アルミ、銅、亜鉛。工場の求人でこうした金属の名前を見たことがある人もいるはずです。鉄以外のこれらの金属は、まとめて「非鉄金属」と呼ばれています。同じ金属工場でも、鉄鋼(製鉄所)とは扱う金属も工程も別物です。
非鉄金属工場でどんな作業をするのか、きついと言われる理由、時給や給料の目安を、公開されている情報から整理しました。鉄鋼工場との違いや、未経験から働けるかどうかも見ていきます。
非鉄金属工場とは何をしている工場か
非鉄金属とは、鉄を主成分とする金属(鋼)以外の金属をまとめた呼び方です。科学的な分類ではなく、鉄以外の金属は生産量が鉄鋼よりずっと少ないため、便宜的にひとまとめにされています(出典:非鉄金属 – Wikipedia)。
代表的な非鉄金属は次のとおりです。
- アルミニウム、マグネシウム、チタンなど(軽金属)
- 銅、スズ、亜鉛、鉛など(ベースメタル)
- ニッケル、クロムなど(レアメタル)
- 金、銀、白金など(貴金属)
非鉄金属は「電気を通しやすい」「錆びにくい」「軽い」といった特徴があり、建築や自動車、電気機器などで幅広く使われています(出典:非鉄金属とは|鉄以外の金属材料)。
非鉄金属工場の仕事は、経済産業省の分類でいうと大きく2つに分かれます(出典:さんかくねっと 業種解説)。
- 製錬・精製:鉱石やスクラップから金属を取り出す工程。銅の製錬では、自熔炉という設備で1,200℃を超える高温で鉱石を溶かし、不純物を取り除いて銅の品位を高めます(出典:住友金属鉱山 播磨事業所)。
- 圧延・加工:製錬した金属や輸入した地金を、板・棒・線などの製品に加工する工程。
日本国内では、アルミの鉱石から金属を作る一次製錬は1977年に生産量のピークを迎えたあと、二度の石油危機による電気代の高騰で縮小が続きました。国内最後の製錬設備も2014年に停止し、今は輸入したアルミ地金を圧延・加工する工程だけが国内に残っています(出典:日本アルミニウム協会)。銅は日本国内で鉱石が採れないため、海外から精鉱を輸入し、小名浜・直島・玉野・東予・佐賀関の製錬所で電気銅に精錬しています(出典:経済産業省「非鉄金属産業の現状と課題」)。
非鉄金属を扱う主な企業には、三菱マテリアル、住友電気工業、UACJ、DOWAホールディングス、古河電気工業、JX金属などがあります。工場は香川・秋田・栃木・大分・愛知など、全国に分かれています。
きつい?楽?負担の中身で見る
非鉄金属工場の「きつさ」は、主に3つの要素で説明されています。
高温:製錬の工程では、1,200℃を超える高温の炉を扱います。合金鉄工場では、溶けた金属を運搬する作業中の死亡災害が報告されたこともあり、高温での安全確保が重要とされています(出典:労働安全衛生総合研究所 災害調査報告書)。
粉じん:鋳物製品を作る工程では、粉じんなど有害な要因にさらされる危険性が高いとされ、「粉じん障害防止規則」という法律で対策が義務づけられています(出典:粉じん障害防止対策について)。
重量物・交替勤務:クレーンでの荷物の吊り上げ(玉掛け)が発生する現場が多くあります。また、装置を止められない連続操業の工程が多いため、3交替制などの交替勤務が一般的とみられます。三菱マテリアル直島製錬所の求人情報では、3交替制で一方の勤務時間は7:15始業〜15:30退勤という例が紹介されています。ただし、非鉄金属工場全体で交替勤務がどれくらいの割合かを示す統計は見つかりませんでした。
厚生労働省によると、令和7年(2025年)の職場における熱中症による死傷者は1,803人で、統計開始以来もっとも多くなっています。業種別では製造業・建設業の順に多いのですが、非鉄金属業界だけに絞った数字は確認できませんでした(出典:厚生労働省)。
給料・時給の目安
非鉄金属製造業だけの公式な賃金統計は、今回の調査では見つけられませんでした。求人サイトや企業の情報から分かる範囲を紹介します。
| 情報源 | 内容 |
|---|---|
| 求人ボックス「非鉄金属精錬業」 | 平均年収482万円、下は〜339万円、上は882万円〜(正社員中心の求人集計) |
| 製錬工の個別求人(スタンバイ) | 月給33万3,600円〜38万3,000円 |
| アルミ工場の個別求人(日総工産) | 時給1,200円、月収20万円以上見込み |
| 運搬業務の個別求人 | 時給1,400〜1,750円 |
まとめると、現場作業の時給はだいたい1,200〜1,750円くらいの幅で見られました(2026年8月時点・確認できた個別求人の範囲)。ただし件数・時期をそろえて集計した公式な相場データではないため、目安として見てください。
