公害防止管理者の取り方|区分の選び方・費用・難易度

「公害防止管理者」という名前の資格を求人票で見かけて、区分の多さに戸惑ったことはないでしょうか。大気関係、水質関係、騒音・振動関係など、名前だけでは違いがつかみにくい資格です。

この記事では、公害防止管理者が何をする資格か、区分の選び方、受験資格・試験内容・費用・難易度を公開情報から整理しました。

先に結論

急いでいる人は、ここだけでも。

  • 公害防止管理者は、工場が出すばい煙や排水を管理するための国家資格です。区分は13種類あり、自分の勤務先(志望先)の工場が出す公害の種類・量で、必要な区分が決まります。
  • 受験資格に制限はありません。年齢・学歴に関係なく、誰でも受験できます。
  • 合格率は区分によって大きく違います。2025年度は全区分平均36.2%でしたが、区分によって20%台〜50%台まで幅があります。
  • 受験手数料は1万1,600円または1万2,300円程度です(区分によって異なります)。
  • 求人の給料は、求人ボックスの集計で平均年収507万円ほどでした(2026年8月時点)。

公害防止管理者とは何をする資格か

この資格は「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」にもとづく国家資格です。工場の中に、公害を防ぐための体制(組織)を作ることを義務付けた法律です(出典:環境省)。

この法律では、対象になる工場に、次の3つの役職を中心とした組織を作り、都道府県知事(または政令指定都市の市長)に届け出ることを求めています。

  • 公害防止統括者:工場の公害防止業務をまとめて管理する人。工場長クラスが想定されています。資格は不要です。
  • 公害防止主任管理者:統括者を補佐し、公害防止管理者に指示を出す人。部長・課長クラスが想定されています。資格が必要です。
  • 公害防止管理者:公害を出す施設や、防止するための施設の点検、原材料の検査などを実際に行う人。施設の直接の責任者にあたります。資格が必要です。

出典:特定工場における公害防止組織の整備に関する法律の概要(環境省)

実際の仕事は、工場の排ガス・排水の測定と記録、公害防止施設の点検・整備、異常が起きたときの応急措置と行政への報告、従業員への環境教育などです(出典:求人ボックス、Indeed)。

区分の種類と選び方

区分は現在13種類あります(出典:産業環境管理協会)。工場が出すばい煙・排水の種類や量によって、対象になる区分が決まります。

区分 対象になる工場の目安
大気関係第1種 大気の有害物質を出す施設があり、排出ガス量が1時間4万立方メートル以上
大気関係第2種 同じ有害物質発生施設で、排出ガス量が4万立方メートル未満
大気関係第3種 有害物質以外のばい煙発生施設で、排出ガス量が4万立方メートル以上
大気関係第4種 有害物質以外のばい煙発生施設で、排出ガス量が1万〜4万立方メートル未満
水質関係第1種 水質の有害物質を出す施設があり、排水量が1日1万立方メートル以上
水質関係第2種 同じ有害物質排出施設で排水量が1日1万立方メートル未満、または特定の地下浸透水を出す
水質関係第3種 有害物質以外の汚水等排出施設で、排水量が1日1万立方メートル以上
水質関係第4種 有害物質以外の汚水等排出施設で、排水量が1日1千〜1万立方メートル未満
騒音・振動関係 一定規模以上の機械プレス・鍛造機・液圧プレスがある
特定粉じん関係 石綿(アスベスト)を出す施設がある
一般粉じん関係 石綿以外の粉じんを出す施設(コークス炉など)がある
ダイオキシン類関係 ダイオキシン類を含む排ガス・排水を出す施設がある
公害防止主任管理者 排出ガス量1時間4万立方メートル以上のばい煙発生施設と、排水量1日1万立方メートル以上の汚水等排出施設を両方持つ

出典:環境省、産業環境管理協会

区分は、自分がやりたい仕事から選ぶものではありません。応募したい工場が、どんな施設を持ち、どれくらいの規模でばい煙・排水を出しているかで、必要な区分がほぼ決まります。求人票や採用ページで、工場の業種・設備をまず確認してみてください。

どんな工場で必要になるか

対象になる業種は、製造業(加工業を含む)・電気供給業・ガス供給業・熱供給業の4つに限られます。この4業種のうち、一定規模以上のばい煙発生施設・汚水等排出施設・粉じん発生施設などを持つ工場が「特定工場」となり、公害防止管理者の選任が義務になります(出典:環境省)。

