セメント工場の仕事はきつい?作業内容・時給の目安

道路やビルの土台になるコンクリート。その材料であるセメントを作っているのが、セメント工場です。鉄鋼やガラスの工場と同じように、大きな設備で原料を高温で処理する「重工業」のイメージがありますが、実際の仕事はどうなっているのでしょうか。この記事では、公開されている情報をもとに、作業内容ときつさ、時給の目安を整理しました。

先に結論

  • セメント工場は、石灰石・粘土などの原料を焼いて「クリンカ」という中間製品を作り、それを粉にしてセメントに仕上げる工場です。
  • 作業は大きく分けて、原料の採掘・粉砕、焼成(高温で焼く)、仕上げ粉砕、出荷の4段階です。
  • きついと言われる理由は、粉じんが出る作業、高温設備の近くでの作業、大型の重機、屋外の鉱山作業、交代勤務などです(公開情報によると)。
  • 一方で、未経験歓迎の求人が多いことや、装置産業として設備の自動化が進んでいることは、働きやすさにつながっている面もあります。
  • 公開求人・企業公式サイトで確認できた月給の目安は、23.5万〜35万円くらい(2026年9月時点)。全国的な平均を示す統計は見つかりませんでした。
  • 工場は石灰石が採れる地域に多く、北海道・東北・埼玉・三重・大分・山口・兵庫などにあります。

セメント工場は何を作っているところか

セメント工場は、セメントの主原料になる「クリンカ」という中間製品を作り、それを粉にしてセメントに仕上げる工場です。

セメントの主な原料は、石灰石・粘土・けい石・鉄原料・石膏の5つです。このうち一番多く使われるのが石灰石です(出典:CMC「セメントの原料とセメントが作られる工程を解説」、セメント協会)。

  • 石灰石:セメントの主原料。工場は石灰石の産地に建てられることが多い
  • 粘土:酸化ケイ素やアルミナを補う
  • けい石:アルミナの比率を調整するために加える
  • 鉄原料:焼くときに溶けやすくする働きがある
  • 石膏:セメントが急に固まりすぎないようにする役目

石灰石は日本国内でほぼ自給できる、数少ない鉱物資源です。セメント協会のサイトでも「石灰石は国産100%」と説明されています(出典:セメント協会)。

原料の配合比率(石灰石が全体の何%かという具体的な数値)は、公開情報から確認できませんでした。「石灰石が一番多い」という点までにとどめておきます。

主な作業内容

セメントができるまでは、大きく分けて次の流れになります(出典:太平洋エンジニアリング、セメント協会)。

  1. 採掘・破砕:鉱山で石灰石を採掘し、破砕機で細かく砕く。
  2. 原料工程:砕いた石灰石と粘土などを混ぜ合わせ、竪型ミルという機械でさらに細かい粉にする。
  3. 焼成工程:粉にした原料を予熱装置に通してから、ロータリーキルンという回転する窯で900〜1450度の高温で焼く。原料が反応して、こぶし大より小さい「クリンカ」という石状の塊になる(出典:セメント協会、太平洋セメント大船渡工場)。
  4. 仕上げ工程:クリンカに石膏を加えて粉砕し、ふるい分けて最終的なセメント製品にする。
  5. 出荷工程:できたセメントをサイロで保管し、トラックや船で出荷する。

実際の求人票には、これらの工程に対応する形で次のような仕事内容が書かれています(出典:スタンバイ 埼玉県日高市の求人)。

  • セメント製造設備・発電設備の運転管理や保守、点検
  • セメントの袋詰め作業、フォークリフトでの運搬、トラックへの積み込み
  • セメント製造・出荷設備の保守や清掃
  • 鉱山の運営業務、セメント原料の生産管理

太平洋セメント熊谷工場の社員インタビューでは、設備部の仕事として「設備のメンテナンス(点検・整備・修理)」と「設備投資工事(更新・改造・新設)」の2つを担当していると紹介されています。年に2回(9月と3月)、約1か月間生産設備を止めて「定修」と呼ばれる大掛かりな点検・修理を行い、その後3か月かけて次回の準備を進める、という1年のサイクルがあるそうです。稼働中に急に起きる設備トラブルへの対応も必要だと書かれています(出典:太平洋セメント採用サイト 社員インタビュー)。

