大きな工場には、資格を持った人を置くよう法律で決められている役割があります。その1つがエネルギー管理士です。省エネ法という法律に基づく国家資格で、置く人数まで法律で決まっています。
取り方は2つあります。試験を受ける道と、研修を受ける道です。条件も費用も時期も違うので、どちらが自分に向いているかを、省エネルギーセンター(経済産業大臣が指定する試験機関)が出している手引をもとに整理しました。
エネルギー管理士は何をする資格?
工場が使っているエネルギーの量を見て、無駄を減らす計画を立て、実際に減らしていく。それを担当するのがエネルギー管理士です。エネルギーというのは電気やガス、重油など、工場を動かすために買っているものすべてを指します。
根拠になっているのは省エネ法です。正式には「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」という長い名前の法律で、エネルギー管理士の免状はこの法律の第55条に基づいて出されます(省エネルギーセンター「エネルギー管理研修 受講の手引」)。
免状そのものに、熱の資格・電気の資格という区別はありません。試験は熱分野と電気分野に分かれていますが、どちらで受かっても出てくる免状は同じ1種類です。熱分野で取った人が、あとから電気分野を受け直す必要はありません(省エネルギーセンター「令和8年度エネルギー管理士試験 試験制度の概要」)。
有資格者を置く決まりがある工場
省エネ法では、使うエネルギーの量で工場の区分が決まります。量は「原油換算」で数えます。電気もガスも重油も、原油に置きかえたら何キロリットル分か、という形にそろえた数え方です。
資源エネルギー庁の資料をもとに、工場・事業場ごとの決まりをまとめます。
| 1年に使うエネルギー(原油換算) | 区分 | 業種 | 置かなければいけない人 |
|---|---|---|---|
| 3,000kL以上 | 第一種エネルギー管理指定工場等 | 製造業など5業種(鉱業・製造業・電気供給業・ガス供給業・熱供給業)※事務所は除く | エネルギー管理者 |
| 3,000kL以上 | 第一種エネルギー管理指定工場等 | 上の業種の事務所、それ以外の業種(ホテル・病院・学校など) | エネルギー管理員 |
| 1,500kL以上〜3,000kL未満 | 第二種エネルギー管理指定工場等 | すべての業種 | エネルギー管理員 |
| 1,500kL未満 | 指定なし | すべての業種 | なし |
※資源エネルギー庁「事業者の区分と義務」より整理(2026年8月確認)。区分や義務の内容は法改正で変わることがあるので、最新は資源エネルギー庁の公式サイトで確認してください。
ここでいう「エネルギー管理者」は、エネルギー管理士の免状を持っている人の中から選ばなければいけません。工場が使うエネルギーの量に応じて、1人から最大4人を選びます(省エネルギーセンター「試験制度の概要」)。
もう1つの「エネルギー管理員」は、エネルギー管理講習(新規講習)を修了した人から選ぶ形です。こちらは講習を受ければ務められます。ただしエネルギー管理士の免状を持っている人は、3年ごとの資質向上講習を受けなくてよいことになっています(省エネルギーセンター「エネルギー管理講習」)。
つまりエネルギー管理士が必要になるのは、エネルギーをたくさん使う大きな製造工場です。自分の工場が対象かどうかは、総務や設備の担当部署に聞けば分かります。
取り方は2つある
免状を取る道は2つです。どちらで取っても、出てくる免状は同じものです。
| 試験ルート | 研修ルート | |
|---|---|---|
| 条件 | 受験資格の制限なし | 3年以上のエネルギー管理の実務経験 |
| 費用 | 受験手数料 17,000円(非課税) | 受講料 70,000円(非課税) |
| 時期 | 年1回・8月の日曜日 | 講義は9〜12月、修了試験は12月 |
| 場所 | 全国10か所の試験地 | 講義はオンライン、修了試験は全国6か所 |
| 中身 | 4課目の筆記試験(マークシート) | 講義を全部見たうえで修了試験 |
※省エネルギーセンター「令和8年度エネルギー管理士試験 受験の手引」「第49回エネルギー管理研修 受講の手引」より整理(2026年8月確認)。金額・日程は年度ごとに変わります。
免状の交付は1回だけです。研修で免状をもらった人が、あとで試験に合格しても、新しい免状は出ません。
試験ルートの日程と費用
令和8年度(第48回)の試験は、次のとおり公表されています。
- 試験日:令和8年8月2日(日)
- 申込受付:4月6日(月)〜6月22日(月)。インターネットで申し込む
- 受験手数料:17,000円(非課税)
- 試験地:北海道、宮城県、東京都、愛知県、富山県、大阪府、広島県、香川県、福岡県、沖縄県の10か所
- 受験資格:制限なし。学歴も実務経験も問われない
- 方法:マークシート方式の筆記試験
- 結果:9月下旬に合格者の受験番号が官報に載る。受験した人全員に合否通知書が郵送される
※省エネルギーセンター「令和8年度エネルギー管理士試験 試験の内容」より(2026年8月確認)。
