エックス線作業主任者の難易度と費用|工場での使い道

「エックス線」と聞くと、まず病院のレントゲンが浮かぶかもしれません。ただ、この免許は病院で働くための資格ではありません。使う場所は工場です。金属の中に見えない傷がないかを、X線で透かして調べる。その現場を任される人が持つ免許です。

受験資格はなく、誰でも申し込めます。試験の中身、かかるお金、合格率、工場での使い道を、法令や試験団体の公開情報から順に確かめていきます。

先に結論

急いでいる人は、ここだけでも。

  • 労働安全衛生法にもとづく国家免許です。工場でX線を使う場所(管理区域)ごとに、責任者として1人選ぶことが法律で決まっています。
  • 受験資格はありません。学歴も実務経験もいりません。
  • 受験手数料は8,800円、免許申請は収入印紙1,500円。合わせて1万円ちょっとです(2026年8月時点)。
  • 合格率は最近4割台半ばです。2025年度は45.7%でした。
  • 求人ボックスの集計では、エックス線作業主任者の求人の平均年収は489万円ほどでした(2026年8月時点・掲載求人203件)。

病院のレントゲンとは対象が違う

この免許のもとになっているのは、労働安全衛生法と、その下にある電離放射線障害防止規則という決まりです。放射線を扱う職場で働く人の体を守るためのルールをまとめたものです。

対象になるのは、工場などで使う装置です。労働安全衛生法施行令第6条第5号でも、医療用の装置や、とても高い電圧(定格管電圧1,000キロボルト以上)の装置を使う作業は、対象から外れています。病院でレントゲンを撮る仕事は診療放射線技師の分野なので、この免許では代われません。

反対に、工場の検査でX線を使う場面は、この免許の出番になります。

法律で決められている仕事の中身

会社がやることと、主任者がやることは分かれています。

電離放射線障害防止規則の第46条では、会社に対してこう決められています。

事業者は、令第六条第五号に掲げる作業については、エツクス線作業主任者免許を受けた者のうちから、管理区域ごとに、エツクス線作業主任者を選任しなければならない。

(出典:電離放射線障害防止規則 第46条(厚生労働省)

大事なのは「管理区域ごとに」という部分です。会社に1人いればいい、ではありません。X線を使う区域が2つあれば、それぞれに選ぶ必要があります。

管理区域というのは、放射線を浴びる量が一定を超えるおそれのある区域のことです。3か月で1.3ミリシーベルトという基準が決まっていて、そこを超えそうな区域は、標識を立てて必要な人以外は入れないようにします(出典:電離放射線障害防止規則 第3条(厚生労働省))。

選ばれた主任者が現場でやることは、同じ規則の第47条に9つ並んでいます。かみくだくと次のような内容です。

  • 管理区域や立入禁止の標識が、決まりどおりに立っているようにする
  • 照射筒、しぼり、ろ過板(X線が飛ぶ範囲や強さを抑える部品)が正しく使われるようにする
  • 規則で決められた被ばく防止の措置をとる
  • 照射の条件などを調整して、働く人が受ける線量をできるだけ少なくする
  • 決められた措置がとられているか点検し、異常があればすぐ手を打つ
  • 照射の前と照射中に、立入禁止の場所に人が入っていないか確認する
  • 作業する人が放射線測定器を身につけているか点検する
  • 作業の方法を決め、放射線を扱う人に指示を出す

(出典:電離放射線障害防止規則 第47条(厚生労働省)

装置を動かす人自身には、別に特別教育(決められた内容の講習)を受ける決まりがあります(出典:電離放射線障害防止規則 第52条の5)。作業する人は特別教育、区域の責任者は免許。この2つは別物です。

工場のどこで必要になるか

主な使い道は非破壊検査です。壊さずに中を調べる検査のことで、X線を使うものは放射線透過試験(RT)と呼ばれます。鋳物や溶接した部分の内側に、空洞やひび割れがないかを写真で確かめます。

ただし、X線を使う装置すべてに主任者がいるわけではありません。装置メーカーの解説では、次の2つを両方満たす小型のボックス型装置なら、管理区域を設けることも、主任者を選ぶこともいらないとされています(出典:産業用・X線検査装置の導入時に必要な届出とは)。

