工場からITエンジニアへ転職する方法|未経験ルートと費用

工場を辞めて、ITエンジニアになれるのだろうか。プログラミングもパソコンもろくに触ったことがない状態から、そう考え始める人が増えています。AIや自動化で工場の仕事が変わっていく中、外に出る道の一つとしてITが挙がるからです。

とはいえ、本当に転職できるのか、何から始めればいいのかは、見えない部分が多いはずです。

この記事では、工場からITエンジニアへ転職する方法を、職種の選び方・学び方・費用・求人の探し方まで、公開されている情報から整理しました。AIで仕事がどう変わるかという不安そのものについては、工場の仕事はAIでなくなる?で扱っています。

先に結論

長い記事なので、要点を先に置いておきます。

  • 未経験から目指しやすい職種は、ヘルプデスク・インフラエンジニア(運用保守)・Webエンジニア・組み込みエンジニアの4つがよく挙がります。工場の設備や機械の知識は、組み込みエンジニアで活かしやすいとされています。
  • 学び方は独学・職業訓練・プログラミングスクールの3つ。お金をかけずに学ぶなら職業訓練、ある程度お金をかけてでも短期間で学びたいならスクールが選択肢になります。
  • 国の「教育訓練給付制度」を使えば、対象講座の費用の一部が戻ってきます。条件を満たせば最大80%が支給される制度もあります。
  • 学習期間とその後の転職活動を合わせると、早くて3〜4ヶ月、じっくりやると半年〜1年ほどが目安です。
  • 30代・40代でも転職はできますが、20代よりは難易度が上がります。前職の経験を活かせる職種を選ぶのが現実的です。

工場からITエンジニアへ転職した人はいるのか

結論から言うと、工場や製造業からITエンジニアへ転職した人はいます。ただし、公的な調査でその人数や傾向を示したデータは見つかりませんでした。

見つかったのは、転職エージェントやスクールが紹介している個人の体験談です。夜勤のシフトに変えて日中を学習時間にあて、スクール費用に60万円以上をかけた例や、20回近く不採用が続いたあと、工場での経験をIT業務にどう活かせるか言葉にできるようになってから転職が決まり、2年後に年収450万円に届いた例などが紹介されています。

こうした体験談は、あくまで一つの例です。誰にでも同じように当てはまるとは限りませんが、「工場から未経験でITに移った人は実際にいる」ということは、複数の情報源から確認できました。

未経験から目指しやすい職種

未経験からの入り口として、よく挙がる職種は次の4つです。

職種 どんな仕事か 未経験からの入りやすさ
ヘルプデスク・ITサポート 社員や顧客からの問い合わせに電話・メールなどで対応する 間口が広いとされる。研修1ヶ月ほどで育成する例もある
インフラエンジニア(運用・保守) サーバーやネットワークなど、システムの土台を管理する 比較的入りやすいとされる。監視業務から始めることが多い
Webエンジニア Webサイトやアプリの設計・開発をする 目標レベル次第で幅が大きい。学習期間の情報が情報源によりばらつく
組み込みエンジニア 家電や自動車などに組み込まれるソフトウェアを設計・開発する ハードウェアの知識も必要でやや高めとされる。工場の設備・機械の知識を活かしやすい

※期間工・転職支援サイトなどの公開情報をもとに整理しました(2026年7月時点)。学習期間・難易度の感じ方には個人差があります。

未経験からの学習の入り口として、ITパスポート(国が実施する試験。ITの基礎知識を問う)から始めるとよい、という声が目立ちました。合格率はおおむね50%前後で推移しており、令和6年度は49.1%でした。

学び方の選択肢と費用

学ぶ方法は大きく3つに分かれます。

学び方 費用の目安 期間の目安
独学 ほぼ無料〜月1,000円程度(オンライン学習サービス利用の場合) 3〜6ヶ月程度が目安だが個人差が大きい
職業訓練(ハロートレーニング) 受講料は基本無料。テキスト代など実費で1万円前後 2〜6ヶ月程度のコースが多い
プログラミングスクール 短期(1〜3ヶ月)で10万〜50万円程度、長期(6ヶ月〜1年)で60万〜90万円程度 コースにより1〜15ヶ月程度と幅がある