求人・解説サイトでよく名前が挙がる就職先は、化学工場、金属加工・自動車部品工場、食品工場、製紙工場、廃棄物処理業・清掃工場、発電所、製鉄所、環境分析会社などです。清掃工場では、ダイオキシン類関係の選任が必置とされることが多いようです。

出典:公害防止管理者の仕事内容(シカクシゴト)、メイテックネクスト

応募先の工場が実際に選任義務の対象かどうかは、求人票だけで判断しにくいことがあります。気になる場合は、採用担当者に確認してみるのが確実です。

受験資格・試験内容・合格基準

受験資格

産業環境管理協会によると、公害防止管理者等国家試験は、年齢・学歴に関係なく誰でも受験できます。実務経験も必要ありません。

出典:国家試験実施要領(産業環境管理協会)

試験科目・出題形式

科目ごとに五肢択一のマークシート方式です。区分によって科目数が変わります。

区分 科目数の目安
大気関係第1種 6科目
大気関係第2種〜第4種 4〜5科目
水質関係第1種 5科目
水質関係第2種〜第4種 3〜4科目
騒音・振動関係/ダイオキシン類関係/特定粉じん関係/一般粉じん関係 3科目
公害防止主任管理者 4科目

すべての区分に共通する科目として「公害総論」があります。規模が大きい区分ほど、科目数も多くなる作りです。

合格基準

科目ごとに正解率60%以上が必要です(この基準は毎年、試験後の委員会で決まる仕組みですが、近年は60%が続いています)。区分として合格するには、その区分に必要な科目すべてに合格しなければいけません。

出典:産業環境管理協会

国家試験を受けずに資格を得る方法として、「資格認定講習」もあります。eラーニング形式の講習と、会場のパソコンで受ける修了試験の組み合わせで、対面講習はありません。ただし受講には「技術資格」または「学歴+実務経験資格」のどちらかが必要で、国家試験のように誰でも受けられるわけではない点に注意してください。なお大気関係第1種・水質関係第1種は、「学歴+実務経験資格」では申し込めず、技術資格を持つ人だけが対象です。

出典:資格認定講習(産業環境管理協会)

難易度・合格率は区分ごとに差が大きい

産業環境管理協会が発表した2025年度(令和7年度・第55回)の試験結果です。

区分 合格率
全区分平均 36.2%(受験者19,845人、合格者7,175人)
大気関係第1種 34.4%(受験者4,064人、合格者1,396人)
大気関係第2種 33.5%
大気関係第3種 21.3%
大気関係第4種 22.6%
水質関係第1種 46.7%(受験者6,041人、合格者2,821人)
水質関係第2種 26.5%
水質関係第3種 39.7%
水質関係第4種 31.6%
騒音・振動関係 30.6%
特定粉じん関係 31.5%
一般粉じん関係 21.6%
ダイオキシン類関係 57.8%
公害防止主任管理者 25.5%

出典:令和7年度公害防止管理者等国家試験結果(産業環境管理協会)

全体の合格率は年度によっても変わり、2023年度23.6%、2024年度25.9%、2025年度36.2%という推移でした。年によって難易度の感じ方が変わる可能性がある、という点は頭に入れておくとよさそうです。

区分による差は大きく、対象になる工場の規模が大きい大気関係第1種・水質関係第1種は、試験科目も多く、難しい部類とされます。一般粉じん関係や大気関係第3種は、合格率が2割程度と低めです。他の工場系資格と比較する解説記事では、危険物取扱者やエネルギー管理士より難しく、公害防止(特に大気関係第1種)は工場系資格の中でも難易度が高い部類と紹介されています。ただしこれは解説サイト独自の比較であり、公式な難易度ランキングではありません。

出典:試験の比較

費用・日数の目安

受験手数料(区分ごと)

  • 1万2,300円:大気関係第1種・第3種、水質関係第1種・第3種、ダイオキシン類関係、公害防止主任管理者
  • 1万1,600円:大気関係第2種・第4種、水質関係第2種・第4種、騒音・振動関係、特定粉じん関係、一般粉じん関係

出典:国家試験実施要領(産業環境管理協会)(2026年度の実施要領に基づく金額)

資格認定講習の受講料(区分ごと)