品質管理・分析の仕事について、セメント工場に限定した具体的な記述は見つかりませんでしたが、製造業一般では、製品の成分が規格通りかを化学分析で確認したり、強度試験を行ったりする仕事があります(出典:PST Japan)。セメント工場にも試験室での品質チェックがあると考えられますが、この点は一般的な製造業の情報からの推測で、セメント工場に特化した一次情報では確認できていません。

きついと言われる理由

公開情報から確認できた「きつい」と言われる理由は次のとおりです。

  • 粉じんが出る作業がある:セメントは粉体を扱う仕事なので、粉じんが発生する場面があります。労働安全衛生法・粉じん障害防止規則では、屋内でセメントなどを袋詰めする作業が「特定粉じん作業」に指定されていて、事業者は特別教育を行う義務があります(出典:神奈川労働基準協会連合会)。厚生労働省はじん肺(粉じんを吸い込んで肺が傷つく病気)を防ぐための対策を進めており、この対策でじん肺の新規有所見労働者数は大きく減っていると説明されています(出典:厚生労働省 新潟労働局)。防じんマスクの着用など対策をしたうえで働く仕事だと理解しておくとよさそうです。健康影響について詳しく知りたい人は、厚生労働省や産業保健の公式情報を確認してください。
  • 高温設備の近くでの作業がある:セメントを焼く工程では900〜1450度という高温のキルンを使います。設備の点検・保守を担当する人は、こうした高温設備の近くで作業する場面があると考えられますが、実際の頻度や時間についての公開情報は確認できませんでした。
  • 大型の機械・重機を扱う現場がある:石灰石の鉱山では、大きなダンプトラックが稼働しています(出典:日本建設機械工業会)。鉱山と工場を結ぶベルトコンベアが総延長10kmに及ぶ例もあり(青森県八戸市の例。出典:VISITはちのへ)、大規模な設備を扱う仕事であることがうかがえます。
  • 屋外・鉱山での作業がある:石灰石の採掘は屋外の鉱山で行われます。天候の影響を受けたり、広い敷地内を移動したりする場面もあると考えられます。
  • 交代勤務がある可能性:求人票には「夜勤」を含む募集もありました。セメント製造設備は24時間稼働している可能性があり、交代勤務・夜勤がある工場もあると考えられますが、すべての職種・工場に当てはまるとは限りません。求人ごとに確認してください(出典:スタンバイ)。
  • 突発的なトラブル対応がある:前述の社員インタビューにあるように、稼働中に急な設備トラブルが起きることがあり、臨機応変な対応が必要とされています。

楽・向いていると言われる理由

  • 未経験者を歓迎する求人が多い:袋詰め・フォークリフト作業などの求人では「未経験からスタート」「難しい作業がない」といった表現が使われています(出典:スタンバイ)。
  • 設備の自動化が進んでいる:セメント協会のサイトでは、「セメント産業は典型的な装置産業(大きな設備・機械で製品を作る産業)です」と説明されています(出典:セメント協会)。装置産業では、製造工程の多くがコンピューター制御された中央制御室から管理される傾向がありますが、セメント工場の中央制御室の具体的な業務内容や自動化の程度を示す一次情報までは確認できませんでした。
  • フォークリフトなど機械を使う作業が中心の職種もある:人力での重い荷物の運搬ではなく、フォークリフトなどの機械を使う求人が見られました。
  • 住宅面の福利厚生が手厚い求人がある:借上社宅、住宅手当、社宅費無料期間などを用意している求人がありました(出典:スタンバイ、エン転職)。

時給・給料の目安

公開求人・企業公式サイトから確認できた給与情報は次のとおりです(2026年9月確認)。新卒のエリア職だけ太平洋セメントの採用公式サイトから、それ以外は埼玉県日高市の求人ページに載っていた複数の求人からの情報です。

職種 給与の目安
構内作業員(袋詰め・フォークリフト、日勤) 月給30万〜35万円
構内作業員(袋詰め・フォークリフト、夜勤) 月給32万〜35万円
新卒採用のエリア職・初任給(太平洋セメント、全社共通) 月給26.9万〜27.9万円(短大・高専卒〜修士了。高卒は26.6万円)
大型ドライバー(セメント・原燃料輸送) 月給35万円
技術管理スタッフ(派遣・鉱山運営業務など) 時給1,800円、または月給23.5万円〜

(出典:スタンバイ 埼玉県日高市の求人、2026年9月確認)

