鋳造・鍛造工場の仕事はきつい?作業内容・時給と危険性

溶けた金属を型に流し込む。真っ赤に熱した金属をハンマーで叩いて形を変える。工場の求人で「鋳造」「鍛造」という言葉を見て、どんな作業なのか具体的に想像できる人は少ないかもしれません。

どちらも金属を加工して部品を作る仕事ですが、中身はまったく違います。しかも「時給が高め」「きつい」「危険」という声もあって、実際どうなのか気になっている人も多いはずです。

この記事では、公開されている求人情報や国の資料をもとに、鋳造・鍛造工場の仕事内容、きつさ、時給の目安、必要な資格をまとめました。

鋳造と鍛造は何が違うのか

鋳造(ちゅうぞう)は、金属をドロドロに溶かして型に流し込み、冷やして固める作り方です。鍛造(たんぞう)は、金属を叩いたり圧力をかけたりして形を作る方法です(出典:鋳造と鍛造ってどんな仕事?(日研トータルソーシング))。

  • 鋳造:複雑な形や大きな製品、大量生産に向いています。
  • 鍛造:叩くことで金属の中身がぎゅっと詰まり、強度が高くなります。耐久性が求められる部品に向いています。

出典:鋳造と鍛造の違いとは?(はたらくヨロコビ.com)

たとえば自動車のエンジン部品「シリンダーブロック」は、鋳鉄やアルミ合金を溶かして型に流し込む鋳造で作られることが多いです(出典:自動車部品の鋳造方法・メーカーの選び方(chooz-o.com))。一方、アルミホイールは鋳造と鍛造の両方で作られています。鍛造は軽くて丈夫、鋳造はコストを抑えつつ複雑なデザインができる、という違いがあります(出典:鍛造と鋳造の違いとは?(Mitsuri Media))。

どんな仕事をするか

鋳造工場の流れ

鋳造工場の仕事は、だいたい次の順番で進みます(出典:鋳物製造の作業工程(株式会社シオノ鋳工)鋳造・鍛造の仕事内容とは?(はたらくヨロコビ.com))。

工程 主な作業
造型(型作り) 金属を流し込む型を、砂などで作る
溶解 電気炉で金属を溶かす(約1,500℃)
注湯・鋳込 溶けた金属を型に流し込む
解枠(型ばらし) 冷えて固まった製品を、機械で型と砂から取り出す
後処理・仕上げ 余分な出っ張り(バリ)や砂を削って取り除く
検査・塗装 寸法や欠陥をチェックし、錆止めの塗装をする
出荷 梱包してトラックに積み込む

鍛造工場の流れ

鍛造工場は、次のような工程になります(出典:中部鍛工の鍛造技術(中部鍛工株式会社)鍛造後の熱処理(八光金属工業))。

工程 主な作業
切断・加熱 材料を切って、加熱炉で柔らかくなるまで熱する
鍛造 プレスやハンマーで叩いて形を変える
トリミング 不要な部分を取り除く
熱処理 加熱と冷却をくり返し、硬さや粘りを調整する
検査・仕上げ 表面のキズをチェックし、錆止め処理をして出荷

未経験で最初に任される作業は、材料を機械に入れる「材料投入」や、できた製品を運ぶ「ピッキング作業」であることが多いとされています(出典:鋳造と鍛造ってどんな仕事?(日研トータルソーシング))。

きつさ・体力面の実際

鋳造・鍛造の現場は、次のような理由で「きつい」と言われることがあります。

  • 鋳造は高温の炉のそばで作業するため、暑さがあります。
  • 鍛造はハンマーやプレスの音が大きく、重い工具を使います。
  • どちらも重い材料や製品を持ち運ぶ場面があります。
  • 同じ作業を繰り返すため、集中力が必要です。

出典:金属加工の仕事はきつい?(ウィルオブ工場求人)

実際に働いた人の話では、「集中していないと型の変なところでアルミが固まってしまう」「最悪、怪我もしてしまう」ので集中力が必須で、暑さに耐える力も大事だったそうです(出典:鍛造・鋳造の仕事内容インタビュー(ジョブハウス))。

暑さ対策は法律で義務になった

厚生労働省の資料によると、熱中症は発生すると死亡災害につながる割合が、ほかの労働災害の約5〜6倍とされています。2025年6月1日からは労働安全衛生規則が変わり、暑さ指数(WBGT)28度以上、または気温31度以上の環境で、1時間以上続けて、または1日4時間を超えて作業する職場では、会社が次のことをする決まりになりました。