試験地は10か所しかないので、住んでいる場所によっては前泊が必要になります。会場は受験票で知らされ、自分では選べません。移動と宿の分も費用として見ておくと安心です。
なお、受験そのものに条件はありません。実務経験がなくても、工場で働いていなくても受けられます。ただし合格したあとで実務経験が必要になります(後で説明します)。
試験で答えること
試験は熱分野と電気分野に分かれていて、申し込むときにどちらかを選びます。どちらも4課目で、課目Iは共通です。
- 熱分野:課目I エネルギー総合管理及び法規/課目II 熱と流体の流れの基礎/課目III 燃料と燃焼/課目IV 熱利用設備及びその管理
- 電気分野:課目I エネルギー総合管理及び法規/課目II 電気の基礎/課目III 電気設備及び機器/課目IV 電力応用
合格の基準は、どの課目も配点の60%以上です。1つでも60%に届かない課目があると、その年の合格にはなりません(省エネルギーセンター「エネルギー管理士試験 過去問題」「試験制度の概要」)。
分野の選び方は、ふだん自分がさわっている設備で考えると決めやすくなります。ボイラーや炉、蒸気配管など熱の設備が身近なら熱分野。受変電設備やモーター、制御盤など電気の設備が身近なら電気分野です。過去問題は省エネルギーセンターの公式サイトで公開されているので、申し込む前に両方をのぞいて、読める方を選ぶ手もあります。
どれくらいの人が受かっているか
省エネルギーセンターが公表した令和7年度(第47回、試験日は2025年8月3日)の結果です。
| 申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | |
|---|---|---|---|
| 新規受験者(課目免除の人を含む) | 9,802人 | 8,300人 | 2,783人 |
| 旧資格者 | 21人 | 18人 | 13人 |
※省エネルギーセンター「エネルギー管理士試験 合格者発表」(2025年9月16日付)より。
新規受験者でみると、受験した8,300人のうち合格は2,783人。割合にすると約33.5%です。3人に1人ほどが受かっている計算になります。
他の年度の数字は、公式サイトでは最新の1年分しか出ていないため確認できませんでした。合格率は年によって上下するので、目安として見てください。
3人に1人と聞くと、そこまで難しくないように見えるかもしれません。ただ、試験には計算があります。試験会場には電卓を持ち込めますが、使えるのは四則演算や開平計算(√)などができるものまでで、関数電卓や数式を記憶できる電卓は使えません。スマートフォンの電卓機能も使えず、貸し出しもありません(省エネルギーセンター「電卓の取扱いについて」)。熱や電気の計算にふだん触れていない人は、準備に時間がかかります。
1年で全部受からなくてもいい
エネルギー管理士試験には課目免除の仕組みがあります。4課目のうち一部だけ60%以上だった場合、その課目は「課目合格」になります。
課目合格した課目は、その試験が行われた年の初めから3年以内に同じ分野を受け直すとき、受けなくてよくなります。3年を過ぎると無効になり、また受け直しです(省エネルギーセンター「試験制度の概要」)。
つまり、1年目に2課目、2年目に残り2課目という受け方ができます。働きながら勉強するなら、分けて受ける進め方も選べます。ただし免除の申し込みには前年度と前々年度の受験番号が必要です。合否通知書は捨てずに取っておいてください。
研修ルートは実務3年以上の人向け
もう1つの道が、エネルギー管理研修です。3年以上のエネルギー管理の実務経験がある人が対象で、講義を全部受けたうえで修了試験に合格すると免状を申請できます。
令和8年度(第49回)の内容です。
- 対象:3年以上の十分なエネルギー管理の実務経験がある人
- 受講料:70,000円(非課税)。前年度に一部の課目だけ合格していて、残りだけ受け直す場合は50,000円(非課税)
- 仮申込:令和8年7月3日(金)〜9月28日(月)
- 講義:オンラインで視聴。受講期間は9月16日〜12月4日。視聴時間は合計33時間25分
- 修了試験:12月13日(日)9:30〜17:30
- 修了試験の会場:宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県の6か所
※省エネルギーセンター「第49回エネルギー管理研修 受講の手引」より(2026年8月確認)。
申し込むときは「エネルギー使用合理化実務従事証明書」という書類を出します。勤め先に3年以上の実務を証明してもらう書類で、これをもとに受講できるかどうかの審査があります。会社の協力がいるので、上司や担当部署に早めに相談してください。
費用は試験ルートの4倍ほどですが、講義を見て修了試験を受ける形なので、独学よりは道筋が見えやすい進み方です。会社が費用を出してくれるかどうかも、聞いてみる価値があります。
なお、修了試験にも課目合格の仕組みがあります。集合形式の研修は行われず、講義はすべてオンラインです。
合格しても、実務1年がないと免状は出ない
ここが見落としやすいところです。試験に合格しただけでは、エネルギー管理士を名乗れません。