  • 装置の外に漏れるX線が、3か月で1.3ミリシーベルトを超えない造りになっている
  • 照射中は人が中に入れないインターロック(安全装置)が付いている

つまり、その工場がどんな装置をどう使っているかで、必要かどうかが変わります。求人票に資格の名前が書いてあるかどうかが、いちばん確実な手がかりです。

なお、装置を新しく置くとき、移すとき、造りを大きく変えるときは、工事を始める30日前までに労働基準監督署へ届け出ることになっています(出典:X線検査装置に関わる法令)。届出も現場の仕事のうちなので、免許を持っていると任されやすくなります。

求人サイトでは、非破壊検査の会社や、検査装置メーカーのサービス部門、検査を請け負う会社が、この免許を挙げて募集を出しています(出典:求人ボックス・2026年8月時点)。

受験資格はなし。試験の中身

公益財団法人 安全衛生技術試験協会の案内によると、受験資格は不要です。本人確認証明書を付けて申し込めば、誰でも受けられます。

試験は学科だけで、選択式のマークシートです。4科目・40問が出ます。

科目 出題数(配点)
エックス線の管理に関する知識 10問(30点)
関係法令 10問(20点)
エックス線の測定に関する知識 10問(25点)
エックス線の生体に与える影響に関する知識 10問(25点)

※出典:安全衛生技術試験協会(2026年8月確認)

  • 試験時間:12時30分から16時30分までの4時間です。科目免除がある人は3時間または2時間になります。
  • 合格の条件:科目ごとに40%以上とったうえで、合計が60%以上。1科目でも4割を切ると、合計点が足りていても不合格になります。
  • 科目免除:第二種放射線取扱主任者免状を持っている人は2科目、ガンマ線透過写真撮影作業主任者試験に受かっている人は1科目、免除されます。

(出典:エックス線作業主任者の紹介(安全衛生技術試験協会)

会場は全国7地区の安全衛生技術センターです(北海道・東北・関東・中部・近畿・中国四国・九州。関東と近畿には試験場もあります)。それぞれの地区で出張試験も行われています。申し込みはオンラインでもできます(出典:安全衛生技術試験協会)。試験日はセンターごとに違うので、自分が受ける会場の日程表を見てください。

かかるお金

項目 金額
受験手数料 8,800円
免許申請(収入印紙) 1,500円
合計 1万300円

※受験手数料は安全衛生技術試験協会の「試験手数料」(令和5年6月1日現在の表)、免許申請は東京労働局の案内より。2026年8月確認。このほかテキスト代と、会場までの交通費がかかります。

出典:試験手数料(安全衛生技術試験協会)労働安全衛生法に基づく免許 よくある質問(東京労働局)

収入印紙は労働局の窓口では売っていません。郵便局などで先に買っておく必要があります。

申請先は2か所に分かれます。試験に受かって「合格通知書」を持っている場合は東京労働局免許証発行センターへ。「結果通知書」で申請する場合は、住んでいる場所を管轄する都道府県労働局へ出します(出典:労働安全衛生法関係の免許について(厚生労働省))。

過去問は試験協会のサイトで公開されています。買わなくても手に入るので、まずは1回分を見て、手が届きそうかを確かめるのが早いです。

合格率は4割台半ば

安全衛生技術試験協会が公表している令和7年度(2025年度)の数字です。

資格 受験者 合格者 合格率
エックス線作業主任者 6,064人 2,771人 45.7%
ガンマ線透過写真撮影作業主任者 337人 228人 67.7%

※出典:統計(安全衛生技術試験協会)(令和7年度・2026年8月確認)

過去の数字を集めた民間のまとめサイトによると、2012年度54.1%、2019年度63.3%と5〜6割の年もありましたが、2021年度に35.6%まで下がり、その後は2023年度44.9%、2024年度45.1%と4割台半ばで動いています(出典:エックス線作業主任者の合格率・難易度・受験者数(The転職))。

だいたい2人に1人弱が受かる試験、という見方でよさそうです。ただし合格率は年によって上下します。受ける年の数字は、試験協会のサイトで確かめてください。

勉強時間の目安は、合格した人のブログや講座のサイトで「200時間」「1〜2か月」「25時間で足りた」と幅が大きく、公的な目安はありません。放射線や物理をどれくらい知っているかで変わります。数字を当てにするより、過去問を1回解いて、自分に足りないところを見たほうが早いです。

