:日本ボイラ協会「第一種圧力容器(小型圧力容器)の適用区分」)。
| 区分 | どんな設備か |
|---|---|
| 第一種圧力容器 | 蒸気などを発生させる容器や、圧力のかかった気体・液体を保有する容器のうち、一定の大きさ・圧力を超えるもの |
| 小型圧力容器 | 第一種圧力容器の中でも、さらに小さいもの |
| 第二種圧力容器 | ゲージ圧力0.2メガパスカル以上の気体を保有する容器(第一種圧力容器を除く)。蒸気ではなく圧縮空気のような気体を扱うものが中心 |
正確な数値の基準(労働安全衛生法施行令第1条)は、教習機関の説明ページの数値までは確認できましたが、法令の原文そのものは今回確認できませんでした。詳しく知りたい場合はe-Gov法令検索で「労働安全衛生法施行令」を確認してください。
この資格には区分があります。
- 普通第一種圧力容器取扱作業主任者:化学設備にかかるもの以外の第一種圧力容器が対象。受講に資格制限はなく、誰でも受講できます。講習は12時間・2日間です。
- 化学設備関係第一種圧力容器取扱作業主任者:化学設備にかかるものを含め、一部の例外(自動車用燃料装置など)を除いて第一種圧力容器の作業主任者になれる、より対象範囲の広い資格です。受講には化学設備(配管を除く)の取扱い作業に5年以上従事した経験という条件があります。講習時間は21時間です。
(出典:日本ボイラ協会 北海道支部「化学設備関係第一種圧力容器取扱作業主任者講習」)
この記事では、誰でも受講できる「普通第一種圧力容器取扱作業主任者」を中心に紹介します。
なお、技能講習ではなく試験(免許)で取る「特定第一種圧力容器取扱作業主任者」という制度もあります。これは技能講習の「普通」「化学設備関係」とは別の制度なので、混同しないよう注意してください。
ボイラー技士とは何が違うのか
ボイラー技士(ボイラー取扱作業主任者)は、ボイラーという蒸気を作る設備を扱うための資格です。第一種圧力容器取扱作業主任者は、圧力容器という圧力のかかったものを保管・処理する設備を扱うための資格で、対象の設備が違います。
ただし、法律上のつながりがあります。化学設備以外の第一種圧力容器であれば、二級ボイラー技士以上の免許を持っていれば、それだけで第一種圧力容器取扱作業主任者としても選任できます。つまり、ボイラー技士の資格があれば、普通第一種圧力容器取扱作業主任者の技能講習を別に受けなくてもよい場合があります(出典:日本ボイラ協会「圧力容器の取扱い管理と作業主任者」)。
これは「講習が短くなる」制度ではなく、「ボイラー技士免許があれば、そもそもこの講習を受けなくても作業主任者になれる場合がある」という制度です。正確な条件(容器の大きさなど)は複雑なので、詳しくは日本ボイラ協会や勤務先の労働局に確認するのがおすすめです。
工場によっては、ボイラーと第一種圧力容器の両方の設備があり、それぞれに主任者を選任しないといけないケースもあります。その場合は、実質的に両方の資格(またはそれに準じる資格)が必要になることもありますが、必ず両方必要というわけではありません。
受講資格はある?
普通第一種圧力容器取扱作業主任者技能講習には、受講資格の制限がありません。年齢・学歴・実務経験を問わず、誰でも受講できます(出典:日本ボイラ協会 東京支部、ボイラ・クレーン安全協会 宮城事務所)。
比較として、化学設備関係の講習は化学設備(配管を除く)の取扱い作業に5年以上従事した経験が条件です。
どこで取る?費用の目安
実施しているのは、日本ボイラ協会の各都道府県支部、ボイラ・クレーン安全協会の各事務所、労働基準協会など、複数の登録教習機関です。地域によって窓口が違うので、住んでいる都道府県で検索し直す必要があります。
調べた範囲での受講料は、次のとおりです(2026年8月時点)。
| 実施機関 | 受講料の目安 |
|---|---|
| 日本ボイラ協会 東京支部 | 18,700円(テキスト代別途) |
| 日本ボイラ協会 北海道支部 | 16,500円+テキスト代2,530円(合計約1万9,000円) |
| ボイラ・クレーン安全協会 宮城事務所 | 会員・学割17,624円、非会員17,824円(テキスト代込み) |
| 宮崎労働基準協会 | 会員17,380円、一般18,480円(テキスト代込み) |
まとめると、受講料はテキスト代を含めて、だいたい1万7,000円〜2万円前後(2026年8月時点、確認できた4機関の範囲)です。「テキスト代込み」か「別途」かは機関によって違うので、申し込み前に必ず自分が使う機関のページで確認してください。宮崎労働基準協会のように、年度によって開催予定がない機関もあるので、日程もあわせて確認しましょう。
何日かかる?修了考査の中身・難易度
講習は学科講習のみで、合計12時間・2日間というのが基本の型です(出典:jba-hokkaido.sakura.ne.jp、jba-aichi.com)。
科目は、確認できた範囲では次の3つです。
- 第一種圧力容器の構造に関する知識
- 第一種圧力容器の取扱いに関する知識
- 関係法令
各科目の時間の内訳は、今回確認できたページには記載がなく、確認できませんでした。
2日目の最後に修了試験(考査)があり、合格すると修了証が交付されます。ただし、この講習に限った修了試験の合格率・難易度の公表データは、今回見つけられませんでした。確認できなかった、とはっきり書いておきます。ボイラー技士のような学科試験とは違い、2日間の講習を受けたうえで受ける確認テストという位置づけです。
工場で使う場面はある?