免状の交付を申請するときに、「エネルギーの使用の合理化に関する実務に1年以上従事した」ことを証明する書類(エネルギー使用合理化実務従事証明書)が必要になります。根拠は「エネルギー管理士の試験及び免状の交付に関する規則」第6条で、試験に合格して実務に1年以上従事した人に免状を交付する、と決められています。
助かるのは、実務の時期が問われないことです。合格の前でも後でもかまいません(省エネルギーセンター「試験制度の概要」)。省エネに関わる仕事をすでに1年以上しているなら、合格した時点で条件を満たしていることもあります。どんな仕事が実務に当たるかは証明書の様式と記入方法の説明に書かれているので、申請の前に確認してください。
免状の交付手数料は3,500円(非課税)です。旧制度の免状を持っていて課目免除で合格した人は2,250円です。申請先は、令和元年度以降の試験に合格した人は省エネルギーセンター、平成30年度までの合格者と研修修了者は経済産業省になります(省エネルギーセンター「エネルギー管理士免状の交付申請について」)。
電気主任技術者を持っている人
すでに電気主任技術者(電験)の免状を持っている人は、研修ルートで一部の講義の受講が免除されます。ただし免除されるのは講義だけで、修了試験は全課目を受ける必要があります(省エネルギーセンター「研修の申込について」)。
試験ルートで電気分野を選ぶ場合も、課目IIは「電気の基礎」です。電験の勉強で扱った範囲と重なるところがあります。電験三種の費用や日程は電験三種の取り方と難易度にまとめています。
手当がつくかどうかの確かめ方
資格手当がいくらつくか、年収がどれくらい変わるかは、公的機関の公開情報では確認できませんでした。手当の有無も金額も、会社ごとの決まりだからです。
確かめ方はこうです。
- 自分の会社の賃金規程(資格手当の一覧)を見る。総務や人事に聞けば教えてもらえます。
- 求人票の資格手当の欄と、歓迎する資格の欄を見る。エネルギー管理士が載っているかどうかで、その会社の扱いが分かります。
- 受験費用の補助制度があるか聞く。受験手数料や研修受講料を会社が出す仕組みを持っている会社もあります。
はっきりしているのは、大きな工場では法律上この免状を持つ人を置かなければならない、ということです。工場側から見れば、免状を持っている人は選任できる人材になります。ほかにどんな資格が現場で扱われているかは、工場で稼げる資格の比較で費用と日数を見比べてみてください。
次にやること
エネルギー管理士は、思い立ってすぐ取れる資格ではありません。順番に進めるほうが早く着きます。
- 自分の工場が指定工場かどうかを確かめる。 総務や設備の担当部署に「うちは第一種か第二種のエネルギー管理指定工場ですか」と聞けば分かります。対象なら、資格が生きる職場です。
- どちらのルートで行くか決める。 エネルギー管理の実務が3年以上あるなら研修ルートも選べます。なければ試験ルートです。
- 熱分野か電気分野かを決める。 ふだんさわっている設備に近い方を選びます。迷ったら省エネルギーセンターの公式サイトで過去問題を見て、読める方にします。
- 申込時期をカレンダーに入れる。 試験は例年4月から6月に申込受付、8月に実施。研修は7月から9月に仮申込です。年度で日付が動くので、公式サイトで確認してください。
- 実務経験の証明を誰にお願いするか考えておく。 試験ルートは合格後に1年、研修ルートは申込時に3年の証明が必要です。勤め先の証明が要るので、早めに相談しておくと詰まりません。
- 会社の資格手当と費用補助を確認する。 賃金規程に載っていれば、取ったあとの変化がはっきりします。
参考にした情報
国の機関と、経済産業大臣が指定した試験機関の公式サイトを中心にまとめました(確認は2026年8月)。日程・金額・制度は年度ごとに変わるので、申し込む前に必ず公式サイトで最新の情報を確認してください。
- 一般財団法人省エネルギーセンター:令和8年度エネルギー管理士試験 受験の手引(試験制度の概要)(2026年8月確認)
- 一般財団法人省エネルギーセンター:令和8年度エネルギー管理士試験 受験の手引(試験の内容)(2026年8月確認)
- 一般財団法人省エネルギーセンター:エネルギー管理士試験 合格者発表(2026年8月確認)
- 一般財団法人省エネルギーセンター:エネルギー管理士試験 過去問題(2026年8月確認)
- 一般財団法人省エネルギーセンター:エネルギー管理士試験における電卓の取扱いについて(2026年8月確認)
- 一般財団法人省エネルギーセンター:第49回エネルギー管理研修 受講の手引(研修制度の概要)(2026年8月確認)
- 一般財団法人省エネルギーセンター:第49回エネルギー管理研修 受講の手引(研修の内容)(2026年8月確認)
- 一般財団法人省エネルギーセンター:第49回エネルギー管理研修 受講の手引(研修の申込について)(2026年8月確認)
- 一般財団法人省エネルギーセンター:エネルギー管理士免状の交付申請について(2026年8月確認)
- 一般財団法人省エネルギーセンター:エネルギー管理講習「新規講習」「資質向上講習」(2026年8月確認)
- 資源エネルギー庁:事業者の区分と義務(2026年8月確認)