大気関係・水質関係とも、第1種4万9,500円、第2種3万8,500円、第3種4万2,000円、第4種3万円。騒音・振動関係4万6,500円、特定粉じん関係2万2,500円、一般粉じん関係2万1,000円、ダイオキシン類関係3万8,500円、公害防止主任管理者5万6,500円です。国家試験の受験手数料よりは高くなりますが、修了すれば国家試験合格と同等の資格が得られます。

出典:産業環境管理協会

国家試験と資格認定講習には、こんな違いもあります。国家試験で科目ごとに合格すると、その科目は翌年度以降免除される制度がありますが、講習を修了した人は、あとで国家試験を受けるときにこの科目免除を使えません。

出典:よくある質問(産業環境管理協会)

日数の目安

講習は自分のペースで視聴するeラーニング形式のため、決まった「◯日間」という日数は確認できませんでした。国家試験そのものは、例年、申込が7月、試験日が10月、合格発表が11月中旬(速報)〜12月15日(官報での正式発表)というスケジュールです(2026年度の例)。

出典:令和8年度 公害防止管理者等国家試験 申込概要

資格手当と求人の給料

求人ボックスの集計(取得時点2026年8月、求人件数4,832件)では、平均年収507万円、年収レンジは約353万〜926万円でした。

出典:公害防止管理者の仕事・求人情報(求人ボックス)

スタンバイでは、地域・求人ごとに年収400万〜1,260万円程度まで幅がある求人が確認できました。愛知県名古屋市で年収600万〜1,149万円、三重県四日市市で550万〜1,260万円という例もありました。

出典:スタンバイ

資格手当については、化学系資格の相場をまとめた解説記事に「公害防止管理者は月数千円程度」という記載がありました。同じ記事で、危険物取扱者は3,000〜1万円程度、高圧ガス製造保安責任者は数千〜1万円前後とされています。ただしこの記事も出典・調査データの明記がなく、目安として見てください。

出典:化学系資格の資格手当相場まとめ

時給についての公式な集計データは、今回確認できた範囲では見つかりませんでした。

他の工場資格との違い・組み合わせ

工場系資格の難易度・学習時間を比較した解説記事では、「危険物甲種(易しい)→エネルギー管理士→高圧ガス甲種機械→冷凍機械→水質関係第1種→大気関係第1種(最難)」という順で難しくなるとされています。この記事独自の目安であり、産業環境管理協会の公式合格率とは数値の出し方が異なる点に注意してください。

出典:試験の比較

別の解説記事では、危険物取扱者甲種を持っている人が次に取る資格として、製造業の環境部門で働く人には公害防止管理者(水質関係第4種)が向いているとされています。危険物甲種と内容が40〜50%ほど重なり、学習時間の目安は100〜150時間、合格率は約30%という記載もありました。エネルギー管理士や甲種ガス主任技術者との間で、試験科目の一部が免除される制度もあるようです。

出典:危険物甲種の次に取る資格5選

確認できなかったこと

  • 資格認定講習の具体的な受講日数・標準の視聴時間は確認できませんでした。
  • 大気関係・水質関係の区分別に、給料・求人数を詳しく比較した記事は見つかりませんでした。
  • 資格手当について、求人票に金額を明記した実例は見つかりませんでした。

次にやること

公害防止管理者は、区分が多いぶん、自分に必要な区分を見極めることが最初の一歩です。今日からできることをまとめます。

  1. 応募したい工場・志望先の業種と設備を、求人票や採用ページで確認する。ばい煙を出す工場なら大気関係、排水量が多い工場なら水質関係、というように当たりをつける。
  2. 産業環境管理協会の公式サイトで、今年度の試験日程・受験手数料を確認する。
  3. すでに実務経験がある人は、国家試験と資格認定講習のどちらが自分に合うか、受講資格を照らし合わせて検討する。
  4. どの資格から取るか迷うなら、工場で稼げる資格の比較で、費用や難易度を横並びで見比べる。

区分の選び方に迷ったら、まずは志望先の工場がどんな設備を持っているかを確認するところから始めてみてください。

参考にした情報

環境省・産業環境管理協会の公式サイトを中心に、求人サイトの公開情報もあわせてまとめました(取得は2026年8月)。金額や制度は変わることがあるため、最新の情報は各団体の公式サイトで確認してください。