名前の似た資格との違い

紛らわしい資格がいくつかあります。

資格 もとになる法律・団体 何のための資格か
エックス線作業主任者 労働安全衛生法(厚生労働省) 電気でX線を出す装置を使う区域の責任者
ガンマ線透過写真撮影作業主任者 労働安全衛生法(厚生労働省) ガンマ線照射装置を使う撮影作業の区域の責任者
第1種・第2種放射線取扱主任者 放射性同位元素等規制法 放射性物質や加速器を扱う事業所の主任者
非破壊試験技術者(NDT)レベル1〜3 日本非破壊検査協会 検査の腕前を示す資格。免許ではない

ガンマ線は、放射性物質から出るので電源がいりません。そのため、電気の来ていない屋外の現場ではガンマ線が使われます(出典:シカクシゴト)。同じ非破壊検査でも、装置が違えば必要な免許も変わります。

日本非破壊検査協会のNDT資格は、検査方法ごとにレベル1から3まであります。レベル1は上の人の監督のもとで検査をする段階、レベル2は手順書にそって自分で検査を進められる段階です。認証を受けるには訓練と実務経験が要ります。放射線透過試験(RT)の訓練時間は、レベル1で40時間、レベル2で80時間です。この資格は免許ではなく適格性証明書にあたり、持っていないと検査してはいけない、というものではありません(出典:資格試験(日本非破壊検査協会)非破壊試験技術者資格試験(レベル1、レベル2)のフロー)。

法律で選任される人がエックス線作業主任者、検査の腕前を示すのがNDT資格。役割が違うので、検査の仕事を長く続ける人は両方持っていることが多いです。

求人と給料の目安

求人サイトの集計値を2つ並べます。どちらも掲載求人からの算出なので、実際の給料とはずれることがあります。

調べ方 平均年収 給与の幅 集計時点
「エックス線作業主任者」で検索した求人 489万円 314万円未満〜701万円超 2026年8月時点・203件
「非破壊検査」の職種データ 440万円台 341万〜840万円 2026年7月時点

※出典:求人ボックス エックス線作業主任者の仕事・求人情報求人ボックス 非破壊検査の年収・時給

非破壊検査の職種データでは、正社員のもっとも多い層が403万〜465万円、初任給は24万円程度でした。派遣社員の平均時給は1,672円、アルバイト・パートは1,230円です。地域差もあり、東京都が482万円、大分県が371万円と、111万円の開きがありました(いずれも2026年7月に求人ボックスが掲載求人から算出)。

資格手当については、金額を確かめられる公開情報が見つかりませんでした。手当があるかどうか、いくらかは会社ごとに違います。求人票の「資格手当」の欄で確認してください。

2025年の改正で、主任者の仕事が増えた

厚生労働省は2025年(令和7年)10月29日に、労働安全衛生規則と電離放射線障害防止規則を改正しました。きっかけは2021年に起きた、X線装置の点検作業中の被ばく事故です。自動警報装置が気づきにくい場所にあったこと、インターロックが壊れたまま無効にされて長く直されていなかったことが、原因として挙げられています。

この改正で、エックス線作業主任者の仕事に次の内容が加わりました。

  • 2026年4月1日から:自動警報装置などの措置について、必要な手当てをすること
  • 2027年10月1日から:安全装置が作業中きちんと働いているかの確認と、安全装置を止めるときの代わりの措置の確認

免許試験の科目は変わりません。改正の前に取った免許を持つ人も、これまでどおり主任者に選ばれます。

(出典:労働安全衛生規則及び電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令等の施行等について(厚生労働省)

次にやること

エックス線作業主任者を考えている人が、次にやることは3つです。

  1. 試験協会のサイトで過去問を1回分ダウンロードして解いてみる。 無料で公開されています。ここで手ごたえを見てから、テキストを買うかどうか決めれば無駄がありません。
  2. 受ける会場と試験日を確かめる。 会場は全国7地区の安全衛生技術センターと出張試験です。日程はセンターごとに違うので、通える会場の日程表を先に見てください。
  3. 求人票で「エックス線作業主任者」の扱いを確認する。 必須なのか、あれば歓迎なのか、資格手当がつくのか。同じ検査の仕事でも会社によって差があります。ほかの資格と比べてから決めたい人は、工場で稼げる資格の比較もあわせて読んでみてください。

受験資格がない試験なので、思い立った月に申し込めます。まずは過去問1回分から始めてみてください。

参考にした情報

法令や試験団体、行政の公開情報と、求人サイトの集計をもとにまとめました(取得は2026年8月)。金額や制度、合格率は変わることがあるため、申し込み前に公式サイトで確認してください。