  • 体調が悪い人を早く見つけて報告できる仕組みを作り、周知する。
  • 具合が悪くなったときの対応手順(連絡先・搬送先など)を決めて、周知する。

炉のそばで作業する鋳造・鍛造工場は、この決まりの対象になりやすいと考えられます。

出典:職場における熱中症対策の強化について(厚生労働省)

暑さ対策としては、ファン付きの作業服(空調服)が工場でよく使われますが、火花や粉じんが多い鋳造の現場では、ファンが火花や粉じんを吸い込んでしまうことがあり、そのままでは向かないという指摘もあります。かわりに、水で冷やす設備や、個人を直接冷やす設備を組み合わせている例が紹介されています(出典:「暑すぎる工場現場」を変える!(松本電気工事))。

腰痛にも注意

製造業では、腰痛によって4日以上休む労働災害が、毎年600〜900人くらい報告されています。重い製品を運ぶ途中でバランスを崩し、体をひねって腰を痛めた例もあります。対策として、リフターや自動で運ぶ機械を使うことがすすめられています(出典:重量物取扱いなどによる腰痛を予防しましょう(厚生労働省))。

危険性と安全のルール

鋳造・鍛造は、粉じん(細かい粉)が出る作業があります。国は「粉じん障害防止規則」という決まりで、砂型を作る・壊す・砂を落とす・砂を再生するといった作業を「粉じん作業」と定めています。このうち、屋内で型ばらし装置や動力を使って砂を落とす・再生するような場所には、粉じんを閉じこめる設備や換気の設備を設けることが義務づけられ、そこで常に働く人には特別教育が必要です。設置した換気設備は1年以内ごとに1回の自主検査、作業場の粉じん濃度は6か月以内ごとに1回の測定が義務になっています(出典:粉じん障害防止規則(厚生労働省)粉じん障害防止規則とは(安全衛生マネジメント協会))。

粉じんを長い間吸い込むと、じん肺(肺の病気)になることがあります。粉じん作業をする人は、「じん肺法」で決められた健康診断(じん肺健康診断)を受ける決まりです。新しく粉じん作業に就くときに1回、その後は3年以内ごとに1回受けます。

工場によっては、次のような事故も起きうるとされています。溶けた金属が水に触れて急に膨張する「水蒸気爆発」、溶けた金属が飛び散ることによるやけど、機械への挟まれ・巻き込まれなどです(出典:鋳造作業の事故をゼロにする安全対策5選(tebiki))。

なお、鋳造業・鍛造業だけに絞った労働災害の統計は、今回の調査では見つかりませんでした。厚生労働省が発表している労災の統計は「製造業」という大きなくくりまでで、鋳造業だけの数字は公開されていません。「危険な業種」と決めつけず、応募する会社の安全対策(保護具・換気設備・教育の内容など)を、求人票や採用ページで確認することをおすすめします。

時給・給料の目安

数字は求人サイトに載っている情報から、幅を持たせて紹介します。断定はできないので、目安として見てください。

求人の種類 時給・給料の目安
鋳造・鍛造(全国・派遣) 時給 約1,400〜2,100円
鋳造・鍛造(全国合算) 平均月給 約35.9万円
鍛造工(全国) 平均月給 約35.9万円
鋳物工(全国) 平均月給 約31.0万円
鋳造(東京都) 平均時給 約1,474円
鋳造(埼玉県) 平均月給 約34.8万円、時給1,600〜2,000円台が多い

※2026年8月時点の求人ボックス掲載情報より。出典:鋳造 鍛造の転職・求人情報(求人ボックス)鍛造工の転職・求人情報(求人ボックス)鋳物工の転職・求人情報(求人ボックス)鋳造の転職・求人情報 東京都(求人ボックス)鋳造の仕事・求人 埼玉県(求人ボックス)

期間工(期間従業員)の求人では、次のような公式の募集内容が見つかりました。あくまで一例で、業界全体の相場ではありません。

  • アイシン(愛知県内。組付け・加工・検査・物流のいずれか。鋳造を行うダイカスト工場もある):時給1,550円(通常)、2,015円(残業・深夜)。月収例33万3,142円。入社祝い金は分割で計100万円。寮は光熱費込みで実質無料。
  • 愛知製鋼 鍛造工場(東海市):日給13,400円、月収40万円以上(残業30時間・深夜勤務・皆勤手当を含む例)。入社祝い金20万円、満期慰労金は初回24万円(期間の延長に応じて上がる)。寮費無料(個室)。

