工場の天井についている、丸い煙感知器。あれは消防法にもとづく決まりで、6か月に1回の点検が必要です。その点検と整備を担当できるのが、消防設備士 乙種第4類という国家資格です。受験に条件はなく、手数料は4,400円。この記事では、できること、かかるお金、合格率、そして免状を取ったあとの講習まで、順にまとめます。
消防設備士 乙4があつかう設備
消防設備士は、建物に設置が義務づけられた消防用設備を、工事・整備・点検するための国家資格です。免状は甲種特類、甲種第1類〜第5類、乙種第1類〜第7類に分かれています(出典:消防試験研究センター 受験案内)。
このうち第4類が受け持つのは、火災を知らせる設備です。センターの案内には、こう書かれています。
- 自動火災報知設備
- ガス漏れ火災警報設備
- 消防機関へ通報する火災報知設備
- 共同住宅用自動火災報知設備、住戸用自動火災報知設備、特定小規模施設用自動火災報知設備、複合型居住施設用自動火災報知設備
(出典:消防試験研究センター 受験案内)
天井の煙感知器や熱感知器、壁の発信機、事務所や守衛室にある受信機。これらをまとめて自動火災報知設備と呼びます。火事を見つけて、建物の中にいる人へ知らせる設備のことです。
甲種と乙種では、できる仕事の範囲が違います。
- 甲種:工事・整備(点検を含む)ができる
- 乙種:整備ができる。点検も担当できる。新しく取り付ける工事はできない
(出典:消防試験研究センター 受験案内)
消防設備士でなければできない工事と整備の範囲は、消防法施行令第36条の2で決まっています。自動火災報知設備も、電源の部分を除いて対象です(出典:消防法施行令第36条の2)。
危険物の乙4とは別物
まぎらわしいので、はじめに整理しておきます。
| 消防設備士 乙種第4類 | 危険物取扱者 乙種第4類 | |
|---|---|---|
| あつかうもの | 自動火災報知設備などの警報設備 | ガソリンや灯油などの引火性液体 |
| 主な働き先 | 点検会社、ビル管理、工場の設備部門 | ガソリンスタンド、化学工場、タンクローリー |
| 受験手数料 | 4,400円 | 5,300円 |
※2026年8月時点。(出典:消防試験研究センター 試験手数料一覧表)
試験を行っているのは、どちらも一般財団法人 消防試験研究センターです。名前も手数料も似ていますが、免状はまったく別のものです。求人票に「乙4」とだけ書かれている場合は、どちらの資格を求めているのか確認したほうが安全です。
危険物のほうを調べていた人は、こちらの記事が参考になります。→ 危険物取扱者乙4の取り方・費用・難易度|工場求人の時給も
誰でも受けられて、費用は1万円弱
受験資格について、消防試験研究センターの案内はひと言です。乙種は「誰でも受験できます。」と書かれています。年齢も学歴も実務経験も問われません(出典:消防試験研究センター 受験資格)。
かかるお金は次のとおりです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 受験手数料(乙種) | 4,400円 |
| 免状の新規交付 | 2,900円 |
| (参考)写真の書換え | 1,600円 |
| (参考)再交付 | 1,900円 |
※2026年8月時点。受験手数料は令和6年5月からの金額。(出典:消防試験研究センター 試験手数料一覧表、免状の交付・書換え等)
受験して合格したあと、免状を出してもらうところまでで7,300円です。これにテキストと問題集を1冊ずつ買うと、数千円が加わります。合計1万円弱、と考えておくと大きく外れません。
試験は1日で終わります。乙種の試験時間は1時間45分です(出典:消防試験研究センター 試験の方法)。申し込みは書面のほか、インターネットからの電子申請も使えます。試験日は都道府県ごとに違うので、自分が受ける支部のページで確認してください。
試験は筆記30問と実技5問
乙種第4類の内訳は、次のようになっています。
| 区分 | 科目 | 問題数 |
|---|---|---|
| 筆記 | 消防関係法令(共通6・類別4) | 10問 |
| 筆記 | 基礎的知識(電気) | 5問 |
| 筆記 | 消防用設備等の構造・機能・整備(電気9・規格6) | 15問 |
| 実技 | 鑑別等 | 5問 |
(出典:消防試験研究センター 試験科目及び問題数)