上記は一部の求人・一部の会社から確認できた金額で、地域・職種・雇用形態(正社員・派遣・期間従業員など)によって幅があります。同じ日高市の求人一覧の中でも、会社によって月給19万円台からの求人もありました。全国的な平均時給・平均年収を示す統計は確認できませんでした。応募する際は、必ず募集している求人票で最新の条件を確認してください。

未経験・資格のこと

袋詰めやフォークリフト作業などの求人では「未経験からスタートで成長できる」「未経験者歓迎」といった表現が多く見られました(出典:スタンバイ、エン転職)。

役立つ資格については、セメント工場に特化した情報ではありませんが、製造業全般で次の資格が挙げられています。

  • フォークリフト運転技能講習:工場未経験者がまず取ることが多い資格。求人数が多く、応用が利くとされる
  • 玉掛け技能講習・クレーン運転士:入社後に会社の指示で取得させてもらえることが多いとされる
  • 危険物取扱者(乙種4類など):化学系の工程で役立つとされる

粉じんを扱う作業に就く場合は、法律で「特定粉じん作業特別教育」の受講が事業者に義務づけられています(出典:神奈川労働基準協会連合会)。これは入社後に会社側が用意する教育なので、応募前に自分で取っておく必要があるものではなさそうです。フォークリフトなど工場全般で役立つ資格については、工場で稼げる資格の比較もあわせて読んでみてください。

女性や体力に自信がない人はどうか

セメント工場そのものではなく、セメント系の製品を扱う株式会社デイ・シイの女性技術者インタビューでは、次のような配慮が紹介されていました(出典:株式会社デイ・シイ 社員インタビュー)。

  • 女性専用の更衣室・シャワー・洗濯機などの設備
  • 独身寮の代わりに会社がアパートを借り上げ、住宅手当を毎月支給
  • 育休制度があり、復帰後は育休前の仕事にスムーズに戻れるよう配慮している

このインタビューでは「性別の違いを感じることは少なく、女性でも十分に活躍できる環境が整っている」と本人が話していますが、体力面への具体的な配慮については、はっきりとした記載はありませんでした。

なお、この情報はセメントそのものを製造する「セメント工場」ではなく、セメント系の製品を扱う企業のインタビューです。セメント工場(クリンカ製造工場)そのものにおける女性の採用状況・体力面の配慮を直接示す一次情報は、公開情報の範囲では確認できませんでした。応募を考える際は、気になる工場の採用ページや、実際の求人票の「勤務条件」欄で確認してください。

セメント工場が多い地域

主要セメントメーカーの国内工場は、次の場所にあります(2026年9月確認)。

メーカー 主な工場
太平洋セメント 上磯工場(北海道北斗市)、大船渡工場(岩手県大船渡市)、熊谷工場(埼玉県熊谷市)、埼玉工場(埼玉県日高市)、藤原工場(三重県いなべ市)、大分工場(大分県津久見市)
住友大阪セメント 岐阜工場(岐阜県本巣市)、赤穂工場(兵庫県赤穂市)、栃木工場(栃木県佐野市)、高知工場(高知県須崎市)
UBE三菱セメント 伊佐鉱山(山口県美祢市)を確認。工場所在地の全リストは今回確認できていません

(出典:太平洋セメント採用サイト、住友大阪セメント、2026年9月確認)

このほか、青森県八戸市には八戸キャニオンという石灰石の露天掘り鉱山があり、鉱山と港・セメント工場を地下ベルトコンベア(総延長約10km)で結んでいます(出典:VISITはちのへ)。

全体として、セメント工場は石灰石が採れる地域(北海道、東北、埼玉、三重、大分、山口、兵庫など)に多く立地している傾向があります。石灰石は重く、遠くまで運ぶとコストがかかるため、原料の産地の近くに工場が建てられることが多いと考えられます(出典:CMC)。

業界の規模

セメント協会の資料によると、2025年7月1日時点で、国内のセメント製造業は15社・26工場です。クリンカの年間生産能力は4,706万2千トンとされています(出典:セメント協会)。

需要面では、2024年度の国内セメント需要が3,265万6千トンで前年度比5.6%減、6年連続の減少となったと報じられています。セメント協会は2025年度の国内需要見通しを当初3,200万トンとしていましたが、実績は約3,050万トン(前年度比6.5%減、7年連続の減少)にとどまりました。2026年度の見通しは3,000万トン(前年度比1.3%減)です(出典:日本経済新聞、日本経済新聞、セメント協会)。国内の需要は減少傾向が続いているようです。

