航空機部品工場の仕事はきつい?作業内容・時給の目安

飛行機のどこかに、自分が作った部品が使われている。そう考えると、ちょっと誇らしい仕事です。でも「航空機部品工場」がどんな場所で、どれくらい大変なのか、知らない人も多いのではないでしょうか。公開情報をもとに、仕事の中身から時給の目安まで整理しました。

航空機部品工場とはどんな仕事をする工場か

日本のメーカーが手がける航空機部品は、大きく「機体構造体」「エンジン」「装備品」の3つの事業分野に分かれます(出典:経済産業省の資料)。

代表的な会社は、三菱重工業・SUBARU・川崎重工業・IHIです。三菱重工業はボーイング787の複合材の主翼を作っています(出典:三菱重工)。SUBARUは胴体と主翼をつなぐ「中央翼」の製造を担当しています(出典:SUBARU)。川崎重工業は防衛省向けの機体に加え、787の国際共同開発にも参加しています(出典:川崎重工業)。IHIはジェットエンジンを手がける会社です。民間機向けはエンジンのモジュールや部品を担当し、防衛省向けはエンジンをまるごと手がけています(出典:IHI)。

具体的な作業内容

現場の作業は、金属を削る機械加工、板金、板同士をつなぐリベット打ち(打鋲。びょう打ちのこと)、複合材(CFRP。炭素の繊維を樹脂で固めた軽くて強い素材)の成形、組立、検査などです。

SUBARUでは自動打鋲機を使い、穴あけ、皿取り、部品差し込み、打鋲、表面仕上げという順番で作業すると説明されています(出典:SUBARU)。三菱重工業では、炭素繊維のシートを型に重ね、大型の加熱加圧炉で固める方法で複合材の主翼を作っています(出典:三菱重工技報)。

各工場の具体的な生産数や、現場でしか分からない作業の細かい様子は、公開情報からは分かりませんでした。

きつさの正体は精度と検査にある

航空機部品づくりで特に大変なのが、精度への要求の高さです。経済産業省 関西経済産業局の事例集によると、航空機部品を手がける企業の中には、1000分の1ミリ単位の精度を追求しているところもあります(出典:関西経済産業局)。検査は工程ごとに行われ、結果を1個ずつ記録・管理する必要があります(出典:テックスシステム)。

こうした品質の仕組みを支えるのが「JIS Q 9100」という航空宇宙業界向けの規格です。通常のものづくりの規格(ISO 9001)に加えて、部品がどこで誰に作られたかをたどれる仕組み(トレーサビリティ)などが求められます(出典:日本航空宇宙工業会)。特殊な工程には確認作業が必要で、取引先からの要求例として、初回の検査記録を航空機の運用が終わるまで30年、40年と保管しなければならないケースもあります(出典:日本品質保証機構)。こうした規格に対応できる人材が少なく、企業が自力で育てる必要がある、という課題も報じられています(出典:日本経済新聞)。

もう一つの特徴は「多品種少量生産」です。自動車のように毎年同じものを大量に作るのではなく、種類の違う部品を少しずつ作ります(出典:経済産業省の資料)。ラインの切り替えが多く、その都度、細かい手順の確認が必要になります。

工場・期間工全般の口コミでは、単純作業の多さや体力的なきつさ、ラインを止められないプレッシャーが「きつい」と感じる理由として挙げられていますが(出典:日総工産)、これがそのまま航空機部品工場に当てはまるかどうかは、公開情報からは判断できませんでした。航空機部品工場に絞った口コミはあまり見つからず、はっきりした傾向は確認できませんでした。

気をつけたい作業と安全対策

塗装や接着剤で有機溶剤を使う作業があります。有機溶剤中毒予防規則という法律で、対象の有機溶剤(第1種・第2種)を使う屋内作業場では、少なくとも6か月に1回、作業環境測定士(国家資格を持つ人)による作業環境測定をすることが決まっています(出典:厚生労働省・安全衛生情報センター)。

金属を削る工程では粉じんも出るため、発生・拡散・吸入の3段階で対策をするのが基本とされています(出典:キーエンス)。重量物の取り扱いについて、航空機部品工場に特化した公開情報は見当たりませんでした。

未経験者は働ける?資格は必要?