出典:アイシンの期間従業員募集要項(公式)愛知製鋼 期間社員採用(公式)

こうした手当の金額や条件は、会社によって大きく違います。最新の内容は、応募する前に各社の採用ページで確認してください。

未経験でも大丈夫か、必要な資格

求人サイトを見るかぎり、鋳造・鍛造の仕事は「未経験歓迎」「資格・免許不問」としている求人が多くあります。実際に働いた人の体験談でも「未経験の私でも始めることができた」「現場作業は全くの未経験だったので、1年の研修を受けた」という声がありました(出典:鍛造・鋳造の仕事内容インタビュー(ジョブハウス)東海の鋳造・鍛造求人(工場ワークス))。

作業そのものに必須の資格は基本的にありません。持っていると仕事の幅が広がったり、キャリアアップにつながったりする資格は、次のとおりです。

  • 鋳造技能士・鍛造技能士:鋳造・鍛造の知識や技能を証明する国家資格。現場の責任者を目指すときに必要になることがあります。
  • 玉掛け技能講習・クレーン関連の資格:クレーンで荷物を吊り上げるときに必要。重い製品や材料を運ぶ場面で役立ちます。
  • フォークリフト運転技能講習:重量物を扱う工場では、持っていると仕事の幅が広がる資格です。
  • 危険物取扱者:高温の金属や燃料油などを扱う工場で、安全知識の面で役立ちます。取り方や費用は危険物取扱者乙4の取り方・費用・難易度にまとめています。

出典:鋳造と鍛造ってどんな仕事?(日研トータルソーシング)製造業・工場勤務におすすめな資格12選(プレックスジョブマガジン)

向いている人・向いていない人

体力面では、暑さや重い物への耐性、立ち仕事が続く体力が必要です。性格面では、同じ作業を集中してくり返せる人、細かいところまで注意を払える人が向いていると言われます。逆に、汚れた機械や工具にふれる機会が多いため、汚れを気にしすぎる人には向かないという指摘もあります(出典:金属加工の仕事はきつい?(ウィルオブ工場求人))。

工場の仕事全体で「自分に向いているかどうか」をもっと広く比べたい人は、工場の業種別 働きやすさ比較もあわせて読んでみてください。

求人の探し方

  • 求人ボックス:「鋳造」「鍛造」に都道府県名を組み合わせて検索すると、地域ごとの時給・月給の目安と件数が分かります。
  • ハローワークインターネットサービス:求職者マイページを作ると、自宅から求人検索や応募ができます。「鋳造」「鍛造」のフリーワード検索が使えます。
  • 期間工専門の求人サイト:自動車・鋼材メーカー系の期間従業員求人が、メーカーごとにまとまっています。

出典:求人ボックスハローワークインターネットサービス

求人サイトごとに載っている求人が違うので、1つのサイトだけでなく、何か所か見比べるのがおすすめです。

確認できなかったこと

  • 学歴不問の求人が全体のどれくらいの割合を占めるかは、確認できませんでした。
  • 鋳造業・鍛造業だけに絞った労働災害の件数・発生率は、公開情報では確認できませんでした。厚生労働省の統計は「製造業」という大きなくくりまでの公表です。
  • 鋳造・鍛造専門の自動化事例は見つからず、近い業種である金属加工の事例にとどまりました。

次にやること

  • 気になる求人が見つかったら、時給・月給だけでなく、交代勤務の有無や熱中症対策、粉じん対策の内容も求人票や採用ページで確認する。
  • 資格を取ってから応募したいなら、フォークリフトや玉掛け、危険物取扱者など、幅広い工場で役立つ資格から検討する。
  • 求人ボックスやハローワークインターネットサービスで、自分が住んでいる(または住みたい)地域の求人を検索してみる。
  • 気になる求人があれば、応募の締め切りや面接の日程を早めに確認する。

参考にした情報

公開されている業界の解説記事、企業公式の求人情報、厚生労働省の資料をもとにまとめました(取得は2026年8月)。制度や求人の内容は変わることがあるため、最新の情報は各社・各機関の公式サイトで確認してください。