日本ボイラ協会の説明では、圧力容器を使用・設置する事業所には、この資格を持つ人の配置が法律で義務づけられているとされています。ただし、具体的な業種名までは公式ページには書かれていませんでした。
一方、求人ボックスに実際に載っていた求人の業種からは、次のような現場でこの資格が求められていることが分かります(2026年8月時点の掲載求人より、出典:求人ボックス「圧力容器取扱作業主任者の仕事・求人情報」)。
- 食品工場(缶詰・レトルト食品の殺菌工程など)
- 化学プラント(化学製品の製造・設備保全)
- 食品・化学系のバイオ製造(酵素培養液の生産など)
- 医療関連(医療器材の滅菌業務)
圧力容器は殺菌・反応・蒸発などの工程で幅広く使われる設備です。半導体工場・医薬品工場に絞った具体的な求人データは、今回の検索範囲では確認できませんでしたが、食品・化学・医療関連の工場で需要がある傾向は、複数の求人例から読み取れます。
取ると時給・手当はどう変わる?
求人ボックスで「圧力容器取扱作業主任者」を検索したところ、135件の求人がヒットしました(うち直近30日以内の新着が40件、2026年8月時点)。ただし、平均年収・給料相場の統計は掲載されておらず、資格手当そのものの金額を明記した求人も確認できませんでした。「資格取得支援あり」「有資格者優遇」という表現の求人はありましたが、「資格手当◯円」という直接的な記載は見当たりませんでした。
同じページに載っていた個別求人の実例(2026年8月時点)は、次のとおりです。
- 缶詰・レトルトパウチの殺菌業務(静岡県焼津市、食品製造):月給19万3,000円〜22万円、正社員・契約社員
- 化学プラント設備保全(岐阜県羽島市、化学製造):年収400万円〜500万円、正社員
- 酵素培養液の生産オペレーター(三重県四日市市、食品・化学製造):年収600万円〜750万円、正社員
- 医療器材の滅菌スタッフ(千葉県松戸市、医療機関関連):月給21万円〜、正社員
これらはあくまで個別求人の一例です。この資格を持っているからこの金額になる、という意味ではなく、求人自体が複数の資格・経験を条件にしている可能性があります。Indeedやハローワークインターネットサービスでの資格手当の直接的な金額情報は、検索した範囲では見つけられませんでした。この点も確認できなかった、と正直に書いておきます。
次にやること
普通第一種圧力容器取扱作業主任者を取るまでの流れを整理すると、次の3つです。
- 自分の職場に第一種圧力容器があるか確認する。 化学・食品・医療関連の製造工程で使われることが多い設備です。会社の安全衛生担当者に聞いてみましょう。
- すでにボイラー技士を持っているか確認する。 二級以上のボイラー技士免許があれば、化学設備以外の第一種圧力容器では、この講習を受けなくても作業主任者になれる場合があります。
- 地域の教習機関の日程・受講料を調べる。 「(住んでいる地域名) 圧力容器取扱作業主任者 技能講習」で検索すると、日程と受講料が出てきます。2日間の日程を確保して申し込みましょう。
すでにボイラー技士を検討している人は、一級ボイラー技士の取り方もあわせて読んでみてください。ほかの工場資格と費用・難易度を見比べたい人は、工場で稼げる資格の比較も参考になります。
参考にした情報
厚生労働省・日本ボイラ協会の公式サイトを中心に、求人サイトの公開情報もあわせてまとめました(取得は2026年8月)。金額や制度は変わることがあるため、最新の情報は各団体の公式サイトで確認してください。
- 厚生労働省:ボイラー及び圧力容器安全規則(2026年8月確認)
- 日本ボイラ協会:圧力容器の取扱い管理と作業主任者(2026年8月確認)
- 日本ボイラ協会:第一種圧力容器(小型圧力容器)の適用区分(2026年8月確認)
- 日本ボイラ協会 東京支部:普通第一種圧力容器取扱作業主任者技能講習会(2026年8月確認)
- 日本ボイラ協会 北海道支部:普通第一種圧力容器取扱作業主任者講習、化学設備関係第一種圧力容器取扱作業主任者講習(2026年8月確認)
- 日本ボイラ協会 愛知支部:普通第一種圧力容器取扱作業主任者技能講習(2026年8月確認)
- ボイラ・クレーン安全協会 宮城事務所:普通第一種圧力容器作業主任者取扱技能講習(2026年8月確認)
- 宮崎労働基準協会:普通第一種圧力容器作業主任者(2026年8月確認)
- 求人ボックス:圧力容器取扱作業主任者の仕事・求人情報(2026年8月確認)