未経験から始められる求人はあります。三菱重工業 名古屋航空宇宙システム製作所 大江工場で働く求人(募集は人材会社の日総工産)では「未経験の方でも安心してスタートできます」とあり、仕事に慣れるまでの期間はおよそ30日とされています(出典:はたらこねっと、2026年8月確認)。派遣の求人サイトにも、未経験OKの航空機部品製造の仕事があり、時給はだいたい1,600〜2,000円くらい(平均1,760円。求人9件から)です(出典:ジョブ派遣)。

必要になりやすい資格は、担当する作業で変わります。溶接や熱処理、非破壊検査(傷や欠陥を壊さずに調べる検査)などの「特殊工程」は、Nadcap(ナドキャップ)という業界共通の認証の対象になることがあります(出典:関東経済産業局)。非破壊検査の技術者には、NAS410という規格にもとづく資格があり、日本非破壊検査協会が試験を行っています(出典:日本非破壊検査協会)。フォークリフトや玉掛けは工場全般でよく使う資格ですが、航空機部品工場での必須度合いは確認できませんでした。

なお「JIS Q 9100」は会社が取る認証で、働く人が個人で取る資格ではありません。国内の認証件数は776件です(2024年12月末時点。出典:日本適合性認定協会)。

期間工や派遣社員としての採用もあります。三菱重工業や川崎重工業でも、期間従業員や派遣の仕事が紹介されています(出典:日総工産)。三菱重工については、原動機・航空宇宙部門などで期間工から正社員への登用を進めているという報道もありますが、詳しい条件までは確認できていません(出典:日刊工業新聞)。

給料はどれくらいもらえる?

求人ボックスで「航空機」の仕事を検索すると、2026年8月時点で112,853件がヒットします(航空機に関わるIT系の仕事なども含む幅広い検索結果です)。給与の集計では平均年収482万円くらいで、多くの求人は350万円台から900万円台に収まっています(出典:求人ボックス)。

Indeedで「航空機製造」を調べると6,000件以上がヒットします(2026年8月時点)。求人例では、技能職で月給21万円以上、契約社員で月給26.4万円以上、派遣社員で月給28万〜55万円くらいといった募集があり、管理職クラスでは年収600万〜1,400万円台の求人もありました(出典:Indeed)。

期間工でよく見る「時給」表示の求人は、求人ボックス・Indeedの検索結果からは見つかりませんでした。派遣の求人サイトでは、未経験OKの航空機部品製造で時給1,600〜2,000円くらい(平均1,760円。求人9件から)という例があります(出典:ジョブ派遣)。

航空機部品工場が多い地域

航空機部品工場が集まるのは、愛知県・岐阜県を中心とする中部地方です。中部経済産業局の統計によると、2024年時点でこの地域だけで国内の航空機・部品生産額のおよそ3割、機体部品に限ればおよそ6割を占めます(出典:あいち総合特区、中部経済産業局の統計)。愛知県には三菱重工業、川崎重工業、SUBARUの工場があり、岐阜県各務原市には川崎重工業岐阜工場があります。2011年に愛知・岐阜が「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区」に指定され、今は中部5県・386の企業や団体が参加する拠点になっています(2026年1月現在。出典:あいち総合特区)。兵庫県には川崎重工業のエンジン部門の工場があり、IHIのエンジン部品拠点は福島県相馬市にあります(出典:IHI拠点一覧)。

日本航空宇宙工業会のまとめ(速報値)によると、2024年度の航空機工業の生産額は合計約2兆619億円、従業員数は約2万6,991人でした(出典:日本航空宇宙工業会)。部品点数は300万点にのぼり、数多くの下請け企業が関わる裾野の広い産業です(出典:経済産業省の資料)。

求人を見るときに確認したいこと

求人を見るときは、次の点を確認しておくと安心です。

  • 雇用形態(正社員・契約社員・派遣・期間工)
  • 未経験歓迎かどうか、研修期間の長さ
  • 給料の表示(時給・月給・年収のどれか。手取りではなく額面のことが多い)
  • 勤務地と、そこまでの通勤方法

工場の業種別の働きやすさを比較したい人は、こちらの記事もあわせてどうぞ。→ 工場の業種別 働きやすさ比較|楽な仕事・きつい仕事の選び方

次にやること

航空機部品工場が気になった人は、次の3つをやってみましょう。

  1. 三菱重工業・SUBARU・川崎重工業・IHIなど、大手メーカーの採用ページを見てみる。 未経験歓迎の求人があるか確認できます。
  2. 求人サイトで雇用形態と給料の表示(時給・月給・年収)を確認する。 会社によって表示方法が違います。
  3. 興味のある工程(機械加工・複合材成形・検査など)を、求人票の仕事内容欄でチェックする。 同じ工場でも仕事の中身はさまざまです。