石綿作業主任者の取り方|費用・日数・資格手当を解説

古い建物を解体する現場に、石綿(アスベスト)を扱う人がいます。そこには必ず石綿作業主任者という資格を持つ人がいなければなりません。法律で決まっているからです。

工場の設備を古くなって解体・改修するときも、この資格が関わる場面が増えてきています。ここでは、取り方・費用・日数・資格手当まで、公開情報をもとに整理します。

石綿作業主任者は何をする資格か

石綿作業主任者は、労働安全衛生法にもとづく国家資格です。石綿(アスベスト)を扱う作業では、この資格を持つ人を必ず選ばなければいけません。

厚生労働省の説明では、法律の決まりはこうなっています。石綿を扱う作業(試験のためだけに扱う場合を除く)では、石綿作業主任者技能講習を修了した人の中から、会社が石綿作業主任者を選ばなければなりません。

現場でやることは、法律上3つです。

  • 作業のやり方を決めて、作業員に指示を出す(粉じんを吸わせない・体を汚染させないため)
  • 局所排気装置やプッシュプル型換気装置、除じん装置などを、1か月に1回以上のペースで点検する
  • 作業員がマスクなどの保護具をきちんと使っているか、見張る

部屋ごとに1人必要というわけではありません。この3つの仕事をこなせる範囲であれば、まとめて配置してよいことになっています。

どんな現場でこの資格が必要になるか

選任が必要な作業は、厚生労働省の資料で次のように整理されています。

作業の種類 選任
建築物・工作物・鋼製船舶の解体や改修作業(封じ込め・囲い込みを含む) 必要
そのほかの作業(石綿を含む廃棄物の処理・運搬など) 必要(粉じんに体がさらされるおそれがある場合)
試験研究のために石綿を製造する作業 必要
試験研究のためだけに石綿を扱う作業 不要

※石綿障害予防規則・厚生労働省の資料(2026年8月時点確認)をもとに作成。

建築物や工作物には、ふつうの建物のほか、煙突、サイロ、鉄骨、上下水道管、化学プラントなども入ります。船舶の解体も対象です。鋼製の船舶を解体・改修する作業も、建築物や工作物の解体等作業と同じ扱いになります。工場・現場で働く人にいちばん関係が深いのは、建物や工作物の解体・改修作業です。

運搬だけの作業には、例外もあります。厚生労働省の解説では、荷物がしっかり包装されていて石綿の粉じんを吸うおそれがない運搬作業なら、選任は必要ないとされています。粉じんにさらされるおそれがあるかどうかが分かれ目です。

産業廃棄物を扱う仕事にも関係します。石綿を含む廃棄物を処理・運搬する作業も、選任が必要な作業に入るからです。解体工事の現場に限った資格ではありません。

特別教育との違い

石綿に関わる教育には、もう1つ特別教育があります。ここで整理しておきます。

特別教育 石綿作業主任者技能講習
対象者 実際に作業する労働者 現場を指揮する立場の人
時間数 4.5時間 学科10時間(+修了試験1時間)
修了試験 確認できた範囲ではなし あり
修了後にできること 石綿を扱う解体・改修作業に従事できる 選任されれば石綿作業主任者になれる

※厚生労働省の告示(2026年8月時点確認)をもとに作成。特別教育の修了試験の有無は、実施する機関によって運用に幅がある可能性があります。

特別教育は現場に入るための入り口、技能講習は現場を管理する立場になるための資格というイメージです。作業員として働くだけなら特別教育で足りますが、現場の責任者になるには技能講習を修了する必要があります。

受講資格と講習内容

学歴や実務経験を条件にしている講習実施団体は見当たりませんでした。誰でも申し込めます。

ただし年齢には注意が必要です。複数の実施団体が「満18歳以上」を受講条件にしています。18歳未満でも講習は受けられますが、実際に石綿を扱う作業に就くことはできません。