※複数の公開情報から目安として整理しました(2026年7月時点)。特定のスクールを勧めるものではありません。

独学は、Progateやドットインストールのようなオンライン学習サービスを使う方法です。お金はほとんどかかりませんが、期間は人によって差が大きく、1年以上かかった例もあります。

職業訓練(ハロートレーニング)は、厚生労働省が実施する公的な制度です。プログラミングやWebデザインなどのコースがあり、受講料は基本的に無料です。雇用保険をもらえない人向けの「求職者支援訓練」では、収入や資産などの条件を満たすと、訓練中に月10万円の給付金を受け取れる仕組みもあります。コースの内容や条件は時期・地域で変わるため、詳しくはハローワークで確認してください。

プログラミングスクールは、費用はかかりますが、期間を区切って集中的に学べます。数万円のコースから100万円近いコースまで幅があるので、内容と費用のバランスを見て選ぶことになります。

国の補助でどれだけ費用が下がるか

厚生労働省の「教育訓練給付制度」を使うと、対象の講座を修了したときに、費用の一部が戻ってきます。講座によって次の3種類のどれかに当たります。

  • 一般教育訓練給付金:受講費用の20%(上限10万円)。
  • 特定一般教育訓練給付金:受講費用の40%(上限20万円)が基本。資格取得と1年以内の就職の条件を満たすと上乗せがあり、最大50%(上限25万円)まで支給されます。ITの専門資格取得を目標とする講座なども対象になり得ます。
  • 専門実践教育訓練給付金:受講費用の50%(年間上限40万円)が基本。資格取得と1年以内の就職の条件を満たすと20%上乗せされ最大70%(年間上限56万円)、さらに賃金が5%以上増えた場合は10%が追加され、最大80%(年間上限64万円)まで支給される仕組みです。

※厚生労働省の制度の概要です(2026年7月時点の情報をもとに整理)。給付にはいずれも雇用保険の加入期間などの条件があります。対象講座かどうかは、受講前にハローワークまたは厚生労働省の検索システムで必ず確認してください。給付ありきでスクールを決めると、対象外だった場合に全額自己負担になってしまいます。

工場での経験は武器になるか

工場での経験は、そのままIT転職の強みになる部分があります。

品質管理や生産管理の経験がある人は、不具合の原因を特定して改善策を考える力や、データをもとに問題を解決する力を持っています。この力はIT業界でも評価されやすい、という記述が複数見つかりました。

設備保全の経験がある人は、工場内の仕組みへの理解があるぶん、IT導入後の仕事も覚えやすいそうです。特に組み込みエンジニアは、機械やハードウェアの知識を活かしやすい職種として紹介されることが多いです。

工場のデジタル化(生産管理システムの導入など)が進むなかで、現場を知っている人材へのニーズが高まっている、という指摘もあります。

ただし、これらはいずれも転職エージェントやスクールのサイトによる記述で、宣伝的な色合いがある点は割り引いて読む必要があります。「工場経験者が実際に評価された」ことを裏づける公的な調査データは、今回見つかりませんでした。

求人の探し方

未経験可のIT求人は、主に次のような場所で探せます。

  • 求人サイト:Indeed、マイナビ転職、dodaなどで「IT 未経験可」といったキーワードで検索できます。
  • 転職エージェント:担当者がついて求人を紹介してくれます。未経験者向けかどうか、年齢の目安(20代限定などの制限があるケースもある)を最初に確認したほうがよいです。
  • ハローワーク:全国のハローワークの求人を扱っています。窓口で「IT・未経験可」の条件を伝えて相談すると確実です。

転職までの流れ・期間の目安

学習期間の目安は、独学で3〜6ヶ月程度(個人差が大きく、1年以上かかった例もあります)、プログラミングスクールは短期コースで1〜3ヶ月、長期コースで6ヶ月〜1年という書き方が目立ちました。

