非破壊検査技術者の取り方・費用・難易度|工場での役立て方

非破壊検査の求人を検索すると、時給1,300円台から2,800円くらいまで、幅の広い条件で600件を超える求人が見つかります(2026年9月時点)。溶接や金属加工の経験がある人なら、名前を聞いたことがあるかもしれません。ただ、検査方法やレベルが細かく分かれていて、何から取ればいいのか分かりにくいところがあります。

ここでは、一般社団法人 日本非破壊検査協会(JSNDI)が公開している情報をもとに、資格の種類・レベル・費用・難易度・工場での役立て方を整理しました。

非破壊検査技術者とはどんな資格か

非破壊検査技術者は、ものを壊さずに、内部のキズや表面のキズ、劣化がないかを調べる技術者の資格です。日本非破壊検査協会は「物を壊さずに、その内部のきずや表面のきずあるいは劣化の状況を調べ出す検査技術」と説明しています(JSNDI公式サイトより)。

工場では、溶接した部分や金属部品にキズがないかを確認するときに使われます。原子力発電所やプラント、鉄道、航空機、橋、ビルなどでも使われている技術です。JIS Z 2305という国のルールにもとづき、日本非破壊検査協会が試験と資格の認証を行っています。

なお、規格そのものは2024年9月に改正され、JIS Z 2305:2024が出ています。ただし日本非破壊検査協会の試験・認証制度は、2026年時点でもJIS Z 2305:2013にもとづいて運用されています。規格の改正と、協会の試験制度の切り替えは別のタイミングで進むので、この記事の訓練時間や実務経験の月数も2013年版にもとづく数字です。最新情報は必ずJSNDIの公式サイトで確認してください。

資格の種類

日本非破壊検査協会の資格には、全部で8種類の検査方法があります。よく知られているのは次の6つです。

  • 放射線透過試験(RT) … 放射線を使って内部のキズを写し出す方法
  • 超音波探傷試験(UT) … 音(超音波)を使って内部のキズを見つける方法
  • 磁気探傷試験(MT) … 磁石の性質を使って表面近くのキズを見つける方法
  • 浸透探傷試験(PT) … 液体を表面にしみこませて細かいキズを見つける方法
  • 渦電流探傷試験(ET) … 電気の力を使ってキズを見つける方法
  • ひずみゲージ試験(ST)

ほかに、赤外線サーモグラフィ試験(TT)・漏れ試験(LT)の2つがあります。さらに、超音波厚さ測定(UM)など、特定の技術だけを対象にした「限定NDT方法」も別に用意されています。それぞれの原理をもっと詳しく知りたい場合は、JSNDIの入門書「イラストで学ぶ非破壊検査入門」で確認できます。

相性がいい業種・工程は、溶接部の検査(造船・鉄鋼・プラント・自動車部品)や、金属部品の内部・表面キズ検査(航空機部品など)です。造船会社が非破壊検査技術者を自社で直接募集している例は、公開情報で確認できた範囲では見つかりませんでした。

受験資格と試験の流れ

JSNDIの受験案内によると、試験を受けるには、検査方法ごとに決められた時間の訓練を受け、訓練証明書を用意する必要があります。この訓練時間は、勤務先での実務訓練でも、協会や支部が開く講習会でも満たすことができますが、時間の証明がないまま受験申請することはできません。たとえば超音波探傷試験(UT)はレベル1で40時間、レベル2はレベル1を持っている人なら80時間、持っていない人なら120時間です。視力検査の証明書の提出も必要です。年齢や学歴についての条件は、公開情報では確認できませんでした。

試験は筆記の一次試験と実技の二次試験に分かれ、一次試験に合格した人だけが二次試験を受けられます(レベル3だけは二次試験も筆記です)。試験に合格したあと、資格を認証してもらうには、検査方法ごとに決められた実務経験も必要です。たとえばUTなら、レベル1で3か月、レベル2はレベル1を持っている人なら9か月、持っていない人なら12か月です。この実務経験には、訓練の期間は含まれません。

試験は日本非破壊検査協会が春と秋の年2回、全国の会場で実施しています。2025年秋期の日程では、受験申請の締め切りから一次試験まで約1.5か月、一次試験から二次試験まで約2か月、二次試験から結果通知まで約1〜2か月かかりました。申し込みから合格発表まで、トータルで半年弱を見ておくとよさそうです。

レベル1・2・3の違い

資格はレベル1〜3の3段階に分かれています。数字が大きいほど上位の資格です。

レベル できること
レベル1 上位技術者の監督のもとで検査を行い、結果を決められた基準にそって記録・分類する。検査方法の選び方や結果の解釈までは行わない
レベル2 決められた手順書にそって検査を行い、方法の選択や結果の解釈・評価まで自分の判断で行う。レベル1を指導することもできる
レベル3 検査の設備や人の管理に責任を持ち、手順書の作成や規格・基準の解釈を行う