講習の科目と時間数は、次のとおりです。

科目 時間数
健康障害とその予防措置に関する知識 2時間
作業環境の改善方法に関する知識 4時間
保護具に関する知識 2時間
関係法令 2時間

※厚生労働省の告示にもとづく学科の時間数(2026年8月時点確認)。学科の合計は10時間です。

これに修了試験1時間が加わり、合計11時間・2日間というのが基本の形です。実施団体によっては、休憩や受付の時間も含めて2日間で13時間ほどになる場合もあります。

費用と日数

受講料は、実施する団体によって差があります。2026年8月時点で確認できた例です(テキスト代を含む合計額)。

実施団体 受講料合計(テキスト代込み)
安全衛生教育センターいばらき 13,090円
静岡県労働基準協会連合会 13,500円
愛知労働基準協会 13,390円
千葉県労働基準協会連合会 15,290円
建設業労働災害防止協会 群馬県支部 15,785円
東京労働基準協会連合会(中央支部) 16,940円
建設業労働災害防止協会 京都府支部 16,159円
建災防おおさか 17,035円

※各団体の公開情報より(2026年8月時点)。地域や団体によって数千円の差があります。最新の金額は申込み先で確認してください。

だいたい13,000円台〜17,000円台(テキスト代込み)と考えておくとよさそうです。日数は2日間が基本です。

修了試験・難易度

2日目の学科がすべて終わったあと、1時間の修了試験があります。合格の基準は、講習を行う機関ごとに決められています。全国共通の基準を示した公的な情報は見当たりませんでした。受講する機関の案内で確認してください。

合格率についても、実施団体の公式サイトでは公表されている情報が見当たりませんでした。ただ、講習をきちんと聞いていれば対応できる内容、という案内をしている団体が多くありました。

申込みから修了証交付までの流れ

団体によって細かい手順は違いますが、だいたい次のような流れです。

  1. 申込みをする(Web・FAX・郵送・窓口など)。締め切りは団体によって「受講日の20営業日前まで」「4営業日前まで」など差があります。
  2. 必要書類を準備する。証明写真(縦3.0cm×横2.4cm程度)2枚と、本人確認書類の写しが必要な団体が多いです。
  3. 受講料を支払う(銀行振込・郵便振込・現金書留など)。
  4. 2日間、学科講習を受ける。
  5. 2日目の最後に、修了試験(1時間)を受ける。
  6. 修了証を受け取る。

修了証を受け取るタイミングは団体によって違います。当日その場で渡す団体もあれば、合格者にだけ後日発送する団体もあります。急いで仕事に必要な人は、申込み前に確認しておくと安心です。

資格手当と工場での役立ち場面

資格手当が月にいくらつくかをまとめた公的な統計は見つかりませんでした。ここでは金額を書きません。

代わりに、この資格が条件になっている求人の給与帯はわかりました。求人情報サイトの集計(2026年8月時点・掲載800件台)では、平均月給35.9万円程度、年収の例で500万〜800万円程度という求人もありました。ただしこれは資格が条件や歓迎に入っている求人全体の給与の幅であり、資格手当そのものの金額ではありません。手当の金額を知りたいときは、気になる会社の求人票を1件ずつ確認するのが確実です。多くの求人票には資格手当の金額が個別に書かれています。

この資格が歓迎・必須になりやすいのは、次のような仕事です。

  • 解体工事業(もっとも求人が多い分野)
  • 石綿(アスベスト)除去の専門業者
  • 内装工事業・改修工事
  • 施工管理
  • 環境調査・点検

工場勤務でも、これから関係が深まりそうな動きがあります。工作物(ボイラーや配管設備、発電設備など)を解体・改修する前の石綿の事前調査は、以前から義務でした。これが2026年1月から、厚生労働大臣が定める講習を修了した有資格者が行うことに変わりました。工場でいえば、古い配管やダクト、貯蔵タンク、鉄骨部分などが当てはまります。調べた結果、石綿が見つかれば、その解体・除去作業には引き続き石綿作業主任者が必要です。

石綿の規制は、ここ数年で段階的に強くなっています。

  • 2021年4月:規制対象がレベル3建材(成形板など)にも拡大
  • 2022年4月:一定規模以上の工事で、電子システムでの事前報告が義務化
  • 2023年10月:建築物・船舶の解体等工事で、有資格者による事前調査が義務化
  • 2026年1月:工作物の解体・改修工事でも、有資格者による事前調査が義務化