筆記は、マークカードを使う四肢択一式です。実技は、写真やイラスト、図面を見て答える記述式です。乙種の実技は「鑑別等」だけで、配線図を書かせる製図は出ません。製図があるのは甲種です(出典:消防試験研究センター 試験の方法)。
実技といっても、工具を使って作業するわけではありません。感知器や試験器の写真を見て、名前や使い方を答える問題です。
合格の基準は3つあります。
- 筆記の各科目で40%以上
- 筆記の全体で60%以上
- 実技で60%以上
このうち1つでも欠けると不合格です(出典:消防試験研究センター 試験の方法)。得意な科目で稼いで苦手な科目を捨てる、というやり方が通じない試験です。
なお、電気工事士や電気主任技術者、他の類の甲種消防設備士免状を持っている人は、試験科目の一部が免除されます。免除される範囲は資格ごとに決まっているので、申し込みの前に公式の一覧表で確認してください(出典:消防試験研究センター 甲種について)。
合格率はおよそ3割
消防試験研究センターは、試験の実施状況を毎月公表しています。その月別の数字を年度ごとに合計すると、次のようになります。
| 年度 | 種類 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 2024年度 | 乙種第4類 | 7,448人 | 2,323人 | 31.2% |
| 2024年度 | 甲種第4類 | 19,767人 | 6,715人 | 34.0% |
| 2025年度 | 乙種第4類 | 8,047人 | 2,736人 | 34.0% |
| 2025年度 | 甲種第4類 | 21,819人 | 7,527人 | 34.5% |
※各月の公表値を合計して算出(2026年8月確認)。(出典:消防試験研究センター 試験実施状況)
2年分で見ると、乙種第4類の合格率は31〜34%くらいです。受ける人の3人に1人が受かる計算になります。合格率は年度や月によって動くので、最新の数字はセンターの試験実施状況ページで確認してください。
もう一つ、受験者数にも目を向けてください。4類は、乙種より甲種を受ける人のほうが多いです。2025年度は乙種8,047人に対して、甲種は21,819人でした。はじめから工事までできる甲種を狙う人が、それだけいるわけです。
合格に必要な勉強時間の公式な目安は、公開されていませんでした。
甲種4類とどこが違うか
同じ4類でも、甲種と乙種では受験の条件から試験の量まで変わります。
| 項目 | 乙種第4類 | 甲種第4類 |
|---|---|---|
| できること | 整備・点検 | 工事・整備・点検 |
| 受験資格 | なし | 学歴または資格・実務経験が必要 |
| 受験手数料 | 4,400円 | 6,600円 |
| 試験時間 | 1時間45分 | 3時間15分 |
| 筆記 | 30問 | 45問 |
| 実技 | 鑑別等5問 | 鑑別等5問+製図2問 |
※2026年8月時点。(出典:消防試験研究センター 受験資格・試験科目及び問題数・試験の方法・試験手数料一覧表)
甲種を受けるには条件があります。工業系の学科を出ているか、決められた資格・実務経験を持っているかのどちらかです。資格のルートには、電気工事士、電気主任技術者、他の類の甲種消防設備士などが並んでいます(出典:消防試験研究センター 甲種について)。
学歴でも資格でも条件に当てはまらない人のために、センターは乙種から進むルートも受験資格に入れています。案内にはこう書かれています。
乙種消防設備士免状の交付を受けた後2年以上、工事整備対象設備等の整備(消防法17条の5の規定に基づく政令で定められたもの)の経験を有する者
(出典:消防試験研究センター 甲種について)
つまり、乙4を取って2年以上の整備経験を積めば、甲種4類を受けられるようになります。第二種電気工事士を先に取って、その資格で甲種を受けるという順番もあります。どちらが近いかは、いまの仕事によって変わります。
工場の点検で出てくる資格
消防法第17条の3の3で、建物の関係者には消防用設備の点検と報告が義務づけられています。工場も対象です。
- 機器点検:6か月に1回
- 総合点検:1年に1回
- 消防署への報告:工場などの非特定防火対象物は3年に1回(デパートや飲食店などの特定防火対象物は1年に1回)