転職活動そのものは、準備から内定まででおおむね3ヶ月前後、長くて6ヶ月以内を目安にする記述が複数ありました。IT・Web業界は人手不足で選考のスピードが速い傾向がある、とも言われています。

学習期間と転職活動を合わせると、動き始めてから転職まで、早くて3〜4ヶ月、じっくりやると半年〜1年ほどが目安になりそうです。ただし「工場から転職した人」だけを対象にした統計は見つからず、あくまで一般的な目安として見てください。

未経験エンジニアの年収は、初年度でおよそ250万〜400万円程度という記述が多く、地域や会社によって差があります。派遣・アルバイトの時給は、ヘルプデスクで1,300〜1,600円程度、テスト・監視業務で1,400〜1,800円程度というデータも見つかりました。いずれも複数の求人・転職メディアの集計によるもので、公的な統計での裏づけは今回できていません。

年齢のことと、気をつけたい落とし穴

30代・40代でも転職はできます。 ただし、20代より難易度が上がるという見方が複数の情報源にありました。可能性が高いのは、前職の経験を活かせるポジション(社内SE、インフラ、業務系SE、品質保証、テクニカルサポートなど)です。20代が中心になりやすい入門的なプログラマー職は、やや不利になりやすいようです。

学び方や求人を選ぶときは、次の点に気をつけてください。

  • 就職保証の中身を確認する。スクールが紹介した企業への就職を本人が断ると、返金の対象外になる規定が一般的とされます。条件はスクールによって違うので、「保証」という言葉だけで判断せず、契約前に規約を確認してください。
  • 無料のはずが高額契約、に注意する。国民生活センターは、就活生の不安につけこんで高額な契約をさせる手口への注意喚起を出しています(学生の就職活動が対象で、プログラミングスクールを名指ししたものではありませんが、同じ手口は転職の場面でも起こり得ます)。無料相談のつもりが、その場で高額なコース契約を勧められたら、その場で決めずに一度持ち帰ってください。
  • クーリング・オフが使えない場合がある。中途解約のルールが法律で決まっている業種は、エステティック・美容医療・語学教室・家庭教師・学習塾・パソコン教室・結婚相手紹介サービスの7つで、プログラミングスクールは原則含まれないとされています。契約前に、解約条件を確認しておいたほうが安心です。
  • 分割払いの総額を確認する。スクールの分割払いは信販会社の金利がそのまま乗ることが多く、月々の支払いだけを見ていると総額が想定より膨らむことがあります。

次にやること

工場からITエンジニアへの転職を考えるなら、次の順で進めると無理がありません。

  1. 自分の工場経験を棚卸しする。 品質管理・生産管理・設備保全のどれに近い経験があるか、それがどの職種に活かせそうかを考えてみてください。
  2. 職種を1つ絞る。 ヘルプデスク・インフラ・Web・組み込みのうち、興味と工場経験の両方が合うものを選びます。
  3. 学び方を決める。 お金をかけずに学ぶなら職業訓練、集中して短期間で学ぶならスクール。教育訓練給付の対象になるかも、事前にハローワークで確認してください。
  4. 求人サイトを眺めてみる。 「未経験可」の求人がどんな条件で出ているか、実際に見てみると、目指す職種のイメージがつかみやすくなります。
  5. 無理のないスケジュールを組む。 学習と転職活動を合わせて、半年〜1年ほどを目安に考えておくと、焦らずに進められます。

参考にした情報

  • 厚生労働省「教育訓練給付制度」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077164.html
  • 厚生労働省「求職者支援制度のご案内」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyushokusha_shien/index.html
  • 経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年4月公表):https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/gaiyou.pdf
  • 国民生活センター「学生の就活の不安につけ込むトラブル」(2023年5月17日):https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20230517_1.html
  • 国民生活センター「”無料”セミナーだけのつもりが…高額な就活サポート契約にご注意!」(2025年3月11日):https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20250311_1.html
  • 消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」:https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/continuousservices/

※未経験からの学習期間・年収・求人の目安は、期間工・IT転職支援サイトの公開情報も参考にしています。時期や個人の状況で変わるため、応募・契約前に必ず最新の情報を確認してください。