参考として、上場している非鉄金属企業32社の平均年収は693万円、中央値715万円という数字もあります(2026年6月時点、有価証券報告書ベース)。ただしこれは本社勤務や技術職を含む会社全体の平均で、工場の現場作業員の給料とは水準が違う可能性が高いです(出典:年収白書)。
年間休日は企業によって差があります。住友金属鉱山は110〜117日程度、古河電気工業日光事業所は121日、UACJ名古屋製造所は132日という数字がありました(いずれも個別企業の例で、業界全体の平均ではありません)。
鉄鋼工場と何が違うのか
非鉄金属と鉄鋼は、扱う金属も溶ける温度も違います。目安として、鉄は1,500℃台、銅は約1,083℃、アルミは約660℃で溶けます(出典:金属の融点・沸点一覧)。
規模も違います。2023年の経済産業省の統計では、非鉄金属製造業は事業所数3,077・従業者数146,407人、鉄鋼業は事業所数5,088・従業者数220,443人でした。非鉄金属は鉄鋼業のだいたい3分の2くらいの規模です(出典:経済産業省「2023年経済構造実態調査」)。
| 項目 | 非鉄金属製造業 | 鉄鋼業 |
|---|---|---|
| 主な金属 | 銅・アルミ・亜鉛など | 鉄 |
| 事業所数(2023年) | 3,077 | 5,088 |
| 従業者数(2023年) | 146,407人 | 220,443人 |
| 高炉の有無 | なし(電気炉・精錬炉が中心) | 日本製鉄・JFEスチール・神戸製鋼所の3社が保有 |
作業環境そのものを直接比較した業界団体の資料は見つかりませんでした。高温・重量物・粉じんへの注意はどちらの業種にも共通していますが、「どちらがよりきついか」を数字で比較できる公的な情報はありません。鉄鋼工場について詳しく知りたい人は、製鉄所・鉄鋼工場の仕事もあわせて読んでみてください。
未経験・高卒からでも働ける?必要な資格
現場の製錬・製造オペレーター職は、資格がなくても応募できる求人が多く見られました。入社後にOJTや研修で技術を身につける仕組みが一般的です(出典:非鉄金属製錬技術者とはどんな仕事?)。
- 三菱マテリアル直島製錬所(求人情報より):採用者の9割が未経験からの正社員デビューという記載があり、導入研修・動画研修・OJTで教える体制。
- 住友電気工業(求人情報より):未経験・第二新卒歓迎。必須条件は高卒以上と交代勤務が可能なこと。
- UACJ名古屋製造所(求人情報より):未経験からスタートした先輩が多いという記載あり。必要な資格は入社後に会社負担で取得支援。
現場でよく使う資格には、次のようなものがあります。
- 玉掛け技能講習:つり上げ荷重1トン以上の玉掛け作業に必要。費用は2万〜5万円くらい、日数は2〜3日間。
- 玉掛け特別教育:つり上げ荷重1トン未満なら、こちらでも可。費用は1万〜2万円くらい、日数は2日間。
- クレーン・デリック運転士免許、床上操作式クレーン運転技能講習など:扱うクレーンの種類によって必要な資格が変わります。
これらの資格は、入社後に会社の指示・費用負担で取らせてもらえるケースが多いとされています。応募する前に、自分で費用を払って資格を取る必要は必ずしもありません(出典:工場勤務におすすめの資格5選)。資格を先に取っておきたい人は、工場で稼げる資格の比較も参考にしてください。
次にやること
非鉄金属工場の仕事に興味を持った人が、次にやることは次の3つです。
- 「アルミ工場」「金属加工」など、具体的な職種名で求人を探す。 「非鉄金属」という業種名で検索するより、扱う金属や作業内容で探したほうが求人が見つかりやすい傾向があります。
- 交替勤務ができるかを確認する。 連続操業の工場は交替勤務が多いため、生活リズムが変わることを前提に考えておきましょう。
- 未経験歓迎の求人でも、資格の取得支援があるか聞く。 玉掛けやクレーンの資格は、入社後に会社負担で取れる場合が多いです。応募前に確認しておくと安心です。
参考にした情報
経済産業省・厚生労働省の公開資料、企業の採用ページ、求人サイトの公開情報をもとにまとめました(取得は2026年8月)。金額や制度は変わることがあるため、最新の情報は各社の求人ページで確認してください。
- 経済産業省:非鉄金属産業の現状と課題、2023年経済構造実態調査二次集計結果(2026年8月確認)
- 厚生労働省:令和7年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(2026年8月確認)
- 住友金属鉱山:播磨事業所(製錬)(2026年8月確認)
- 求人ボックス:非鉄金属精錬業の転職・求人情報(2026年8月確認)
- 年収白書:非鉄金属業界の平均年収(2026年8月確認)
- 日本鉄鋼連盟:高炉の中で(2026年8月確認)