報告をしなかったり、うその報告をしたりすると、30万円以下の罰金または拘留と定められています(出典:東京消防庁 消防用設備等点検報告制度、総務省消防庁)。
そして、この点検を誰がやるかにも決まりがあります。延べ面積1,000平方メートル以上の特定防火対象物と、延べ面積1,000平方メートル以上の非特定防火対象物のうち消防長または消防署長が指定したものは、消防設備士または消防設備点検資格者が点検しなければなりません(出典:東京消防庁 消防設備の点検資格について、横須賀市消防局)。
大きな工場の点検は、外部の点検会社に任せているところが多いです。ただ、設備保全の担当者が資格を持っていると、点検の立ち会いや日ごろの不具合対応で話が早くなります。感知器が誤って鳴ったとき、原因の見当がつくかどうかは大きな差です。
工場の設備保全の仕事そのものについては、こちらでまとめています。→ 設備保全の仕事|将来性・未経験からのなり方・役立つ資格
免状を取ったあとにも講習がある
消防設備士は、免状を取ったら終わりではありません。消防法第17条の10にもとづき、講習を受ける義務があります。実際に消防設備の仕事をしているかどうかは関係ありません。
- 1回目:免状交付後の最初の4月1日から2年以内
- 2回目以降:講習を受けた日以後の最初の4月1日から5年以内ごと
- 受講手数料:7,000円(非課税)
- 講習の区分:第4類は「警報設備(4類・7類)」の区分
(出典:愛知県消防設備安全協会、東京消防庁 消防設備士講習)
区分は4つに分かれています。受講手数料は1区分あたりの金額で、同じ区分に入る免状を複数持っている場合は、最初の免状交付の日が期限の基準になります(出典:東京消防庁 消防設備士講習の案内)。運転免許のような更新期限とは仕組みが違うので、免状が届いたらまず1回目の期限を手帳に書いておくと安心です。手数料や申し込み方法は都道府県によって案内が違うため、住んでいる地域の消防設備協会のページで確認してください。
給料と手当はどうなるか
働き先として多いのは、消防設備の点検や整備を行う会社、ビル管理(設備管理)の会社、それに工場の設備保全部門です。
資格手当は会社によって差が大きい部分です。公開されている求人や採用情報で確認できた範囲では、手当を出している会社では、乙種が1資格あたり月1,000〜3,000円くらい、甲種が月2,000〜5,000円くらいという例が見られました(2026年8月確認・出典:Indeedの公開求人)。手当そのものがない会社もあります。
消防設備士に絞った平均年収の公的な統計は、確認できませんでした。ネット上の年収データは資格スクールや転職サイトの推計が多いので、応募先の募集要項に書かれた金額で確かめるのが確実です。
乙4は、それ1つで給料が大きく上がる資格ではありません。ビル管理や設備保全では、第二種電気工事士や危険物の乙4と組み合わせて見られることが多いようです。工場で使いやすい資格を横並びで比べたい人は、こちらを見てください。→ 工場で稼げる資格の比較
次にやること
消防設備士 乙種第4類が気になった人は、次の3つから始めてみてください。
- 消防試験研究センターの支部ページで、住んでいる都道府県の試験日と受付期間を調べる。 4類の試験がいつあるかは地域によって違います。
- 求人票の「乙4」がどちらの資格か確かめる。 消防設備士か危険物取扱者かで、必要な勉強はまったく別物です。
- 甲種を狙うのかどうかを先に決める。 工事までやりたいなら、第二種電気工事士から入るか、乙4を取って2年の整備経験を積むか、ルートは2つあります。
受験に条件がなく、費用も1万円弱。まず1つ持っておく資格としては、始めやすいほうです。
関連リンク
- 一般財団法人 消防試験研究センター「消防設備士試験」https://www.shoubo-shiken.or.jp/shoubou/
- 消防試験研究センター「試験実施状況」https://www.shoubo-shiken.or.jp/result/
- 東京消防庁「消防用設備等点検報告制度」https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/tenken_houkoku.html
- 総務省消防庁「消防用設備等の点検基準、点検要領、点検票」https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/post-1.html