他の重工業系工場との違い

セメント工場は、鉄鋼工場やガラス工場と同じように、大きな設備で原料を高温処理する装置産業です。共通点として、粉じん・高温・重機を扱う場面がある点が挙げられます。

一方でセメント工場ならではの特徴は、原料の石灰石を自社の鉱山で採掘するところから始まる点です。鉄鋼・ガラス工場の多くは原料を外部から仕入れますが、セメント工場は鉱山と一体になっていることが多く、鉱山での作業(採掘・重機の運転など)が仕事の一部になる場合があります。どちらが向いているかは、鉱山での屋外作業が気になるかどうかも判断材料になりそうです。

応募前に確認したいこと

求人票やホームページだけでは分からないことが、あとで効いてきます。応募や面接の前に、次の点を確認しておくと安心です。

  • 配属される職種は、鉱山(屋外)と工場(屋内)のどちらが中心か
  • 交代勤務・夜勤があるか。ある場合は勤務パターンを
  • 粉じん対策(防じんマスクなど)はどう用意されているか
  • 資格は入社前に必要か、入社後に会社の負担で取得できるか
  • 寮・社宅はあるか。ある場合は費用や条件

次にやること

  1. 気になるメーカー(太平洋セメント、住友大阪セメント、UBE三菱セメントなど)の採用ページを見る。
  2. 求人サイトで「セメント工場」「セメント製造」の求人を探し、職種(鉱山・工場・輸送など)と勤務条件を見比べる。
  3. フォークリフトの資格を、入社前に取るか入社後に取るか考える。求人票の「歓迎条件」欄を確認してください。
  4. 気になる工場が近くにあるか、通勤できる範囲かを確認する。工場は石灰石の産地に多いため、地域が限られます。

参考にした情報

セメント協会、企業の採用サイト、求人サイトの掲載情報をもとにまとめました(取得は2026年9月)。給料や制度、募集状況は変わることがあるため、応募前に各社の公式サイトで確認してください。

  • セメント協会「セメントとは」(2026年9月確認)https://www.jcassoc.or.jp/cement/1jpn/jd1.html
  • セメント協会「セメント産業の概要」(2026年9月確認)https://www.jcassoc.or.jp/cement/1jpn/jc.html
  • CMC「セメントの原料とセメントが作られる工程を解説」(2026年9月確認)https://concrete-mc.jp/cement-material/
  • 太平洋エンジニアリング「セメントが出来るまで」(2026年9月確認)https://www.taiheiyo-eng.co.jp/cement-process.html
  • 太平洋セメント採用サイト「事業拠点紹介」(2026年9月確認)https://www.taiheiyo-cement.co.jp/recruit/about/plants/index.html
  • 太平洋セメント採用サイト 社員インタビュー(2026年9月確認)https://www.taiheiyo-cement.co.jp/recruit/interview/kubo.html
  • 太平洋セメント大船渡工場「焼成工程」(2026年9月確認)https://www.taiheiyo-cement.co.jp/oofunato/html/sv_koutei01b.html
  • 太平洋セメント「新卒採用 初任給」(2026年9月確認)https://www.taiheiyo-cement.co.jp/recruit/recruit/graduate/
  • スタンバイ「埼玉県日高市のセメントの求人」(2026年9月確認)https://jp.stanby.com/r_031403af1f5f9715efa0946208761a9b
  • エン転職「製造スタッフ(未経験歓迎)」求人(2026年9月確認)https://employment.en-japan.com/desc_1417188/
  • 住友大阪セメント「国内外事業拠点」(2026年9月確認)https://www.soc.co.jp/company/location/
  • UBE三菱セメント「事業所(国内・海外)」(2026年9月確認)https://www.mu-cc.com/corporate/office/
  • 日本経済新聞「セメント国内需要59年ぶり低水準」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB278DH0X20C25A2000000/
  • 日本経済新聞「セメント需要、働き方改革が下押し」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB234SR0T20C26A4000000/
  • 神奈川労働基準協会連合会「粉じん作業特別教育について」https://kanarouki.or.jp/materials/157664528762504.pdf
  • 厚生労働省 新潟労働局「粉じん障害防止対策の推進について」https://jsite.mhlw.go.jp/niigata-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/anzen_eisei/roudouanzenkankei/zerosaisengen_00009.html
  • 株式会社デイ・シイ 社員インタビュー https://dccorp.jp/interview/002/