工場の検査の仕事に就くなら、まずレベル1から取り、実務経験を積んでレベル2を目指す流れが基本になります。なお、この資格は特定の仕事に就くために必ず必要な「免許」ではなく、技量を証明する「適格性証明書」という位置づけです。

費用の目安

受験料は、PT・MT・UT・RTなど、どの検査方法でも共通のルールです。1申請(1つの検査方法・1レベル)につき18,700円(税込・2025年7月時点)でした。ただし値上げが決まっていて、2026年は20,900円くらい、2027年からは24,200円くらいになる予定です。認証申請料は2025年7月時点で14,300円(税込)、更新料は同時点ですでに11,000円(税込)まで上がっています。更新料はさらに2027年10月以降に有効となる資格証明書から14,300円くらいになる予定です(JSNDIの料金改定案内より)。レベル1とレベル2の両方を受ける場合は、受験料が単純に2倍かかる計算です。

講習会費用の例を1つ挙げると、JSNDI中部支部が開いた浸透探傷試験(PT)の講習会では、レベル1(16時間・2日間)が会員31,370円・非会員36,000円くらい、レベル2(24時間・3日間、レベル1を持っている人向け)が会員41,870円・非会員48,000円くらいでした(2026年時点の同支部の案内より)。講習会の値段は支部や検査方法ごとに変わるので、あくまで一例として見てください。

独学と講習会、どちらが一般的かを示す公式の統計は、公開情報では確認できませんでした。ただし、受験には決められた訓練時間の証明が必須なので、テキストだけの完全な独学で申請することはできません。会社での実務訓練で時間を満たすか、講習会を受けるか、どちらかのルートを選ぶことになります。

難易度・合格率の目安

日本非破壊検査協会は試験のたびに、機関誌「NDTフラッシュ」で合格率を発表しています。2025年春期の結果では、レベル1全体で一次試験(筆記)の合格率が53.3%、二次試験(実技)が69.2%でした。レベル2全体では一次試験が38.9%、二次試験が60.8%でした。

検査方法ごとに見ると差があります。同じ2025年春期で、浸透探傷試験(PT)はレベル1の一次63.0%・二次72.4%、レベル2の一次43.5%・二次61.8%でした。磁気探傷試験(MT)はレベル1の一次42.2%・二次87.8%、レベル2の一次31.5%・二次62.7%でした。超音波探傷試験(UT)はレベル1の一次49.1%・二次56.4%、レベル2の一次33.9%・二次58.3%でした。放射線透過試験(RT)はレベル1の一次37.0%・二次57.1%、レベル2の一次45.4%・二次44.5%でした。年度によって数字は変わるので、あくまで目安として見てください。

工場での役立て方

求人サイト「はたらこねっと」で「非破壊検査」を調べると、時給1,300円台から2,800円くらいまでの求人が661件見つかりました(2026年9月時点)。求人ボックスの集計では、非破壊検査技術者の求人が3,151件、正社員の平均月給33.3万円で、26.1万円くらいから72.8万円くらいまで幅がある、という数字も出ています。

求人例では、未経験歓迎で月給30.5万〜35.5万円という条件を出している会社もあります(神奈川県の検査会社、2026年9月時点)。資格手当については、新潟県の北日本非破壊検査が、社内平均4.8万円・社内最高15.2万円という金額を採用ページで公開していました。これは同社の社内平均であって、業界全体の相場ではない点に注意してください。未経験からでも検査職への転職を受け入れている会社があるので、興味があれば求人サイトや会社の採用ページで確認してみてください。

溶接資格を持っている人は、溶接資格の種類と費用・難易度もあわせて見ると、検査とセットで自分の職務経験を整理しやすくなります。

次にやること

  1. 自分が関わっている・関わりたい検査方法を1つ決める。 溶接部の検査ならPT・MT・UT、内部のキズを重点的に見るならRTなど、仕事内容に合わせて選びましょう。
  2. 訓練時間の証明方法を確認する。 会社での実務訓練で満たせるか、講習会を受ける必要があるか、勤務先やJSNDIの窓口に確認してください。
  3. 受験の日程を調べる。 試験は春・秋の年2回です。申し込みから合格発表まで半年近くかかるので、早めに動きましょう。
  4. 最新の受験料・認証料をJSNDI公式サイトで確認する。 料金は段階的に上がる予定なので、申し込み前に必ず最新の金額を見てください。

参考にした情報

一般社団法人 日本非破壊検査協会(JSNDI)の公式サイト・資格試験案内・料金改定案内・機関誌「NDTフラッシュ」の合格率発表、JSNDI中部支部の講習会案内、はたらこねっと・求人ボックスなどの公開求人情報、日本規格協会(JSA)のJIS Z 2305改正資料をもとにまとめました(取得は2026年9月)。制度・費用・合格率は年度で変わるため、応募・受験前に必ずJSNDI公式サイトで最新情報を確認してください。