※環境省・厚生労働省の公表資料より(2026年8月時点)。

規制の対象が建物だけから工場の設備にも広がってきています。対象が広がるほど、石綿作業主任者が必要になる現場が増える可能性はありますが、求人が何%増えるといった具体的な予測データはありません。

工場で取れる資格をほかにも比べたい人は、こちらにまとめています。→ 工場で稼げる資格の比較

次にやること

  1. 自分の職場に石綿の解体・改修作業があるか確認する。 老朽化した設備の改修予定がないか、上司や総務に聞いてみてください。
  2. 特別教育との違いを整理する。 作業員として現場に入りたいだけなら特別教育、現場を指揮する立場を目指すなら技能講習です。
  3. 近くの労働基準協会や建設業労働災害防止協会のサイトで、日程と料金を確認する。 団体によって数千円の差があります。
  4. 証明写真と本人確認書類を用意しておく。 申込みの前に準備しておくとスムーズです。
  5. 修了証の交付タイミングを申込み先に確認する。 急ぎで必要な場合は特に大事なポイントです。
  6. 求人票の資格手当の欄を見る。 相場ではなく、応募先の求人票に書かれた金額が答えです。

不安なまま調べ続けるより、まずは自分の職場に石綿を扱う作業があるかどうかを確認するところから始めてみてください。

参考にした情報

  • 厚生労働省「職場のあんぜんサイト・作業主任者」https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo34_1.html
  • e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令」第6条第23号 https://laws.e-gov.go.jp/law/347CO0000000318
  • 安全衛生情報センター(中央労働災害防止協会)「石綿障害予防規則」第19条・第20条・第27条 https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-87-4-0.htm
  • 厚生労働省労働基準局「石綿障害予防規則の解説」 https://www.ishiwata.mhlw.go.jp/pdf/top2.pdf
  • 厚生労働省「石綿作業主任者技能講習規程」(平成18年厚生労働省告示第26号) https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/sekimen/hourei/koku06-26.html
  • 厚生労働省「特別教育及び作業主任者の選任の対象となる作業の種類について」 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/06/dl/s0613-13g.pdf
  • 東京労働基準協会連合会(中央支部) https://www.toukiren.or.jp/shibu/chuo/ishiwata.html
  • 静岡県労働基準協会連合会 https://www.shizukiren.or.jp/course00011.html
  • 愛知労働基準協会 https://www.airouki.or.jp/course/skill/ishiwata.html
  • 千葉県労働基準協会連合会 https://chibaroukiren.com/session/43/
  • 建設業労働災害防止協会 群馬県支部 https://www.kensaibou-gunma.ne.jp/session/traning/108.html
  • 建設業労働災害防止協会 京都府支部 https://kensaibo-kyoto.jp/course-2/shikaku22/
  • 建災防おおさか https://www.kensaibo-osaka.jp/course/course_list/c118/
  • 安全衛生教育センターいばらき https://anzen-ibaraki.com/cn2/ginou/ishiwata.html
  • 求人ボックス「石綿作業主任者の転職・求人情報」 https://xn--pckua2a7gp15o89zb.com/%E7%9F%B3%E7%B6%BF%E4%BD%9C%E6%A5%AD%E4%B8%BB%E4%BB%BB%E8%80%85%E3%81%AE%E4%BB%95%E4%BA%8B
  • 環境省「大気環境中へのアスベスト飛散防止対策について」 https://www.env.go.jp/air/asbestos/litter_ctrl/
  • 愛知労働局「石綿障害予防規則等が改正されました」 https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/anzen_eisei/ishiwatasoku_kaisei.html
  • 熊本産業保健総合支援センター「石綿障害予防規則の一部を改正する省令の公布について」 https://kumamotos.johas.go.jp/contents/news/20251203155104.html

※記載の内容は2026年8月時点で確認できた情報にもとづきます。料金や日程、法令の運用は変わることがあるため、最新の情報は各公式サイトで確認してください。